日経平均は狭い範囲のボックス圏相場が続いています。第3四半期決算には概してサプライズがなく、注目されていた日米首脳会談も無事乗り越えられたということで、相場としては凪という状況にあると言えるでしょう。これまで表現してきた「方向感のない一種の閑散相場」と言い換えてもよいかもしれません。
ただし、ここにきてロシアのウクライナ侵攻に変化の兆しが出てきました。停戦となるかどうかはまだまだ予断を許しませんが、ガザの停戦交渉と併せ、一気に世界情勢が動き始めた感があります。
当然、日本にもその影響は波及することでしょう。嵐の前の静けさから一気にモノゴトが動き始め、株式相場も波乱の展開シナリオの発生タイミングが近づいているのではと考えています。
改めて「データセンターとは?」
さて、今回は「データセンター」をテーマに採り上げてみたいと思います。このテーマはもっと前に採り上げたかったのですが、他のテーマを優先した結果、少しタイミングを逸してしまいました。テーマをどういう順番で採り上げるかというのはなかなか難しいものです。今回はタイミングの問題はあるものの、このコラムの原点通り、「テーマの再訪」「テーマの本質」に焦点を当てて考えてみたいと思います。
このテーマを掘り下げるにあたり、まずは少しデータセンターについておさらいをしておきましょう。今や言わずもがなですが、データセンターとはコンピュータやネットワーク機能のカギを握るサーバなどが設置された施設を指します。
インターネットの発展により、高容量・高機能のサーバの重要性が急速に増し、それに伴って強力なホストマシンに集中処理をさせる動きが広がりました。それまでは企業や個人が独自のサーバを設置するケースも多かったのですが、管理上の脆弱性は否めず、テクノロジーの進化や需要の変化への迅速な対応が求められる中、強力なホストマシンを擁するデータセンターに一括管理を委託する流れができ上がったのです。
クラウドの浸透、生成AIの導入で、さらに必要性が高まる
クラウドの浸透はその流れに拍車をかけることになります。現在はAmazon(アマゾン・ドットコム[AMZN])やGoogle(アルファベット[GOOGL])、Meta(メタ・プラットフォームズ[META])などの巨大米国企業を筆頭に、主としてサービス提供者が世界中でデータセンターを抱えるという構図ができあがっています。
近年はそこへ生成AIが新たに導入され始めました。生成AIの利用により、通信データ量は飛躍的に増加することになり、同時にコンピュータの処理能力・処理速度もまたより高い水準が求められるようになっています。既設のデータセンターだけでは安定的な対応余力がどんどん縮小するため、サービス提供者はこぞって更なるデータセンターの建設・構築が迫られる状況となりました。
通信量がまだまだ増加するフェーズ、情報処理速度の超高速化が必要とされる状況、そして当面はそれら傾向にピークアウトの兆しすらないという見通しにおいては、より高機能なデータセンターの需要は増え続けるのではという予測が一般的なのではないかと想像します。
ITバブル期以来の大相場
そうした期待を体現したと言えるのが、2024年のフジクラ(5803)の株価でした。フジクラの株価は2024年の1年で6倍もの急騰となり、この年の東証プライム市場におけるベストパフォーマンスを記録したのです。同社は東証プライムの時価総額ランキングでも現在トップ100にまでその存在感を高めることとなりました。
電線大手で光ファイバーの製造や光通信機器に強みを持つ同社は、データセンター向けへの注力を鮮明とし、それが株式市場にも(当然、業績的にも実績を残したことで)高く評価されたということなのでしょう。
フジクラ以外にも、データセンター関連と目された企業の株価は概して好パフォーマンスを記録するに至っています。データセンターの需要が構造的に拡大するというシナリオをベースに、息の長いテーマと位置付けることができるのかもしれません。電線大手では2000年前後のITバブル期に光ファイバー関連銘柄がやはり急騰しましたが、その時以来の大相場となりました。
株価急騰時はPERをチェック
では、今後はどうでしょうか。生成AIの浸透観測を考えれば、データセンター関連銘柄への期待はまだしばらく継続するように思いたいところです。
ただし、株式市場は時に行き過ぎることもまた事実です。前述のITバブル期も、ITの浸透という構造的成長シナリオは正しかったものの、バブル的な株価形成があったために、その後はしばらく調整を余儀なくされました。株価急騰があれば(如何に成長シナリオが継続していても)、当然どこかで調整が入るということは肝に銘じておくべきす。
換言すれば、株価がどこまで期待を織り込んでいるのかのチェックは欠かせません。特にPERの水準はしっかり確認しておくべきでしょう。かなり高い水準となっていれば、それは業績見通しを期待が大きく上回っているという状況に他ならないわけですから。
成長シナリオに変化がないとすれば、PERが膨らんだところで着実に利益を確定し、調整が入ったところで買い戻すという投資スタイルが有効なのではないかと考えます。
データセンター関連銘柄をピックアップ
具体的な銘柄群としては、フジクラに代表される電線株は引続き注目の筆頭と言えるでしょう。光ファイバーにとどまらず、回線関連機器も手掛ける古河電気工業(5801)、住友電気工業(5802)などです。
また、光ファイバーのプリフォームを生産する信越化学工業(4063)、光回線機器関連ではアンリツ(6754)、santec Holdings(6777)、精工技研(6834)などが挙げられます。
データセンターで使用される半導体という観点では、キオクシアホールディングス(285A)、ルネサスエレクトロニクス(6723)、ソニーグループ(6758)などの名前が挙げられるでしょう。