製造業の回復は鈍化ながら、新たな政策を次々と打ち出す中国

2023年4月上旬~2023年4月末の中国本土市場・香港市場はまちまちの動きになっています。2023年4月3日終値~2023年4月28日までの騰落率は、上海総合指数が+0.8%、香港ハンセン指数は-2.5%となっています。

上海総合指数は引き続き、高値での停滞が続いている感じですが、50日移動平均線は上向きで推移してきており、足元の株価基調も強くなっています。中国経済はゼロコロナ政策撤回以降、回復に向かってはいるのですが、世界経済のスローダウンなどもあり、製造業がそれほどには強く回復していないのが現状です。

例えば、4月30日に発表された4月の中国国家製造業PMIは49.2と、市場予想の51.4や前月実績の51.9を下回り、景況感の境目である50も下回りました。なお、同日に発表された4月の中国国家非製造業PMIは56.4と市場予想の57.0や前月実績の58.2は下回ったものの比較的好調でサービス業よりも製造業が落ち込んでいることがよくわかります。

しかし、中国当局も次々と政策を打ち出しています。4月24日にはロイター通信が消息筋の話として、中国当局が国内銀行に預金金利を引き下げるように促したと報じています。これは預金口座に滞留している資金を投資や消費に向かわせるように促す目的があります。

また、中国工業情報化部は自動車消費と安定の拡大に向けた有効策を適宜打ち出せるような方針を示しました。このような各種政策によって中国の経済は緩やかに回復を続けていくことが期待されている中、中国本土市場は上昇を続けているところです。

4月28日は強い陽線で引けていますが、直近高値である4月18日につけた3396.175を終値ベースで超えてくるような動きとなれば、上昇は加速しそうです。

軟調の香港ハンセン指数、その3つの理由とは

一方、香港ハンセン指数は上海総合指数に比べると軟調な推移が続いています。下落したところでは下向きの200日移動平均線が支持線となる形で反発し、大きな下落には至っていないものの、50日移動平均線は下向きで推移しており、株価の抵抗線となっているような感じです。

香港ハンセン指数の軟調な原因は何かと言えば、大きく分けて3つあると思います。1つにはバイデン米大統領が、米企業による中国の先進技術分野への投資を審査・制限する大統領令を出す可能性があると伝わるなど、米中対立への懸念が強まっていることがあります。

次に香港市場で時価総額が最も大きなテンセント(00700)やアリババ・グループ・ホールディング(09988)の主要株主が株式を売却する方針を示していることがあります。もちろん、テンセントやアリババ・グループ・ホールディングは自社株買いを行い、その影響を小さくしようとしているのですが、全体的に株価は軟調に推移しています。

3つ目は世界的な株価動向です。確かに米国株の主要指数は上昇しているのですが、それはGAFAMに代表される時価総額が大きくて、キャッシュ創出能力があり、多大な資本を抱えている銘柄に安全を目指す資金が流れ込んでいるからです。中小型株は下落しており、大きな意味で言えば、市場全体はリスクオフで香港株もその影響を受け、売られているとも言えると思います。

今後の見通しについてですが、毎年の傾向として5月~10月までの半年間は株価が下がりやすいというアノマリーがあります(いわゆるセルインメイ)。また、米国の金融引き締めは続き、金融機関の不安定な状況も続いています。米国株の主要指数は上昇するかもしれませんが、全体的にはリスクオフ気味のムードが続き、中国株もその余波を受けそうです。

しかし、例えばテンセントの過去の安値はどこだったかと言えば、テンセントが自社株買いを行っていた時期と重なります。米国株と異なり、中国は金融緩和が続いており、政策期待もあります。

そして、2021年から2022年に売られ続けてきただけに株価水準はまだ割安です。以上のことを考えると、5月~10月までの半年間に株価が下がるところがあれば、優良株の買いチャンスであるという考え方は変わらないと思います。