投資の王道である長期・積立・分散投資は、値動きと上手く付き合いながらお金を堅実に増やす方法です。このうち積立投資は、あらかじめ決めた金額を一定のタイミングでコツコツ金融商品を購入する方法です。これをドルコスト平均法と言います。
金融商品の価格は上下に変動します。ドルコスト平均法の場合、価格が安い時はたくさん買い、逆に高い時には少ししか買えないので、平均購入単価が徐々に下がります。そのため、少しの値上がりでも利益を出しやすくできるのです。
積立投資というと、毎月1回、投資をするというイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、今ではネット証券を中心に「毎日積立」を選ぶことができ、より頻繁に積立投資ができるようになっています。
そこで気になるのが、毎月積立と毎日積立では、どちらが有利なのか、ということです。
一般的には、毎日積立の方が有利と言われています。その理由は、毎日積立の方が買付を行う回数が多くなり、時間の分散効果がより発揮されるので平均購入単価を下げられるからというもの。とはいえ、果たして本当にそうなのでしょうか。検証結果とともに解説していきます。
S&P500指数では毎日積立の方が僅差で有利
それでは、S&P500に毎月積立した場合と、毎日積立した場合で、収益率にどの程度の差が生まれるのかを検証してみましょう。
S&P500とは
S&P500は米国の株価指数であり、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダック証券取引所(NASDAQ)の上場株の中から500社を選抜して算出している株価指数です。米国株式市場カバー率は約80%なので、米国市場全体の値動きを大きく反映している指標です。
毎月積立では毎月末に3万円ずつ投資を行い、毎日積立では毎営業日に1,500円ずつ投資を行うこととします。積立期間を5年、10年、20年と設定した時の積立元本・資産総額・損益・収益率(積立元本に対する資産総額の増加率)をまとめたものが次の表です。
月によっては20営業日より多かったり少なかったりするので、毎月積立と毎日積立の積立元本に差が生まれます。そこで、収益額ではなく収益率で比較をするのが妥当です。
20年の収益率は、毎月積立が221.29%なのに対して、毎日積立は222.17%となりました。確かに毎日積立の方が有利ですが、収益率の差はわずかに0.96%。ほとんど差がないといってもよいでしょう。
同様に、10年間の収益率の差は1.24%、5年の収益率の差は0.33%です。5年、10年、20年の結果を見る限りでは、毎月でも毎日でもそれほど変わらないことがわかりました。
TOPIXも毎日積立の方が若干有利
また、収益率が僅差になるのは、S&P500という指標の特徴かもしれないと考え、TOPIXでも同様に毎月積立・毎日積立を5年、10年、20年行った場合の収益率を算出しました。
TOPIXとは
東京証券取引所に上場している約2,200銘柄の株価をもとに算出される株価指数です。S&P500同様、TOPIXに連動を目指す投資信託があります。こういった投資信託を投資対象とする場合、2,000銘柄以上に分散投資したのと同じ効果が得られるというわけです。
その結果は下の表の通りです。参考としてS&P500の結果も載せています。
TOPIXの収益率ですが、20年間の差は0.44%、10年間の収益率の差は0.51%で、毎日積立の方が有利という結果です。
5年の収益率の差は0.31%で、毎月積立の方が有利という結果になりました。5年、10年、20年の結果を見る限り、TOPIXでも毎月積立と毎日積立の差はほとんどないことがわかりました。
検証時期をずらしても、毎日積立の方が若干有利
この検証は過去に検証した2001年2月1日~2021年1月31日までのデータにおいても同様の結果となっています。
以上の結果から、毎月積立と毎日積立、どちらにするかで悩む必要はありません。毎月積立しかできない金融機関を利用し、すでに積立投資をしているという場合は、そのまま毎月積立を続けて良いでしょう。
しかし、もし毎日積立を選べるのであれば、差はわずかですが収益率が良い結果となる、毎日積立を検討してみても良いかもしれません。