FOMC後のパウエル議長の会見を受け、今後の利上げペースの鈍化を見込んだ米国株相場は大きく反発した。ナスダック総合株価指数の7月の上昇率は12%に達した。月間上昇率としては20年4月以来の大きさとなった。

本来、こうした外部環境は日本株市場にとっても追い風となるが、先週、日本株の上値は重く、日経平均は週間で0.4%安、TOPIXは0.8%安と4週ぶりに反落した。その背景としては、①為替が急速に円高に巻き戻ったこと、②主力銘柄の一部の決算が冴えなかったこと、そして③日本のコロナ感染者数が世界最多となるほど第7波の感染が拡大していることなどが考えられる。

①円高については、これまで円安を主導してきた最大の要因である日米の金融政策のうち、米国の利上げが加速から減速見通しへと正反対へ動いたのであるから当然の流れであろう。利上げペース減速見通しを台頭させた要因である米国景気の悪化傾向が一段と明確になると長期金利の低下を通じて一段の円高もあり得るので警戒が必要だ。その意味では今週は月初週で重要な景気指標が多く発表されるので要注目だ。7月ISM製造業景況指数(1日)、6月JOLT求人(2日)、7月ISM非製造業景況指数、6月製造業受注(3日)、7月雇用統計(5日)などが予定されている。
 
②企業決算については、主力銘柄の一部の決算が冴えなかったのは事実だが、ここまでのところ全体で見ると決算はそれほど悪くない。営業利益は1桁後半の伸びで市場予想を下回った決算より上回った方が多い。今週も主力どころの決算が集中する。発表社数は5日にピークを迎える。1日にはアステラス(4503)、塩野義(4507)、TDK(6762)、ANA(9202)、2日にはダイキン(6367)、三井物産(8031)、三菱商事(8058)、三菱UFJ(8306)、3日には三菱ケミカル(4188)、花王(4452)、任天堂(7974)、野村(8604)、日本郵船(9101)、4日には日清食品(2897)、日本製鉄(5401)、トヨタ(7203)、HOYA(7741)、5日にはレーザーテック(6920)、三菱重工(7011)、伊藤忠(8001)、NTTデータ(9613)などが発表予定。
 
③コロナ感染については過去最多を更新する勢いで感染が拡大しているにもかかわらず、政府は規制をする意向がなく、むしろ感染症分類の変更(インフルエンザと同等の扱い)が検討されている。こういう状況では景気鈍化への懸念は限られるだろう。

その他では週半ば以降に予定されているOPECプラス会合が重要イベント。バイデン大統領のサウジ訪問はいまのところ目立った成果が出ていないという受け止め方がされている。OPECプラスがまったくの「ゼロ解答」であれば、その見方が正当化されるが、さすがにそれはないだろう。サウジにしても、バイデン政権の面子をたてるくらいのことはすると思われる。

こうした環境の中、決算の集中週で機関投資家はまずは決算を見てから、というスタンスだろう。夏休みに入る投資家も多く、市場は閑散となるだろう。今週の相場は一進一退か。

短期的なテクニカル面の話だが、日経平均は7連騰で2万8000円に迫った後、伸び悩んでいる。特に先週後半の2営業日は2万8000円に上ヒゲをタッチさせての陰線を2つ並べた。チャートの形はよろしくない。今週は一進一退ながらも、最終的に2万8000円台を終値で固める週となれば、今後に期待がもてる8月相場のスタートとなるだろう。