◆最近、エリザベス女王をはじめ偉大な人物の訃報に接することが多い。1週間前には映画監督のジャン・リュック・ゴダール氏が亡くなった。先月末にはゴルバチョフ元大統領、その少し前には京セラ創業者の稲盛和夫氏が亡くなっている。他にも著名な経営者、俳優、音楽家、デザイナー、アーティストなど一時代を築いた人たちが次々と世を去った。彼ら彼女らのご冥福を謹んでお祈りいたします。
◆「謹んでお祈り」と言った傍から不謹慎かもしれないが、しかし、そこに希望がある。世代は確実に替わるということだ。若い人たちに代替わりすれば、世の中の大抵のことは今よりずっと良くなるだろう。なぜなら若い人たちは素晴らしく優秀だからである。それを証明しているのがスポーツの世界だ。女子ゴルフを筆頭に、野球でもサッカーでも他の競技でも若いアスリートの活躍が目立つ。スポーツの世界では肉体的な制約から上の世代が引退を余儀なくされる。上がいないフィールドで若い力が思う存分発揮されているように見える。
◆ところが政治やビジネスの世界ではその逆だ。「老害」とも言える状況が、以前よりは減ったとは言え、いまだに蔓延っている。これが変わらない限り、日本社会の閉塞感は根本的な打破が難しい。一朝一夕に変わるのは無理だ。だが、(不謹慎だけど)人は死ぬ生き物である以上、いつかは必ず代替わりするのだ。だから将来に希望はある。
◆先日の日経ヴェリタス巻頭特集は「パーパス経営」。見出しに「パーパスづくり大流行」とあった。新たにパーパスを制定する企業が増えている、という記事だ。パーパスとは企業の存在意義だ。それを「新たに制定する」とはどういうことだろう。中にはスローガンを書き換えただけでは?と思えるような企業の例もある。
◆それに対して、今の若い人は本気で世の中を良くしたいと思って起業する人が多い。つまり初めから明確なパーパスがあってビジネスを立ち上げる。筋が通っているから、応援しようという気になる。その仕組みが資本市場である。岸田政権が「スタートアップ政策」を柱に据えるのはまさに的を射ている。
◆日本の開業率は5.1%(20年度)と海外に比べて低い水準だが、それでも前年から少し上向いた。コロナ禍にあっても起業が増えている。いや、コロナ禍だから、というべきか。コロナ廃業によるテナント撤退で空き物件が増えたり、自宅待機やリモートワークで時間に余裕が生まれたり、資金繰り支援策が充実するなど起業しやすい環境となったことが背景か。小さくても確実に起きている日本の新陳代謝に目を凝らしていきたい。