個人のポートフォリオは皆異なります。リスクを取りたい人は株式等リスク資産中心となる一方、リスクを取りたくない人は債券等保守的な資産が中心となります。また、年齢によっても異なるべきものです。年齢=安全資産割合という考え方があります。20歳であれば20%が保守的資産、残り80%はリスク資産となり、逆に80歳であれば80%が保守的資産の目安です。若いうちはリスクを取り、年齢と共に徐々に保守的になるべきということですね。
資産運用は収入がある第一ステージと退職後の第二ステージに大きく分けられるでしょう。第一ステージは定期的な積み立てを前提とすれば資産運用額は増加していく一方、第二ステージは資産の取り崩しが勘案される時期です。よって同じリターンでも前者では資産の増加は加速しますが、後者では資産を引き出すことで投資元本が減少します。
また投資を始めてすぐに金融危機が来た場合を考えてみましょう。第一ステージではやり直しがきく点で大きな問題にならず、重要なのはその後の長期的なリターンとなりますが、退職金で投資をしてそのような経験をした場合その後の回復は容易では無く注意が必要です。つまり両者では投資期間が異なることでリスク許容度も異なっており、またリターンについても第一ステージでは目標値が高くあるべきですが、第二ステージではリターンよりもリスクが重視され、また運用の目的も第一ステージの資産形成と異なる多様なものになるでしょう。
もう一つ考えるべきはインフレです。2%の物価上昇が20年続くと現金の価値は2/3になります。第一ステージでは基本的に収入がインフレ連動ですし、積み立てによるリスク資産運用でカバーされますが、収入の無い第二ステージでは資産の引き出しも重なることで運用資金は枯渇するリスクが出てきます。このように第一ステージと第二ステージとでは運用を取り巻く環境が大きく異なります。
第二ステージにおける諸課題への対応として投資タイミングを分散するドルコスト平均法が良く引き合いに出されます。一括投資とどちらが良いのか?過去を見てもタイミング次第で優劣の示し方は変わってきますが、行動経済学的に言えば、先行きなど絶えず不透明な中で運用に踏み込む気持ちの整理がつきやすい投資手法でしょう。
金融市場の動向を観察しリスク/リターンを確認することも大切ですが、運用の状況や目的など自分を理解することは大変重要です。前回はその参考になる考え方としてゴールベース運用について簡単に触れましたが、運用は市場に対峙するのではなく自分に対峙することが大切です。