中国共産党大会への期待感から株価上昇の動きも
2022年10月前半の中国本土市場・香港市場は、まちまちの動きとなっています。9月30日終値から10月17日終値までの騰落率は、上海総合指数が+2.0%、香港ハンセン指数は-3.5%となり、上海総合指数は反発し、香港ハンセン指数は続落となった形です。
もっとも、上昇している上海総合指数ではあるものの、200日移動平均線、50日移動平均線共に下向きで下落が続いており、株価はさらに両移動平均線の下に位置しています。
10月前半に上海総合指数が上昇となった理由はテクニカル的に下げ過ぎていたことに加え、いよいよ10月16日に開幕した中国共産党大会への期待感が背景にあったと思います。10月16日の中国共産党大会開幕に向けて中国政府系の金融機関(いわゆる国家隊)が株式市場の下支えに動いたとの見方もあります。
また、9月の経済指標も株価にプラスに働きました。9月の新規人民元建て融資ですが、市場予想の1兆8,000億元を大幅に上回る2兆4,700億元となったこと、同じく9月の消費者物価指数が2.8%増と、8月の2.5%増は上回ったものの、市場予想の2.9%増は下回ったことが背景にあります。
同じく生産者物価指数も0.9%増とこちらは8月の2.3%増を下回った上、市場予想の1.0%増も下回りました。これらの物価指数が低水準でいるうちは利下げなど、金融緩和の余地がまだあることになりますので、株価にはプラスとなります。
今後の注目はやはり、中国共産党大会が株価の大きな流れを変えるかどうかです。残念ながら、ゼロコロナ政策は堅持される方向です。共産党機関紙である『人民日報』にゼロコロナ政策は持続可能であり、中国は同政策を堅持すべきとの論説が掲載されたからです。
しかし、中国共産党大会の習近平国家主席による冒頭演説の中で、「住宅は住むためのもので、投機対象ではない」というコメントが無かったことは、もしかすると不動産業界への支援が拡大される方針を示唆しているかもしれないといった観測も出ており、そのような期待感から中国本土市場は上昇が続きやすい状況にあるかと思います。
第3四半期の中国経済は回復基調に
一方、香港株は引き続き下げ続けています。香港ハンセン指数も200日移動平均線、50日移動平均線共に下向きで下落が続いており、株価はさらに両移動平均線の下に位置しています。テクニカル的には下げ過ぎの位置にあるようにも見えますが、反発があってもすぐに売りが入って日足ローソク足チャートは上髭をつける日があるなど、弱い株価推移が続いています。
米国株が不安定になっていることに加え、世界的な新興国からの資金逃避の動きがあること、香港の金利が米国の金利と連動して上昇し続けているため、株式市場から抜け続けていることなどが背景にあるかと思います。
香港の2年物国債の金利は2021年末で0.67%程度だったところ、現在4.44%まで上昇してきています。国債金利が上昇すればするほど、株式市場の魅力は色褪せていってしまいます。米国が、これからさらなる利上げを検討していることを考えると、まだまだ金利は上昇していく可能性が高いわけですから、株式市場にとってはマイナスとなります。
もちろん、まったく光明が見えない状況かと言えば、そうでもありません。中国の実質GDP成長率を見ると、第2四半期は前年同期比0.4%増と、上海のロックダウンなどの影響から非常に低い数字となっていましたが、7-9月期はアナリスト予想によると3.5%増程度まで回復する見通しとなっています(なお、7-9月期のGDPは10月18日に発表予定でしたが、中国国家統計局は発表を延期するとし、新たな発表日も明らかにされていません)。
ともあれ、第2四半期よりは経済が回復してきているのは確率が高そうで、そうなれば、第2四半期まで状況が悪かった中国企業の業績も回復してくる可能性が高いのではないかと思います。
それらが11月から発表されてくることになりますので、その頃に米国の利上げがそろそろ打ち止めになりそうということになれば、株価の流れが変わるきっかけになるかもしれません。
また、中国共産党大会で中国本土株の潮目が変わり上昇基調に転じることができれば香港市場にも好影響を及ぼすものと思われ、そちらの方も期待したいところです。