モトリーフール米国本社、 2023年6月4日 投稿記事より

主なポイント

・AIは投資家にとってゲームチェンジャーとなりつつあり、さまざまな業界セグメントで独自の機会を提供している
・ラムリサーチ、ラティス・セミコンダクター、クラウドフレアは、進化するAIランドスケープにおける主要プレーヤーであり、各社独自のアプローチにより、それぞれに将来の成長が期待される
・AI関連企業へ分散投資することで、単一セクターへの集中投資に伴うボラティリティに対するヘッジとなり得る

業界リーダー3社を通して総合的に見るAI投資の未来

人工知能(AI)は、テクノロジーの限界を大きく打ち破り、業界のあり方を根本的に変えようとしています。AIはもはやSF世界の出来事ではなく、従来のビジネスモデルやビジネス基準を破壊する、魅惑的な投資テーマとして浮上しています。

ここでは、AIの長期的な未来に投資するベストアイデアとして、半導体業界からラム・リサーチとラティス・セミコンダクターの2社、そしてネットワークセキュリティサービスのクラウドフレアを紹介します。これら3社はいずれも、AI業界の急成長で大きな追い風を受けるポジションにいます。

ラム・リサーチ:AIによる「ブーム」の到来を予見

多くの人は、半導体製造装置メーカーのラム・リサーチとメモリ市場を同一視しています。残念ながら、メモリ市場は現在、過去最悪レベルの状況にあり、ラム・リサーチの業績も2023年に低下しています。

しかし、ラム・リサーチが近年、最先端のロジック事業を育成していることに気づいていない人もいるようです。また、最先端ファウンドリは今まさに、新しいタイプのトランジスタ構造への移行を進めているところで、これはラム・リサーチやライバル企業に大きな恩恵をもたらす可能性があります。AIが最先端チップとメモリを大量に消費することを考えると、AIが主導するコロナ後の混乱からの回復は、ラム・リサーチの見通しにとって大きな好材料となる可能性があります。

テクノロジーの移行に関して言うと、最先端ファウンドリは、ソース・トランジスタの3つの面にゲートが接触するFinFET構造から、トランジスタを垂直に積み重ねることで4面すべてがゲートに接触し、制御性と電力効率が向上するGAA構造への移行を進めています。

このGAAチップの生産では、ラム・リサーチが装置を製造する選択的エッチングと原子層堆積(ALD)が一段と重要になります。ラム・リサーチの経営陣は、業界全体でウェハ製造が月産10万枚増えるたびに、エッチング・堆積装置メーカーには追加で10億ドルの売上機会となり、半導体製造装置業界全体におけるエッチング・堆積装置メーカーのウェハ当たりの市場シェアが増加するとみています。

現在、サムスン電子は、3nmノードでGAA構造を採用したチップを生産しており、2024年には増産を予定しています。一方で、業界トップの台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)(TSM)は、2025年から2nmノードでGAA構造を採用する計画です。

現在、業界全体におけるメモリ支出の割合は過去最低となっています。しかし、今後はAI向け用途で、膨大な量のメモリを必要とする見通しです。メモリ支出におけるAIの割合が高くなるにつれて、2024年か2025年にはメモリ業界も徐々に回復し、ラム・リサーチにとってはさらなる追い風となるでしょう。

2024年頃にメモリの回復とGAAチップへの移行が本格化すれば、ラム・リサーチが2022年の低迷から脱して、新たな「上昇サイクル」に乗るのにどれだけ優位なポジションにいるか分かるはずです。ラム・リサーチの株価は、底値から大きく上昇していますが、2021年後半の高値を依然として下回り、株価収益率(PER)はわずか17倍です。

ラム・リサーチをフォローしたことがある投資家なら、こうした循環性の高い銘柄では、業績が回復する前に株価が上昇する傾向があることを知っているはずです。半導体サイクルは底打ちした、または底打ちが近いと見られており、このような長期的なアウトパフォーム銘柄に投資する絶好のチャンスかもしれません。

クラウドフレア:AIアプリケーションのパフォーマンスとセキュリティを支える隠れたヒーロー

AIビジネスにおける主要なプレーヤーとして、ネットワークのパフォーマンス向上とセキュリティ強化を専門とするクラウドフレアが思い浮かばなかったあなたは、調査不足かもしれません。

ChatGPTやDall-EといったAIシステムは、ネットワーク攻撃から保護する必要があります。一部のハッカーは、分散型サービス妨害(DDoS)攻撃によって人気サービスを屈服させることに喜びを感じているようです。また、有料サービスを無料で利用する方法を見つけ、それを転売して利益を得ようとする者もいます。これらは、あらゆるオンラインビジネスが直面する多くのセキュリティ脅威のほんの2例にすぎません。クラウドフレアは、こうした攻撃を軽減するためのセキュリティツールの主要プロバイダーです。

実際、同社はDDoS攻撃対策ネットワークプロキシで、既に多くの主要な生成AIサービスに採用されており、オープンAIのChatGPTもその1つです。皮肉なことに、クラウドフレアの攻撃阻止システムは、自社の機械学習ツールを使って新しいタイプの攻撃を特定し、撃退しています。

その上、クラウドフレアは事前に訓練された深層学習ツールやその他のAI機能を搭載した、エッジコンピューティングサーバーのグローバルネットワークも提供しています。

現在、クラウドフレアは株価売上高倍率(PSR)21倍、PER165倍であり、どう見ても割安ではありません。しかし、足元の割高なバリュエーションを通じて、強固なキャッシュフローを生み出す加速的な成長企業に投資できると思ったらどうでしょうか。

クラウドフレアの利益率の高いセキュリティサービスに投資する場合、選択を迫られます。割高な株価で市場リスクを受け入れるか、あるいは、この銘柄は変動が大きいため、すぐに買いたい気持ちを抑えて押し目買いを狙うかです。いずれにせよ、AIアプリケーションの未来と、その動作を維持するためのセキュリティツールへ投資しない手はありません。

ラティス・セミコンダクター:エネルギー効率の向上に寄与する半導体小型株

過去10年間、FPGA(現場でプログラム可能な集積回路)半導体市場では、インテルが複数のFPGAを買収したことをきっかけに再編が進み、2022年初めにアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)がFPGA大手のザイリンクスを買収したことでピークを迎えました。FPGAチップに特化した上場企業として、ラティス・セミコンダクターは最後の独立した企業かもしれません。

それにしても、FPGAチップとはいったい何なのでしょうか。そしてAIにとってどのような意味を持つのでしょうか。FPGAは、アプリケーションに依存しないチップで、データセンター、通信ネットワーク、自動車、工場など、さまざまな「現場で」カスタマイズすることができます。過去には、新しいチップシステムを大量生産する前のテストや検証にも使われてきました。FPGAを利用するためには、深いレベルでのソフトウェア・プログラミングが必要になりますが、ラティス・セミコンダクターは、自社のチップを使いやすくするための一連のソフトウェアツールを独自に構築しています。

AIと複雑なソフトウェアシステムの新時代において、FPGAには大きな需要があります。さまざまな業界で手頃な価格で導入することができ、電力効率も高水準です。これこそまさに、AMDがザイリンクスを手に入れたかった理由であり、ラティス・セミコンダクターの株価を押し上げてきたトレンドでもあります。ラティス・セミコンダクターの2023年第1四半期売上高は、前年同期比22%増の1億8,400万ドルでした。

また、企業規模が小さいにも関わらず、第1四半期の営業利益率は32%と極めて健全な水準にある点も注目に値します。同社の見通しは明るく、今後数年間で新製品(データセンター、自動車技術、産業オートメーション)の発売によるさらなる成長と、それと同時に利益率の着実な上昇を見込んでいます。

最大の問題はバリュエーションです。過去12ヶ月実績PERは57倍、2023年予想PERは39倍と、株価は割高です。過大評価は、将来の投資リターンに対するリスクとなる可能性があります。とはいえ、AIやその他の高性能コンピューティングでの採用による同社の潜在性は有望であり、最後のFPGA専業企業というポジションも魅力的です。高値掴みを和らげるためには、今後1年をかけてポジションを少しずつ買い増していくドルコスト平均法という方法も有効かもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Anders Bylundは、インテルの株式を保有しています。元記事の筆者Billy Dubersteinは、ラムリサーチ、TSMCの株式を保有しています。同氏の顧客は、記載されている企業の株式を所有している可能性があります。元記事の筆者Nicholas Rossolilloは、AMD、クラウドフレア、ラティス・セミコンダクターの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はAMD、クラウドフレア、ラムリサーチ、TSMCの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、インテルの株式および以下のオプションを推奨しています。インテルの2023年1月満期の57.50ドルコールのロング、同2025年1月満期の45ドルコールのロング。モトリーフールは情報開示方針を定めています。