モトリーフール米国本社、2022年8月21日 投稿記事より

主なポイント

・アルファベットが、YouTube上で動画ストリーミング・マーケットプレイスという新サービスを立ち上げ
・最新の四半期決算によれば、YouTubeの売上高に恩恵が見込まれる
・新サービスにより、アルファベットはストリーミング業界における強力なプレーヤーとなる可能性がある

YouTubeの新サービスは、アルファベットのストリーミング市場への参入を意味する

動画ストリーミング銘柄と聞いて、普通はアルファベットが真っ先に思い浮かぶことはないでしょう。しかし、YouTubeの新サービスがそれを変えるかもしれません。アルファベットの参入によって、ストリーミング業界はますます過熱化が進むことになるのでしょうか。

アルファベットがストリーミング市場に参入

YouTubeは、動画ストリーミングサービスのチャンネルストアの立ち上げを計画しており、このプラットフォームへの参加をめぐって複数のエンターテインメント企業と協議していると報じられました。ストリーミング・マーケットプレイスでは、アマゾン、アップル、ロクなどが提供している既存のハブと同様に、消費者はYouTube アプリから直接、さまざまなサービスに加入できるようになります。

この新しいマーケットプレイスは1年半前から準備が進められ、2022年秋にもサービスが開始される予定です。アルファベットは現在、複数のストリーミングプラットフォームに対し、YouTube の新サービスは利用料を支払ってでも参加する価値があると説得しているところです。この主張は根拠がないわけではありません。26億人という魅力的なユーザー数に加え、YouTube は、ストリーミング各社が新たなコンテンツの予告編を流す際に、最も利用している動画プラットフォームなのです。

アルファベットにとってのメリットについては、同社の2022年第2四半期決算を考えると、ストリーミングを新たな収益源にするというのは決して悪いアイデアではないと思われます。7月26日に発表された第2四半期利益は予想を下回り、多くの部門で少しずつ予想を下回ったことが原因でした。1株当たりの利益(EPS)は1.28ドルの予想に対して1.21ドル、売上高は699億ドルの予想に対して696億9,000万ドルでした。

同様に、YouTube の広告売上は75億2,000万ドルの予想に対して73億4,000万ドル、グーグル・クラウドの売上高も64億1,000万ドルの予想に対して62億8,000万ドルと、わずかに届きませんでした。全社では、2022年第2四半期の増収率は13%となり、前年同期の62%から大幅に低下しました。

売上高の伸びが最も大幅に鈍化したのがYouTube で、前年同期の84%という驚異的な成長率から、2022年第2四半期はわずか5%の伸びにとどまりました。YouTube の低成長を考えると、市場規模が808億3,000万ドルに上るストリーミング業界から少しでも分け前を獲得する新サービスは、悪くないアイデアです。

ネットフリックスとウォルト・ディズニーにとって懸念要素なのか

業界最大手であるネットフリックス(NFLX)とウォルト・ディズニー(DIS)は、YouTube の新サービスによる恩恵が最も小さいと思われます。両社はストリーミングの加入者数で世界第1位と第2位を占めており、1位のウォルト・ディズニーは、ディズニープラス、Hulu、ESPN+を合計して2億2,100万人、ネットフリックスは2億2,070万人と僅差で2位につけています。ネットフリックスとウォルト・ディズニーの人気は既に絶大で、YouTube のチャンネルストアに参加しても、小規模サービスと比べて大した恩恵は見込まれません。

ストリーミング市場から分け前を得ようというYouTubeの試みにより、アルファベットがネットフリックスやウォルト・ディズニーと直接競合することはないでしょうが、小規模プラットフォームを後押しし、大手2社から加入者を奪う可能性があります。コムキャストのピーコック、パラマウント+、AMCネットワーク傘下の数々のストリーミングサービスといった小規模プレーヤーは、1億2,200万人を上回るデイリーユーザーを魅了するサービスに参加することで、大きな恩恵を受けるはずです。

ネットフリックスとウォルト・ディズニーは、アルファベットが彼らの成功から利益を得ることで競争が激化し、ストリーミング市場における圧倒的支配力が弱まる可能性があります。

今後の展開

アルファベットの株価は、2022年第2四半期決算の内容が理想的でなかったことを受けて、7月21日から26日の間に8%下落しましたが、その後に大幅に回復しています。8月15日現在、株価は7月26日以降で16.2%上昇し、5月以来の高値となっています。とはいえ、1月からは約17%下落しており、上昇がまだ終わっていないことを示唆していると思われます。ストリーミング・マーケットプレイスという新サービスは、売上高を押し上げ、YouTubeが2021年に享受した成長を取り戻してくれる可能性があります。投資家にとっては、新サービスが開始される前にアルファベット株を割安で買える機会かもしれません。

ネットフリックスとウォルト・ディズニーに関しては、YouTube の新サービスから直ちに影響を受けることはないでしょう。真の問題は、どのプレーヤーがYouTubeのマーケットプレイスに参加するかであり、それによってはネットフリックスとウォルト・ディズニーにとって競争がより激化する可能性があります。また、YouTubeのチャンネルストアに参加するストリーミングサービスは、業績が上向いて株価が上昇する可能性があるため、投資する価値があるかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾンの子会社であるホールフーズ・マーケットのCEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Dani Cookは、記載されているどの銘柄にもポジションを保有していません。モトリーフール米国本社はアルファベット(クラスA)、アルファベット(クラスC)、アマゾン、アップル、ネットフリックス、ロク、ウォルト・ディズニーの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールはコムキャストの株式を推奨し、以下のオプションを推奨しています。ウォルト・ディズニーの2024年1月満期の145ドルコールのロング、アップルの2023年3月満期の120ドルコールのロング、ウォルト・ディズニーの2024年1月満期の155ドルコールのショート、アップルの2023年3月満期の130ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。