2022年に入り、円安/米ドル高が急速に進みました。10月20日には1ドル=150円を突破し、約32年ぶりの円安/米ドル高水準更新です。本コラム執筆時点(11月15日)では、1ドル=139円です。

為替レートの値動きとは裏腹に、2021年まで好調だった米国株式市場は下落相場となっています。米国金利の利上げによる景気停滞を見越して、米国株安に動いています。ここ数年、米国市場を牽引してきた情報技術セクター銘柄の雄といえば、GAFAMですが業績に陰りが見え始めています。

メタ・プラットフォームズ(META)は11月9日、全従業員の約13%にあたる1万1,000人を解雇すると発表しました。また、11月14日にはアマゾン・ドットコム(AMZN)が、約1万人の従業員の削減を計画していることが明らかになりました。雇用調整のニュースは、本格的な株価下落が起こる前触れかもしれません。

これまで米国市場が好調だったことから、S&P500などの米国株価指数に連動する投資信託やETF、個別株に投資してきた人も多いでしょう。

このような円安・株安のマーケットで、積立投資を今まで通り続けるべきか、下がっているからこそ投資金額を増やした方が良いのか、はたまた投資金額を減らした方が良いのか、悩んでいる人もいると思います。今回は、その辺りについて一緒に考えていきます。

為替レートの水準を考えても意味はない

円安になると、S&P500など米国株価指数連動の投資信託を高く買い付けることになるため、「円安のときは投資をやめて、円高になってから投資したい」と思う人もいるのではないでしょうか。現在の状況は株安になっているため、安く買えるはずなのに円安が原因で購入価格が高くなっているというわけです。

ところで、11月10日に米10月消費者物価指数(CPI)が発表されました。事前予想と比べて下振れしたことから、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ見通しが下方修正されたため、1ドル146円台前半から140円台前半へと一時6円近くも円高になりました。一方で、米国株は大幅高となりました。

円高になってから買いたかったものの、今度は株高になったことで、日本人目線からすると、購入価格はほぼプラスマイナスゼロです。改めて、タイミングを見て投資する難しさを感じたところです。価格の上げ下げは気にせず、積立投資は淡々と続けるのが正解だと思います。

結論として、為替レートに関係なくS&P500などの米国株価指数への投資は続けるべきです。リーマンショック以降の米ドル/円の為替レートとS&P500の動きは次のようになっています。

【図表1】米ドル/円の為替レートとS&P500の推移(2008年9月~2022年10月)
出所:(株)Money&You作成
※ 米ドル/円は「東京市場米ドル・円スポット17時時点/月末

 

青いグラフのS&P500は直近値下がりしているものの、総じて右肩上がりで成長しているのに対して、オレンジのグラフの米ドル/円の為替レートは上下に変動しています。70円台の円高になっている時期もあります。直近は急激に円安/米ドル高に進んでいるのも見てとれます。

価格の上げ下げを気にせず、2008年9月から2022年10月までS&P500に毎月1万円ずつ積立投資した場合の推移は次のとおりです。

【図表2】リーマンショックからS&P500に月1万円ずつ投資した場合(2008年9月~2022年10月)
出所:(株)Money&You作成

 

2022年10月までの投資総額は170万円です。それに対して、資産総額は552万円に増加。382万円も利益を出しています。コロナショックで一時的に資産を減らしていますが、それも乗り越え資産が増えている様子がわかります。

円安・円高、株安・株高を気にして投資を躊躇したままでは、上記のように堅実に資産を築くことは難しいのではないでしょうか。

ところで、「為替変動によらず資産を増やす」ために重要なポイントは、投資している「資産自体」が長期的に右肩上がりになるかです。今回の例で言えば、S&P500が右肩上がりになっているため、資産が増加しているのです。

投資金額を増減した方が良いのかについての判断は、マーケットの変動に合わせて増減を調整するのは難易度がかなり高いため、増減せずに淡々と続けるに限ります。投資は感情との戦いとも言われます。下手に増やしたり、減らしたりすることは精神力を消耗するだけです。

ドルコスト平均法の効果を考えれば、金額は減らさずに続けることが大切です。マーケットは常に上下に動いています。その中で定期的に定額ずつ購入することで、価格が高い時には少なく、価格が低い時には多く買い付けできるので平均購入価格は自然と下がっていきます。平均購入価格が下がれば、値上がりした際に利益を出しやすくなります。

投資金額を増やしても良いのは投資資金に余裕が出てきた場合です。逆に減らした方が良いのは毎月の家計が厳しくなった場合です。その場合、無理せず投資に回す金額は減らした方が良いでしょう。

米国株式市場が長期的に右肩上がりになる3つの理由

投資している「資産自体」が、長期的に右肩上がりになっているかが重要という話をしました。

市場はこれまで暴落・株価下落を何回も経験していますが、そのたびに回復してきているのも事実です。米国株式市場も今回の下落相場を乗り越えて、再び右肩上がりになるとみています。その理由は大きく3つあります。

1:長期的に人口増大→消費拡大→経済拡大

米国のGDP(国内総生産)は世界トップです。その上、主要先進国の中で唯一、人口が増加しています。およそ3.3億人いる米国の人口は今なお増加を続け、2050年には3.8億人になる見込みです。人口が増えると、消費が拡大し、生産が拡大し、経済が拡大するという好循環が得られます。消費が伸びるかどうかという指標は、かなり重要です。なぜなら、個人の消費支出はGDPの7割を占める重要ファクターだからです。

2:世界を牽引する成長企業が多く、優秀なプロ経営者が多い

GAFAMだけでなく、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)、コカ・コーラ(KO)、スリーエム(MMM)など、米国には世界的な大企業が多くあります。

しかも、将来への投資(研究開発・設備投資・M&Aなど)も積極的で、高い成長力を保ち続けています。また、実力主義の米国では世界中からプロ経営者が集まり、ビジネスを拡大させています。

3:株式市場のスケールが大きく、お金が集まりやすい

Bloombergによると2022年10月末時点の世界の株式時価総額は93.6兆ドル。そのうち42.2兆ドル、45%を占めるのが米国です。世界中から投資マネーが集まることで米国企業が成長していきます。

また、米国株には高配当銘柄や連続増配銘柄が多く、年4回配当金を出す企業が一般的です。株主のメリットが大きいのもお金が集まりやすいポイントです。

今後、円高・株安が同時に来て、さらなる下落が来るかもしれません。しかし、そのタイミングはわからないし、下落相場から復活するまでの期間もわかりません。その一方、長期的には米国株式市場は右肩上がりになる可能性は高いと考えます。

そのため投資スタンスとして、下落相場は多くの株式を買付できるチャンスと捉え、ドルコスト平均法で淡々と投資を続けることです。そうすることで、再び右肩上がりになったときの利益を大きくできます。20年、30年と長期で積立投資を続けていれば、複利効果も味方につけて大きな資産を築けているのではないでしょうか。