トランプ通貨政策と歩調の合った円買い戦略

CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションは、投機筋の代表格であるヘッジFの取引を反映しているとされる。投機筋の円ポジションは、2024年7月に161円まで米ドル高・円安となった局面で売り越し(米ドル買い越し)が過去最高規模の18万枚以上に拡大した。

ところが、その後2024年11月の米大統領選挙でトランプ氏が勝利し、2025年1月には158円まで米ドル高・円安再燃となったが、この局面での円売り越し拡大はたったの3万枚にとどまった(図表1参照)。

逆に米ドル安・円高が150円を割り込んで広がると、円買い越しはそれまでの最高を大きく更新し、先週は14万枚以上に拡大した。以上のように見ると、ヘッジFはトランプ政権の「復活」を境に、それまでの円売りから円買いへ売買戦略が大転換したことがよく分かるだろう。

【図表1】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2024年5月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

関税政策を巡る日米交渉では円安是正が大きな焦点の1つに浮上

米ドル/円は、3月末にかけて146円から151円まで米ドル高・円安に戻す場面もあったが、これまで確認できる限りでは、その中での投機筋の大幅な円買い越しの縮小は限定的にとどまっていた(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

このようなヘッジFの積極的な円買い戦略は、これまで明らかになってきたトランプ政権の通貨政策とかなり歩調が合うものだった。トランプ大統領は3月の初めに、日本や中国は通貨安に誘導していると批判した上で、それを止めないなら関税を発動すると語った。

実際にそれを受けた形で、関税政策を巡る日米交渉では円安是正が大きな焦点の1つに浮上してきた。そして、そのキーマンの1人こそ、ヘッジF業界出身のベッセント財務長官だ。以上のように見ると、ヘッジFはトランプ政権の通貨政策に連動し円買い戦略を展開している可能性がやはり高いと言えそうだ。

さらに投機筋の円買い越し拡大に向かうのかが今後の指標に

CFTC統計の投機筋の円ポジションを見ると、低金利の円の買い越しは、2024年までは2016年の7万枚が最高だった。それが足下では、ほぼ倍の14万枚まで急拡大した(図表3参照)。過去の実績からすると、かなり行き過ぎた円買いの懸念がある。

【図表3】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2005年~)  
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

それでもさらに投機筋の円買い越し拡大に向かうのか。それはトランプ政権の通貨政策の行方を探る「先行指標」のような位置づけでも参考になるかもしれない。