過去1年のインフレによる株価の下落について

さわかみ投信の澤上篤人さんは、過去1年間、インフレによる未曽有の暴落を唱えていますが、広木さんの見解をご教示ください。

澤上さんの主張はどのようなものかは知らないのですが、「未曽有の暴落」というものは、予想・予期し得ないから「未曽有の暴落」です。

株価が下がり得る何らかの理由があって、株価の下落が予見されるならば、それは澤上さんだけでなく他の人にも予見可能であるでしょうから、そんな大きな暴落にはならず、起きたとしても「普通の暴落」でしょう。ここで「暴落」の定義には詳しく立ち入らないとしても、一般的に大きな株価の下落を「暴落」とすれば、「普通の暴落」は頻繁に起こります。ですから、「株価が暴落する」というのは自明のことなので、騒ぎ立てる話ではありません。

インフレについて言えば、すでに近年では例を見ないインフレの高進によって世界の中央銀行が金融引き締めに動き、欧米の株価は大きく下がりました。なので「インフレによる株価の下落」は中央銀行の利上げによって「既に起きた」、あるいは「起きている」と言えるでしょう。無論、この先、「未曽有の暴落」が起きない保証はありません。

但し、「未曽有の暴落」なるものが起きるとすれば、それはすでに世界中が騒ぎ立てているインフレが原因となるものではなく、まったく予想だにしなかったことが原因となって起きるのだろうと考えます。

松本さんの「マイクロソフトのITインフラは他社の追随を許さない。にもかかわらず売られ過ぎ。」との言葉を聞いて飛びつきました。

一方、今後、米大手IT企業には厳しい規制が課せられ見通しは厳しいとの話を聞き不安です。広木さんはいかが考えられますか。

「マイクロソフトのITインフラは他社の追随を許さない。にもかかわらず売られ過ぎ」は同感です。GAFAMのなかでマイクロソフトだけはクラウドの成功もあって好業績を維持しています。

他のIT大手は規制もありますが、それ以上に、これまで良過ぎた反動で成長の「踊り場」を迎えているのだろうと思います。株価の面ではFRBの利上げも重石です。

但し、この先、また力強く成長していけると考えます。マイクロソフト、アップルなどがそれを証明していると思います。

初心者ですが、株の板の硬直が気になります。

たかだか1円とか10円違いであれば、成り行きでどんどん買えばいいのに、みんな取引が成立しないギリギリのところで、踏みとどまっているのが不思議です。そういうものなのでしょうか。

そういうものです。機関投資家はパフォーマンスがすべてですが、それはベンチマークとの競争です。ファンドマネージャーは銘柄選択で勝負しますが、その売買を執行するトレーダーにもまたトレーディングのベンチマーク（VWAP；売買高加重平均価格など）があります。またファンドマネージャーにしてもベンチマークに勝てるのはわずかなので、トレーディングで稼いでもらうのはありがたい。よって１銘柄数１bps（0.01%）でもそれが100銘柄なら１％の違いになるし、1回のトレーディングで１bps（0.01%）でもそれが100回なら１％の違いになる。

だから、プロはみんな１円でも10円でも最良の執行をしようとするのです。そして、いまは機械（アルゴリズム）が売買執行する時代になっていますから、ぎりぎりのところで踏みとどまっているように見えますが、それはAIからすれば自然なことだと言えるでしょう。

23年の日経の予想が聞きたいです。

2023年相場展望で執筆しています。
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