米アマゾン・ドット・コム[AMZN]が8月3日に発表した2023年4-6月期の決算は、売上高が前年同期比11%増の1343億8300万ドル(約19兆1900億円)、純損益が67億5000万ドル(約9640億円)の黒字(前年同期は20億2800万ドルの赤字)だった。

アンディ・ジャシーCEO、コスト削減・抑制策を推進

就任から2年を迎えたアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)はコスト削減・抑制策を推し進めており、その効果が表れた。同四半期の営業利益は同2.3倍の76億8100万ドル(約1兆1000億円)だった。営業費用は1267億200万ドル(約18兆900億円)で、伸び率を7%台にとどめた。

1株損益は65セントの黒字(前年同期は20セントの赤字)。売上高、利益ともに市場予想を上回った。アマゾンの株価は8月3日の米株式市場の時間外取引で一時約10%上昇した。

クラウド事業、過去最低の増収率

一方、クラウド事業「Amazon Web Services(AWS)」の売上高は同12%増の221億4000万ドル(約3兆1600億円)にとどまった。同事業の増収率はこれまでで最も低く、3四半期連続で過去最低の伸びを記録した。同事業の営業利益は53億6500万ドル(約7660億円)で、同6%減少した。

ジャシーCEOは決算説明会で、「AWSの成長は、顧客がコストの最適化から新しいワークロードの展開に移行し始めたことにより安定化した」と述べた。

直営ネット通販、3四半期ぶり増収

クラウド(AWS)以外の売上高を見ると、直営のネット通販事業は同4%増の529億6600万ドル(約7兆5600億円)となり、3四半期ぶりに増加した。外部出品者からの手数料収入は同18%増の323億3200万ドル(約4兆6200億円)だった。

有料プログラム「Prime(プライム)」の会費などサブスクリプション(定額課金)収入は、同14%増の98億9400万ドル(約1兆4100億円)。自社EC(電子商取引)サイトやECアプリ内で展開するネット広告事業の売上高は、同22%増の106億8300万ドル(約1兆5260億円)で、2四半期ぶりに100億ドル超に達した。傘下の「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」や直営の「Amazon Fresh(アマゾン・フレッシュ)」などの実店舗事業の売上高は同6%増の50億2400万ドル(約7200億円)だった。

コスト削減と重点分野への投資を並行して実施

2023年7-9月期の売上高は、前年同期比9〜13%増の1380億〜1430億ドルを見込む。営業利益は55億〜85億ドル(前年同期は25億ドル)とする見通しを示した。

ブライアン・オルサブスキーCFO(最高財務責任者)は「これまでの進展に満足しているが、今後もコスト効率を向上させるための機会が増える」と述べた。また「インフレ圧力が緩和されており、物流コストの抑制につながっている」とも付け加えた。

アマゾンは、不採算事業に焦点を当てた事業見直しを進めており、実店舗を閉鎖したり、先進技術研究部門をはじめとするオフィス職の人員を削減したりしてきた。コスト削減策は同社のさまざまな部門に及んでいる。その一方で強みのある分野に経営資源を集中させ事業成長を図っている。

2023年8月2日には米メディアで、アマゾンは米国の十数都市で、食料品の宅配サービス「Fresh」を拡大すると報じられた。非Prime会員向けのFreshサービスを全米規模で展開したい考えだという。同社は8月1日、オンライン診療のマーケットプレース「Amazon Clinic(アマゾン・クリニック)」を全米規模に拡大したと明らかにした。

※1ドル=142.81円で換算