日経平均はじり安の展開となっています。前回のコラムで予想した通り、株式市場は調整局面入りしたものと受け止めています。ロシア・ウクライナ情勢もまだまだ駆け引きが続いており、米国の関税政策の衝撃や(案の定表面化してきた)国内政治情勢の混迷など、株価の牽引材料に欠ける状況が鮮明になってきたというところでしょう。
これまでの日経平均は狭い範囲のボックス圏相場でしたが、おそらくこのレンジが1000円程下がったように感じています。とはいえ、モノゴトが動き始めたという印象も強いものがあります。引続き、株式相場も波乱の展開へと移行するタイミングは着実に近づいているのではと考えています。
2005年「愛・地球博」以来の大規模な登録博
さて、今回は「大阪万博」をテーマに採り上げてみたいと思います。ついに大阪万博の開幕まで1ヶ月を切ってきました(4月13日開幕)。その後、10月13日までの半年間にわたって大阪市の人口島、夢洲にて開催されることになります。パビリオンの建設遅延などが懸念されましたが、無事、予定通りの開催にこぎ着けると見通しとなっています。国内外からの集客効果により、大阪、ひいては国内の景気活性化への寄与を期待したいところです。
5年超の間隔でより大規模な登録博(旧:一般博)という位置づけの万博が日本で開催されるのは2005年の愛・地球博(愛知)以来となります。その他の沖縄海洋博、つくば科学万博、花博は期間や規模に制限のある特別博(現:認定博)でした。特に2021年の東京五輪から今回の大阪万博へという流れは、高度成長期(1964~1970年)の五輪~万博の流れをなぞるものであり、誘致当時はデフレに苦しむ日本経済の再興起爆剤にしたいとの想いが強いものでした。
その後、経済は回復軌道をたどっていったのはご存知の通りです。日経平均は史上最高値を更新し、現在はむしろインフレが懸念される状況となりました。万博がこの回復軌道をより確かなものとし、新たなステージへの移行を促すものになればと願っています。
開催期間中の経済効果=入場者数をどこまで積み上げることができるか
ここでは万博に関して2つの切り口から経済効果を考えてみたいと思います。まずは巷間で認識される経済効果です。簡単に言ってしまうと「動くお金の総額」ということになります。当然、経済はお金が動いてナンボですので、動くお金の規模が大きいほど経済インパクトが大きいということになります。
これに関しては、2024年3月に経済産業省が2025年大阪万博の経済効果を2.9兆円と試算していることを考えれば、十分そのインパクトは大きいと言えるでしょう。内訳は、建設費用が約8500億円、運営・イベントで6800億円、来場者消費額が1.37兆円というもの。建設費用は開催前に終了することを考えると、およそ2兆円が開催期間中の経済インパクトということになります。
経産省は入場者前提を2820万人と置いていますから、最終的な経済効果はこの入場者をどこまで積み上げることができるかどうか次第となります。ただし、すぐ隣のUSJの年間来場者数が1600万人(2023年)、愛・地球博入場者数が2200万人であったことを考えれば、そのハードルは決して低いものではないと言えるでしょう。
なお、来場者消費の主なものは交通費、食事、土産などが挙げられますが、着実にメリットが期待できるのは交通関連の消費でしょう。万博会場への交通アクセスは、JR最寄り駅からのシャトルバスや大阪メトロの利用が主となります。
「見本市」としての意義=最新技術や日本発のソフトパワーに期待
もう一つの切り口は万博の「見本市」としての側面になります。万博では最先端の技術が出展されます。来場者を感嘆させるだけにとどまらず、それを見た第三者がビジネスとして発展活用・展開を思いつく機会を提供することでもあります。
以前にこのコラムでも紹介した「空飛ぶクルマ」の実演などはその典型例でしょう。実演によって実操作のノウハウが蓄積されるうえ、それを見た国内外を問わない第三者が「空飛ぶクルマ」の積極導入や採用を決めれば、一気にビジネスが拡大することになります。
そうした最新テクノロジーだけではありません。2025年大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」であり、そこでは世界有数の長寿国家である日本の生活様式や自然との共生などが世界に訴求されることになるはずです。これらは日本発のソフトパワーとしてビジネスチャンスが眠っていると考えることもできるでしょう。
同様のアプローチは2013年に「クールジャパン機構」が官民ファンドという形で手掛けていますが、大阪万博では「クール」に留まらず、しかもファンドというよりもよりダイレクトなビジネス機会を掘り起こすことになるのではと考えます。この「見本市」としての経済効果を算出することは非常に難しいのですが、うまくハマれば、かなりの効果が得られるのではないでしょうか。「どれだけお金が動いたか」という経済効果以上に、こちらの効果には期待したいところです。
大阪万博開催で注目される銘柄は?
では、株式投資という観点ではどうでしょうか。まず、直接的なメリットを受ける交通機関が注目できるでしょう。西日本旅客鉄道(JR西日本)(9021)は最寄り駅までの来場者輸送や接続するシャトルバスを運営する予定です。
見本市的アプローチでは、スポンサー企業群がその露出度から注目される機会は多いと考えます。上場している万博のスポンサー企業としては、大和ハウス工業(1925)、日本電気(NEC)(6701)、三井住友フィナンシャルグループ(8316)、SBIホールディングス(8473)、りそなホールディングス(8308)、長谷工コーポレーション(1808)、大林組(1802)、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(2579)、ジャパンマテリアル(6055)、ダイセル(4202)、大日本印刷(7912)、日本電信電話(NTT)(9432)、村田製作所(6981)、ウシオ電機(6925)、クボタ(6326)、KDDI(9433)、ダイキン工業(6367)、日立製作所(6501)、アサヒグループホールディングス(2502)などがプラチナ/ゴールドパートナーとして参画しています。
これらの企業は未来社会ショーケースといったテーマで参画しており、まさに見本市的なアプローチと言えるのではないでしょうか。