モトリーフール米国本社、2022年9月19日 投稿記事より

主なポイント

・ネットフリックスが予定している広告付きプランに対して、複数のアナリストが強気の見方を示し、オッペンハイマーも投資判断を引き上げ
・オッペンハイマーのアナリスト、ジェイソン・ヘルフスタイン氏による目標株価は325ドルで、現在の水準から35%の上値余地
・低価格の広告付きプランは解約率の低下と会員数の伸びに寄与する見通しだが、既存会員のプラン変更に伴って売上高が減少する可能性もある

市場全体の下落に逆らいネットフリックスの株価が上昇。しかし、これはほんの始まりにすぎない

動画ストリーミングサービス大手のネットフリックスは、主要な株価指数が5%近く下落した先週の市場で上昇した数少ない1社でした。複数のアナリストが強気の見通しを示したことを受け、同社の株価は市場全体の下落トレンドに逆らって3%上昇しました。

ネットフリックスの広告付きプランの導入に先立ち、JPモルガンやエバーコアISIのアナリストが楽観的な見通しを示したことが株価上昇につながりましたが、同社に対する強気の見方を出す動きは1週間で終わりませんでした。オッペンハイマーは今週初め、市場が開く前にネットフリックスの投資判断を「パフォーム」から「アウトパフォーム」に引き上げました。

現代のテレビにはいつだって良いものがある

オッペンハイマーのジェイソン・ヘルフスタイン氏は、ネットフリックスが、15年前に動画ストリーミング市場のパイオニアとしてサービスを開始した時からずっと避けてきた広告付きプランの導入に踏み切ったことで、同社の可能性を有望視しています。もちろん、従来のプラン、つまり広告が表示されないプランも継続されますが、安さを求める視聴者向けに、人気コンテンツの視聴中に動画広告が挿入される低価格プランという選択肢が追加されます。

ネットフリックスの価値は、数字が証明しています。第2四半期末時点の世界の有料会員数は2億2,070万人でした。しかし、会員数は連続で前四半期を下回っており、状況は楽観できません。ストリーミング市場は今や競争が非常に激しく、ネットフリックスは2022年初めの値上げが失策だった可能性もあることから、低価格プランをユーザーに提供する必要性を認識しています。同社は2023年初めにも広告付きの新プランを開始する予定ですが、一部では、早ければ年内に開始される可能性もあるとの報道もあります。10月に予定されている第3四半期決算発表の際に、具体的なスケジュールや料金などが明らかになると思われます。

オッペンハイマーのヘルフスタイン氏は、広告付きプランの導入で会員数の伸びが加速し、ユーザーのネットフリックス離れを防ぐことができるとみています。新サービスは月額料金の安さを売りにしていますが、最終的にユーザー1人当たり平均売上高(ARPU)は増加すると同氏は考えています。ネットフリックスのユーザーは、同社のプラットフォーム上で何時間も過ごすため、プラットフォームの総視聴時間が増加することは容易に想像できます。また、ネットフリックス側は、広告主が、これまでテレビコマーシャルでカバーできなかったネットフリックスの視聴者にリーチするために、高額の広告料を喜んで支払ってくれることを期待しています。

ヘルフスタイン氏は、ネットフリックスの2025年の売上高を424億ドル、このうち広告収入を46億ドルと予想しています。もちろん、売上高を押し上げるのは広告収入だけではありません。同氏は、低価格の広告付きプランにより解約率が低下するのと同時に、新規会員を引き付け、今後3年間で会員数は2億8,200万人に達すると見ています。同氏はネットフリックスの目標株価を、現在の水準を35%上回る325ドルとしています。

ネットフリックスも、新プランに大きな期待を寄せています。今から1年後には新プランのアカウント数が4,000万件に達し、その3分の1を米国市場が占めると同社は予想しています。その4,000万人がすべて新規会員であれば素晴らしいことですが、実際には多くが、ネットフリックスの拡大するコンテンツに安くアクセスしようとする、既存ユーザーによるプラン変更であることは否めないでしょう。

消費者の動向は、引き続きストリーミングメディア銘柄に有利に推移しています。オンラインプラットフォームは従来のテレビからシェアを奪っており、オンデマンドで視聴できる番組や映画の幅は広く、エンターテインメントに貪欲な視聴者を魅了し続けると思われます。当然ながら、景気が落ち込んでコネクテッドTVの広告市場が冷え込めば、ネットフリックスが享受している恩恵も反転する可能性があります。しかし人々が節約のために家で過ごす時間が長くなれば、オンラインメディアは一般の広告市場と比べてよく持ちこたえるはずです。ネットフリックスは今回の新たなアプローチに賭けており、ウォール街は今のところ、それを好感しています。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。JPモルガン・チェースは、モトリーフールのグループ会社アセントの広告パートナーです。元記事の筆者Rick Munarrizはネットフリックスの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はネットフリックスの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。