3割以上と大きく減少した円売り

ヘッジファンドなどの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、売り越し(ショート)がこの間のピークの7月初めの11.7万枚から、先週は7.7万枚まで35%程度と比較的大きく縮小した(図表1参照)。

【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドル/円は6月末の145円から、7月半ばにかけて137円割れ近くまで急落する場面があった。3月末の129円から6月末の145円までほぼ一本調子で展開してきた米ドル高・円安が大きく米ドル安・円高へ戻る動きとなったことで、米ドル買い・円売りに大きく傾斜していたポジションの反動が入ったと考えられる。

日本株上昇一服からの円買戻しも一因

6月末にかけて展開した米ドル高・円安は、日経平均など日本株一段高とかなり相関性の高い動きでもあった(図表2参照)。これは、海外投資家が日本株投資をする上で、円安に伴う為替損失を回避するために円売りを並行して行った影響があると考えられた。そんな日本株が7月に入り上昇一服となり、反落に転じたことで、日本株投資の手仕舞いが一部発生し、それに伴い為替リスク回避で売った円の買い戻しが起こったことも、円ショート縮小の一因となったのではないか。 

【図表2】米ドル/円と日経平均(2023年4月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

欧州通貨ロング拡大の一服

円とは逆に、最近まで買い越し(ロング)拡大が続いていたのが英ポンド、ユーロなどの欧州通貨だった。特に英ポンドは、ロングが一時6万枚以上に拡大。少なくとも2010年以降で確認出来る限りでは最高を記録した(図表3参照)。

【図表3】CFTC統計の投機筋の英ポンド・ポジション(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

しかし英ポンドのロングは、先週にかけて小幅ながら縮小した。これは、その前の週に発表された英CPI(消費者物価指数)が予想より弱かったことで、英国の利上げシナリオが大きく下方修正された影響があったのではないか。

ユーロ/円の流れに転機が生じる可能性にも注目

こうした中、同じ欧州通貨のユーロも高水準に拡大していたロングが、先週は小幅ながら縮小となった(図表4参照)。ECB(欧州中央銀行)は先週金融政策を決める会合を開き、事前の予想通り0.25%の利上げを決定したが、利上げの「打ち止め」観測も浮上。それらがユーロ買いに水を差したとも考えられる。

【図表4】CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上見てきたように、6月にかけて続いてきた円ショート、欧州通貨ロング拡大の流れが、7月に入ってから少し変化の兆しが出てきた。順調に上昇してきた欧州通貨/円相場が転機を迎える可能性も注目してみたい。