モトリーフール米国本社、 – 2023年7月17日 投稿記事より
主なポイント
・AIへの関心の高まりに伴って、シュレーディンガーの株価も上昇している
・同社の創薬ソフトウェアは、すでに売上高をもたらしている
・パイプラインは数年後に大きなリターンを生み出す可能性がある
シュレーディンガー[SDGR]のソフトウェアプラットフォームは、多くのバイオ医薬品企業にとって中核的なツールとなる可能性がある
シュレーディンガーは株価が急伸しており、年初来で191%というリターンを上げています。売上高の好調に加え、バイオ創薬に使われる同社のソフトウェアプラットフォームで、今話題の人工知能(AI)を活用していることが株価を押し上げています。同社は多額の現金を消費していますが、AIブームに終わりが見えず、また同社の売上成長に減速する兆候もないことから、株価はとどまることなく、ますます上昇すると思われます。
この企業には、見た目以上の魅力があるようです。株式を買う価値があるかどうか、詳しく見てみましょう。
株価高騰の裏で起こっていること
シュレーディンガーの収入源は3つあります。創薬ソフトウェアの第3者へのライセンス供与、バイオ医薬品企業との直接提携による医薬品開発支援、そして理論上は、自社開発した新薬の製造です。2023年第1四半期の売上高は、ソフトウェアライセンスから3220万ドル、ブリストル・マイヤーズスクイブ[BMY]といったパートナー企業から3260万ドルでした。
シュレーディンガーのプラットフォームの考え方は、機械学習を活用することにより、最も有望でさらに研究を進めるべき治療薬候補を特定し、創薬プロセスを合理化することができるというものです。バイオ医薬品企業にとって、ヒトでの臨床試験に向けて候補薬を進める過程で失敗の回数が多いほど研究開発(R&D)コストがかさむため、シュレーディンガーのソフトウェアは、成果を上げ続ける限り需要も続くとみられます。
経営陣は、2023年にソフトウェア部門が前年比17%成長すると見込んでいます。四半期売上高は過去3年間で151%増加して、2023年第1四半期には6470万ドルに達したことからも、市場は同社が今後も成長を続けると見ていると思われ、それが株価上昇につながっています。しかも、この数字には、医薬品開発部門は考慮されていません。
まだ上市されている医薬品はなく、パイプラインで臨床段階にあるのも、再発性または治療抵抗性の非ホジキンリンパ腫を対象とした第1相臨床試験の1件のみです。これは、パイプラインから少しでも売上を上げるチャンスが訪れるまでに、まだ何年もかかることを意味します。しかし、もし将来的に医薬品を商品化することができれば、株価にとって大きなカタリストとなり、多くの売上高を生み出すでしょう。そのため、足元で高騰しているとはいえ、株価は今後も上昇し続ける可能性があります(ただし保証はありません)。
グロース投資家にとって積極果敢な銘柄選択となり得る
シュレーディンガーは間違いなく、適切な顧客を適切な時期に適切なツールでターゲットにしている企業ですが、いくつかの理由からリスクもあります。
まず、同社は2022年に1億2770万ドルの現金を消費し、現在のバランスシート上には、総額5億2760万ドルの現金、現金同等物、短期有価証券があります。つまり、いずれ黒字化する必要があり、それはソフトウェア売上によって実現する可能性が高いと言えます。負債総額は1億1580万ドルで、驚くほどの額ではありませんが、追加で資金を借りるとなれば、既存の借入金よりも高い金利になる可能性が高いとみられます。
また、株価売上高倍率(PSR)は18.8倍と、バリュエーションには割高感があります。グロース投資家であれば、この程度のバリュエーションで躊躇することもないでしょうが、保守的な投資家や割安株を探しているバリュー投資家であれば、手を出さない水準です。膨張したバリュエーションは、時として株価急落の原因となる恐れがあります。
とりわけ重要なのは、同社のソフトウェアプラットフォームが、創薬、共同研究、医薬品開発において真の競争優位性をもたらすことを示せていないことです。今のところ、同社は急速に成長しているため、それはさほど重要ではないかもしれません。しかし、将来的に(近い将来ではないでしょうが)、AIを活用した創薬サービスが他にも多く生まれた時、シュレーディンガーのサービスがどれだけ卓越しているかは分かりません。
とはいえ、少なくともあと数年間は、この懸念が大きなリスク要因になることはないでしょう。株価は割高かもしれませんが、持続的成長が見込まれていることから、足元のバリュエーションは容易に正当化できるはずです。
最終的に、シュレーディンガーは、現金燃焼率と債務負担によってすぐに立ち行かなくなることはないと思われ、もしそうなるとしても、その前に多くの警告サインが発せられるでしょう。
そのため、グロース銘柄を探しているなら、シュレーディンガーは有望な銘柄の1つと言えるかもしれません。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Alex Carchidiは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、ブリストル・マイヤーズスクイブの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、以下のオプションを推奨しています。シュレーディンガーの2024年1月満期の75ドルコールのロング。モトリーフールは情報開示方針を定めています。