◆テニスのサーブで、ボールがラケットを離れてコートに着地するまでは、わずか0.5秒である。人間の視覚反応速度(目から入った視覚情報が信号として脳に伝達される時間。動体視力とは異なる)は、プロも一般人も差がなく、0.2秒である。違いは残り0.3秒の使い方にある。

◆アマチュアはラケットを速く振れないし、フットワークも悪い。行動に0.3秒(もしくはそれ以上)かかる。だからまともに打ち返せないことが多い。それに対して、トップ・プロはスウィングもフットワークも抜群に敏捷だから0.1秒あれば完璧なリターンができる。その結果、0.2秒の余裕が生まれる。速く動けるからこそ、情報を集めて分析や処理をする余裕がある。その0.2秒の間にさまざまな準備が行われているのである。

◆アマチュアはテイクバックもスウィングも遅いくせに、自分の打った球をずっと目で追いかけているから次のアクションに入るのが遅い。済んだことより次の行動を常に考えるべきである。投資でも同じことが言える。ぼーっと相場を眺めていて、暴落してから、さてどうしようと考えるのではなく、ゲームプランを事前に用意しておくのである。

◆いくつか想定できるシナリオのうち、どれが現実のものとなるかわからない。しかし、そのそれぞれについて、買い・売り・静観などと対応を決めておく。ここまで上がったら半分だけ利益確定する、ここまで下がったら○○株だけ打診買いをする、というように具体的なプランを事前に決めておくのだ。いざ相場が動いてからでは正しい意思決定を下すための準備が間に合わないからである。激しい展開にも臨機応変に対応できる錦織圭選手なら話は別である。全米オープンの大活躍には日本中が喝采を叫んだ。心から準優勝おめでとう!といいたい。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆