S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。構成銘柄に採用されるには米国企業であることが前提で、それは米国内での売上高や固定資産、本社所在地などで判断されます。

このほかの要件には
・過去4四半期の純損益の合計が黒字で、直近の四半期の純損益が黒字
・グローバル産業分類標準(GICS)の分類に基づく産業バランスが適切
――などがあります。また、時価総額の基準は2025年1月に「205億ドル以上」となり、それまでの「180億ドル以上」から一段とハードルが上がっています。

今回は2025年3月24日から晴れてS&P500に加わるTKO・グループ・ホールディングス[TKO]、ドアダッシュ[DASH]、ウィリアムズソノマ[WSM]、エクスパンド・エナジー[EXE]に加え、2024年12月に採用されたワークデイ[WDAY]の5銘柄をご紹介します。

TKO・グループ・ホールディングス[TKO]、格闘技団体の合併で誕生

UFCとWWEの運営母体が2023年に合併

TKO・グループ・ホールディングス[TKO]は、スポーツ・エンターテインメント事業を手掛ける企業です。総合格闘技団体のUFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)と世界最大のプロレス団体のWWE(ワールド・レスリング・エンターテインメント)の運営母体が2023年に合併して誕生しました。格闘系では圧倒的なコンテンツを持っています。

UFCは世界最高峰の総合格闘技イベントを開催する団体として知られています。UFCに参加する格闘家はオクタゴンと呼ばれる八角形のケージの中で打撃技や関節技で相手と対戦し、階級別の王者を目指します。試合は170を超える国・地域の約9億5000万世帯向けに放送されており、ファンの数は7億人超、SNSのフォロワーは約3億人です。

WWEもファンの数が7億人以上で、SNSのフォロワーは約3億8000万人に上ります。ユーチューブの登録者数は1億人を超えており、再生回数で世界有数のユーチューブ・チャンネルと言われています。

UFCとWWEは年間に約300回に上るライブイベントを開催し、200万人以上を集客しています。こうしたライブイベントがコンテンツの基盤であり、収益を生み出す知的財産権となります。

コンテンツ提供やイベント事業などで収益を上げる

収益の柱はテレビ局や動画配信会社などのメディアへのコンテンツ提供です。ウォルト・ディズニー[DIS]の傘下で、米3大ネットワークテレビ局の一角を占めるABCをはじめ、ウォルト・ディズニー傘下のスポーツ専門チャンネルのESPN、動画配信最大手のネットフリックス[NFLX]、コムキャスト[CMCSA]傘下で3大ネットワークのNBCなどに提供し、収益を上げています。

ライブイベントではチケット料金や観戦ツアー料金などを得ています。スポンサー収入も重要な収益源で、スポーツ賭博運営会社のドラフトキングス[DKNG]、エナジードリンクのモンスター・ビバレッジ[MNST]、ITのアイビーエム[IBM]、日用品のプロクター・アンド・ギャンブル[PG]、コカ・コーラ[KO]などがスポンサーに名を連ねています。

さらに消費者向け製品のライセンス供与でも収入を得ています。ゲーム会社やスポーツ用品メーカーにライセンスを付与しています。

2024年12月期のセグメント別業績はUFCの売上高が前年比8.8%増の14億600万ドル、調整後EBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)が6.0%増の8億100万ドルです。WWEは売上高が前年の3.7倍に当たる13億9800万ドル、調整後EBITDAが4.2倍の6億8100万ドルに急増しました。

【図表1】TKO・グループ・ホールディングス[TKO]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表2】TKO・グループ・ホールディングス[TKO]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年3月21日時点)

ドアダッシュ[DASH]、フードデリバリーの最大手

ドアダッシュ[DASH]はフードデリバリー事業を展開しています。米国では60%を超える市場シェアを握る圧倒的な最大手で、ウーバー・テクノロジーズ[UBER]が手掛ける2位のウーバーイーツを大きく引き離しています。

消費者がアプリやウェブサイト上にあるマーケットプレイスで料理や日用品を注文すると、店舗側は料理や商品を用意します。ダッシャーと呼ばれる配達員が店舗で受け取り、配達する仕組みです。

手数料は消費者側と店舗側の双方から受け取ります。ダッシャーに手数料の一部を支払い、残りがドアダッシュの実際の収入になります。2024年12月の月間アクティブユーザー数は約4200万人、「ダッシュパス」や「ウォルトプラス」と呼ばれるメンバーシップの会員数は2200万人に上ります。

事業は米国を中心に30ヶ国以上で手掛けています。「ドアダッシュ」ブランドが主軸で、2022年にフィンランドに本社を置く同業のウォルトを買収して業容を拡大しました。

ドアダッシュは、店舗側を支援するコマース・プラットフォーム事業も手掛けています。店舗側のブランドで配達を請け負うホワイトラベル・デリバリーがこの事業の主な収益源です。

企業統合・買収(M&A)にも積極的です。2022年にウォルトを買収したのに続き、2025年1月にはそのウォルトがルーマニアの同業のTazzを買収し、欧州事業の足場を一段と強固にしています。

【図表3】ドアダッシュ[DASH]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表4】ドアダッシュ[DASH]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年3月21日時点)

ウィリアムズソノマ[WSM]、高級家庭用品の専門店を展開

ウィリアムズソノマ[WSM]は、家庭用品の小売りチェーンを運営しています。高品質でデザイン性に優れたインテリアやキッチン用品に定評があり、実店舗に加え、ネット通販やカタログ通販でも製品を販売しています。

2024年1月末時点の直営店は518店です。店舗数の内訳はインテリアショップの「ポッタリーバーン」が184店、「ウィリアムズソノマ」が156店、「ウエストエルム」が121店、「ポッタリーバーン・キッズ」が46店、「リジュビネーション」が11店で続いています。米国をはじめカナダや英国、オーストラリアに店舗があります。フランチャイズ店は計138店舗で、メキシコや中東、インド、フィリピン、韓国などに展開しています。

「ポッタリーバーン」は1949年に創業した家具の販売店で、1986年にウィリアムズソノマが買収し、傘下に加えました。主要製品はベッドや照明、ラグ、装飾品などです。

「ウィリアムズソノマ」は社名にもなっているブランドで、調理器具や食器、家具、調理本などを扱います。一方、「ウエストエルム」は2002年にニューヨークのブルックリン地区で生まれた店舗で、ユニークな装飾品などで人気があります。

製品はアジアや欧州で買い付けるほか、ノースカロライナ州やオレゴン州、ミシシッピ州などにある自社の工場でも製造しています。主要生産品目は布張りのソファーや照明器具などです。

【図表5】ウィリアムズソノマ[WSM]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は1月
【図表6】ウィリアムズソノマ[WSM]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年3月21日時点)

エクスパンド・エナジー[EXE]、シェールガス開発に強み

エクスパンド・エナジー[EXE]は天然ガスや石油、天然ガス液(液化炭化水素)の探査・生産を手掛けています。元の社名はチェサピーク・エナジーで、サウスウエスタン・エナジーとの合併完了に伴い、2024年10月に現在の社名に変更しました。

独立系では天然ガス生産の国内最大手で、特にシェールガス開発に強みを持ちます。買収や探査、開発、生産で重点を置くのは、
・ルイジアナ州のヘインズビルとボージャーのシェール層
・ペンシルバニア州マーセラスのシェール層
・オハイオ州とウエストバージニア州のマーセラスとユティカのシェール層
――の3ヶ所です。

探査・生産中のガス井と油井は2024年末時点で約8000ヶ所に上ります。このうち自社がオペレーターとして開発・生産活動の主導が可能なワーキング・インタレストの権益を持つのが6200ヶ所で、ほぼすべてがガス井です。実際には5500ヶ所のガス井でオペレーターとして開発・生産を手掛けています。

2024年末時点の推定埋蔵量は、天然ガスが16兆9240億立方フィート、石油が6790万バレル、天然ガス液が5億7810万バレルです。これは天然ガス換算で20兆8000億立方フィートとなります。

【図表7】エクスパンド・エナジー[EXE]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表8】エクスパンド・エナジー[EXE]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年3月21日時点)

ワークデイ[WDAY]、人材・資金管理プラットフォームを提供

ワークデイ[WDAY]は法人向けに人材や資金を管理するクラウドベースのプラットフォームを提供しています。「ワークデイ人工知能(AI)」と呼ぶAIを搭載したプラットフォームを通じ、労働生産性の向上や財務管理の強化に向けた取り組みを支援します。

プラットフォームに組み込む主なアプリケーションは「財務管理」、「支出管理」、「人材管理」、「事業計画」などで、それぞれ独自の機能を持ちます。「財務管理」では売り掛けや買い掛けなど主要取引の監視やリアルタイムでの財務状況を把握し、「支出管理」は調達や発注などの支出を管理します。

「人材管理」は従業員の入社から退職までのライフサイクルを管理するツールです。「事業計画」では、財務、人材、販売、営業などのデータを活用し、事業計画の策定を支援します。

ワークデイは1万1000を超える法人にサービスを提供しています。特に中堅企業や大企業への提供に強みを持ち、フォーチュン500に選定される米国の大企業の60%以上がワークデイのサービスを利用しています。

【図表9】ワークデイ[WDAY]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は1月
【図表10】ワークデイ[WDAY]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年3月21日時点)