みなさん、こんにちは。日経平均はボックス圏の相場が続いています。上値を抜けていくには先行不透明感が強く、かといって大きく下値を割り込むほど国内景気はまだ悪くもない、という状況なのでしょう。方向感が見えてこない中、やや仕掛け難い展開にあると言えます。

さらに現在は参院選(参議院議員通常選挙)もあり、政治的には大きな動きが止まっている状況です。しかしその分、今後はきっかけ1つで相場は一方向に大きく動きやすくなる可能性が増しているとも思われます。私は当面の材料が出尽くす参院選後に特に注目しています。

終盤戦を迎えた参院選

そこで、今回はその「参院選とその後」を採り上げてみましょう。皆さんご存知の通り、今週末7月10日は参院選の投開票日です。現在は多くの候補者が熱い選挙運動の終盤戦を展開しているところになります。

これまでこのような国政選挙は、株式市場において経験的に「買い」とされてきました。選挙を通じて各候補者や政党はより豊かな生活の実現に向けた政策を提言し、選挙によって最新の民意に裏打ちされた政治体制にアップデートされるということは、投資という視点からも望ましいためです。

参院選は政権選択選挙ではありませんが、二院制の我が国では参院選の結果次第ではその後の政権運営を大きく左右することになります。今回の参院選においてもまた、この構造に変化はないと考えます。

「選挙は買い」という経験則が成立しない背景とは

しかし、参院選公示以降、株式市場は一進一退という状況にあり、これまでのところ決して「選挙は買い」という経験則が成立しているようには思えません。これは、現時点においてはという条件付きですが、今回の参院選では大きな争点が見当たらないということがその理由と考えています。

確かに安全保障や諸物価の高騰は当面の大きな課題ではあるのですが、一国の政治のみで対応できることには限界のある内容であり、まして政治体制の大幅変更がない中ではあまり議論も盛り上がらないというのが現実的なところでしょう。

大きな争点がないことから政治体制のアップデートも限定的となり、しいては「選挙は買い」という経験則の効用もやはり限定的になっていると考えます。今後、新たな争点が俄かに浮上する可能性はもちろんありますが、如何せん時間はあまりありません。今回は結果的に経験則が当て嵌まらない選挙となる可能性は徐々に高まっていると受け止めています。

より注目すべきは、参院選の後

すると、むしろ注目すべきは参院選後、ということになります。このまま世論調査に沿ったサプライズのない選挙結果になれば、現政権は「信任を得た」ということとなり、今後最長3年は国政選挙に臨むに必要がないという中、岸田首相は思い切った政策を打ち出すことも可能になります。

実際はもっと早いタイミングで衆院解散も十分あり得ると思いますが、それも思い切った政治判断ができる、ということに他なりません。これまではあまり積極的に動いてきた印象が希薄な政権だけに、岸田首相が長期的に目指そうとする方向性の実現に向けてギアを上げてくるのでは、と期待したいところです。

ちなみに、先日のコラムでも解説した「骨太方針2022」では緊縮財政スタンスを後退させた一方、「新しい資本主義」実現への具体策には触れていませんでした。これはこの参院選を睨んでのことであったというのが一般的な見立てです。仮にそうであれば、いよいよ「新しい資本主義」の具体像が見えてくるということなのかもしれません。

岸田首相が示す参院選後の政治の方向性とは

焦点は、その方向性です。実は岸田首相の示す方向性は首相就任時と現在とでかなり違ってきています。例えば、かつては「成長よりも分配重視」のスタンスを前面に押し出していましたが、現在はそのトーンを抑え、むしろ「分配よりも成長重視」といったスタンスの発言が増えています。前述の通り、金融所得課税の引上げといった緊縮財政スタンスも後退しました。

これが参院選を控えて自身の意見の主張を控えたのか、本当に首相自身の考えが変化したのか、ということです。

前者であれば、おそらくは株式市場には不人気な政策が今後相次ぐこととなるでしょうし、後者であれば、親資本市場的なアクションが今後は増えてくることになるでしょう。その方向性が見えてくるまでは、株式市場は参院選後の首相のコメントにやや過敏に反応するのではないか、と私は予想しています。

日本の金融政策に変化を促す為替動向

この方向性を占う上で攪乱要因があるとすれば、地政学要因を除けば、それは為替になるでしょう。既に24年ぶりとなる円安水準を記録しており、為替動向は明らかに日本の金融政策変更への催促相場の様相を呈しています。

場合によっては金融政策が「新しい資本主義」構想実現への制約条件となる可能性があると考えます。これらは複雑な連立方程式となるのですが、是非、仮説を自身で想定しながら臨んでみたいところです。このような経験はその後の読み筋を一層研ぎ澄ますことに繋がるはずです。