急拡大したユーロと英ポンドの買い

ヘッジファンドの取引を反映しているとされるCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションを見ると、ユーロや英ポンドといった欧州通貨の買い越しが、最近にかけて記録的な拡大となっている。

ユーロ買い越しは、先週の段階で17.8万枚に拡大した。2010年以降で確認できる買い越しの最高記録は、2020年8月の21万1万枚だったので、それに接近する動きとなってきた(図表1参照)。

【図表1】CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

そんなユーロ以上に、このところ買いが勢い付いたのは英ポンド。英ポンド買い越しは先週にかけてついに6万枚を突破した(図表2参照)。これは、2010年以降で確認する限りでは初めてのことだ。

【図表2】CFTC統計の投機筋の英ポンド・ポジション(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

英ポンドの買い越しが急拡大したのは6月末頃からなので、まだほんの1ヶ月程度のことだ(図表3参照)。きっかけになったのは、根強い英国のインフレ懸念を受けて、利上げシナリオが大きく上方修正される見通しになったこと。

【図表3】CFTC統計の投機筋の英ポンド・ポジション(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

そもそも、金融政策の転換は、「世界一の経済大国」である米国が先行するのが基本。今回のインフレ対策の利上げ局面でも、当初は米国以外の国が米国に追随する形となるため、為替相場では米ドル高が先行しやすい。

一方で、利上げ局面の終盤では、米国が先行して利上げ終了、利下げへ転換する見通しが基本になるため、為替相場では米ドル安が起こりやすくなる(図表4参照)。これまで見てきたように、最近にかけて欧州通貨の買いが急拡大した背景には、そうした金融政策の転換期特有の影響がありそうだ。

【図表4】ユーロ/米ドルの週足チャート(2022年10月~)
出所:マネックストレーダーFX

ただ、先週発表された英国の6月CPI(消費者物価指数)が予想より弱かったことを受けて、利上げシナリオが大幅に下方修正される見通しとなった。CPI発表以前は、さらに1.5%程度もの利上げ見通しが基本だったところが、CPI発表後は一転して0.75%程度と利上げ見通しが一気に「半分」になった。

すでに見てきたように、ユーロや英ポンドといった欧州通貨は記録的な買い越しとなり、「買われ過ぎ」も懸念されていた中だけに、欧州の利上げシナリオの下方修正といった要因をきっかけに、「買われ過ぎ」の修正がどこまで入るかは注目されるところだろう。