モトリーフール米国本社、2023年9月12日 投稿記事より

主なポイント

・アップルの成長はこの1年で鈍化した
・アップルはユーザーのブランド・ロイヤルティが高く、サービスのエコシステムが拡大しており、莫大な現金を保有している
・弱気派は、割高なバリュエーション、中国で直面している課題、iPhoneへの依存低減が難しいことを指摘している

ハイテク界の巨人は安全な逃避先なのか、それとも瀕死の恐竜なのか?

アップル[AAPL]は、個人投資家にも機関投資家にも愛されています。手数料無料の取引プラットフォーム「ロビンフッド・マーケット」上でも、常に最も人気のある銘柄の1つであり、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]も、ポートフォリオ全体の半分近くをアップルに充てています。

アップルが広く保有されているのは、弱気相場を何度も耐えてきた安全な銘柄であると同時に、強気相場で上昇する魅力的な成長株でもあるためです。過去5年間、S&P500指数が約55%上昇する間に、アップルの株価は220%を上回る上昇を遂げています。とはいえ、過去のパフォーマンスは将来の上昇を保証するものではありません。そこで、アップル株を買いとする3つの理由と、売りとする3つの理由について検討し、長期の投資先として今でも適しているかどうか見極めてみましょう。

アップル[AAPL]株を買う3つの理由

強気派がアップルを好む理由は、顧客がアップルブランドに忠実であること、サービスのエコシステムが拡大し続けていること、莫大な現金を保有していることにあります。

ZipDoが実施した最近の調査によると、iPhoneユーザーの92%が、スマートフォンを買い替える際にまたアップル製品にすると答えました。AddictiveTipsの調査でも、iPhoneユーザーの94%が今後もアップル製品にこだわると回答した一方で、アルファベット[GOOGL]のGoogle Android端末のユーザーで現在のブランドに忠実なのはわずか80%でした。

アップルは、2つの方法でブランド・ロイヤルティを強化しています。第1に、価格設定や販促活動において、自社製品を高級品として位置付けることで、低価格の競合製品との差別化を図っています。第2に、拡大し続けるサービスのエコシステムはユーザーを囲い込み、Android端末への乗り換えを難しくしています。Counterpoint Researchによると、iPhoneの世界市場シェアが2021年第3四半期から2023年第2四半期にかけて14%から17%に上昇したのは、おそらくそれが理由と思われます。

アップルのサービス・エコシステムには、App Store、iCloud、Apple Music、Apple TV+、Apple News+、Apple Arcadeや、その他さまざまなサブスクリプション・サービスが含まれます。エコシステム全体の有料会員数は6月末時点で10億人を上回り、3年前と比べてほぼ2倍に増加しました。

売上高全体に占めるサービス部門の割合は、2019年9月期には18%でしたが、2023年9月期第3四半期累計期間では21%に上昇しました。サービス部門の拡大に伴ってiPhoneへの依存度が徐々に低下し、顧客の囲い込みが強化され、将来的に新たな製品やサービスを立ち上げるための道が開かれるはずです。

アップルは6月末時点で1660億ドルを上回る現金および有価証券を保有しており、大規模な投資や買収を通じて、エコシステムを拡大する余地は十分にあります。さらに重要なことに、この強固なバランスシートのおかげで、金利が高止まりしている限り、安全な投資先としての評価は一段と高まるとみられます。

アップル[AAPL]株を売る3つの理由

弱気派は、アップルがiPhoneに依存し過ぎていること、中国での問題、割高なバリュエーションを理由に、短期的な株価上昇は限定的であるとみています。

2023年9月期第3四半期累計期間において、売上高の53%をiPhoneが占めました。しかし、今後数年間にわたり、買い替えサイクルが長期化し、毎年の機能向上の重大性が薄れるにつれて、この中核事業は失速が予想されます。

また、アップルは売上高の20%を大中華圏(中国本土、香港、マカオ、台湾)から得ています(2023年9月期第3四半期累計期間)。中国はかつて、アップルにとって最も急成長している市場でしたが、この1年間に複数の大きな課題に直面しています。中国では、新型コロナウイルスによるたび重なるロックダウンで生産と販売が中断されました。主要な生産パートナーである台湾のフォックスコンでは、2022年後半に従業員による抗議活動で最大規模の工場の1つが一時閉鎖しました。中国は先日、一部の政府機関でのiPhoneの使用を禁止しました。

アップルは、中国からの生産の移転を徐々に進め、インドなどの高成長市場に進出していますが、こうした戦略が実を結ぶまでには数年かかる可能性があります。また、このような生産シフトは、短期的に営業利益率を圧迫するかもしれません。

アナリストは、世界のスマートフォン市場の回復の遅れや、その他のマクロ的逆風により、アップルの1株当たり利益(EPS)が2023年度に7%減、2024年度も9%増にとどまると予想しています。しかし、足元の株価は予想株価収益率(PER)27倍の水準にあり、短期的な成長見通しに対してやや割高にみえます。おそらく、投資家は依然として、昨今の変動の大きい市場においてアップルが安全な投資先であると考えているのでしょう。また、現在のバリュエーションには、Vision Proのような未来の製品の成長も織り込まれているのかもしれません。

アップル[AAPL]株は今が買い時か、売り時か?

アップルのバリュエーションを考えると、短期的な上昇は限定的かもしれませんが、長期的に拡大し、進化し、新たな収入源を生み出すアップルの能力に対しては、楽観視できます。それまでの間、このハイテク界の巨人は多額の現金を自社株買いに充て続けると思われます。株式数はこの5年間に既に18%も減少しています。そして、iPhoneと中国市場への依存軽減を図り、新しい製品とサービスの開発を静かに進めていくことでしょう。

端的に言えば、今はアップル株を買い持ちするのに適切なタイミングだと思われます。向こう数四半期で驚異的に上昇することはないかもしれませんが、今アップル株を売ってしまったら、数年後にきっと後悔するはずです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Leo Sunはアルファベット、アップルの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアルファベット、アップル、バークシャー・ハサウェイの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。