モトリーフール米国本社、2022年4月24日投稿記事より

主なポイント

・会員数の減少を受け、アカウント共有の収益化を拡大
・顧客当たり売上高を増加させてきた実績
・動画配信市場の規模から、経営陣は2桁の売上成長を見込む

株価収益率(PER)は過去10年以上見ない低水準に

動画配信サービス大手ネットフリックス(NFLX)が第1四半期の会員数を発表したことを受けて、株価は37%超下落しています。企業側は、有料会員数が3ヶ月間に20万人減少した要因について、ロシアでのサービス停止や競争の激化などを挙げています。

同社にとって2022年は厳しい年になりそうですが、一連の悪材料は、優れた企業の株式を割安で手に入れる好機を投資家にもたらしています。経営陣は、成長を再び加速させられると自信を持っていますし、市場をリードする視聴者数を考えれば、ネットフリックスにはそれだけの力が十分にあるはずです。

経営陣の努力が結実すれば、足元の株価は千載一遇の買い場かもしれません。しかも、ネットフリックスの成長ストーリーがまだ終わっていないことを示す重要なトレンドもあります。

ネットフリックスの収益力は実証済み

経営陣は、成長が鈍化した主な要因の1つとして、1億以上の世帯がアカウントを共有していることを挙げました。これは、世界全体の有料会員数の約半分に相当します。同社はこれまで、アカウントの共有はブランド認知度の向上に寄与し、より多くの人に同社のコンテンツを見てもらえるとして、見て見ぬふりをしてきました。同社がまだ小規模で、エンターテインメント業界で頭角を現そうとしていた頃は、このような戦略も容認されていましたが、今ではアカウントの共有は成長における大きな障害であり、是正すべき課題となっています。

多くの人がアカウントを共有していることについて、ネットフリックスは短期的・長期的に売上高を伸ばす機会と捉えています。同社は3月に、有料のアカウント共有機能を一部の国で新たに導入し、既存会員が同居していない人のアカウントを追加できるようにしました。

競争が激化する動画配信市場において、これはリスクの高い戦略とも言えます。より多くの人に料金を支払わせることで、短期的には会員数の増加が一段と抑制される可能性があります。しかし、ネットフリックスは以前から、料金の値上げをしながら視聴者を獲得・維持してきた実績があります。

注目すべきトレンドとして、ネットフリックスは長年にわたり、有料会員数を上回るペースで売上高を伸ばしてきました。2016年から2021年にかけて、売上高は会員数の2倍近いペースで成長しています。同期間の有料会員数の累計伸び率が149%だったのに対し、売上高伸び率は236%でした。背景には会員1人当たり平均売上高の着実な増加があり、値上げだけでなく、ユーザーがより高い契約プランにアップグレードしていることも寄与しています。

ネットフリックスは、値上げを正当化するにはより多くの価値を提供する必要があると認識しており、経営陣はコンテンツ開発の強化や、ユーザーインターフェースの機能追加を計画しています。経営陣は以前から準備を進めていたとみられ、同社は2021年に、モバイルゲーム分野への参入を発表したほか、子供向けコンテンツの拡充を図るためにロアルド・ダール・ストーリーを買収しました。

同社は第1四半期決算と同時に公開した株主への手紙の中で、「当社の目標は、2桁の売上成長を維持すること、(利益率の拡大により)営業利益をこれまで以上のペースで増加させること、そしてこれまでより多くのフリーキャッシュフローを生み出すことである」と述べました。

経営陣はさらに、ネットフリックスは2億人を超える有料会員を抱える大きなビジネスに成長したとはいえ、世界のブロードバンド世帯の半分以上がネットフリックスの会員ではない点を指摘しました。

実際、業界団体のモーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)によると、動画配信市場は2021年に14%成長して、世界全体の登録者数は13億人に達しました。ところが、ネットフリックスが四半期ごとに発表する会員数の前年同期比伸び率を見ると、2021年は一貫して14%に届いておらず、市場シェアを落としたことになります。しかしこれは同時に、業界をリードする企業がさらに拡大し、再び成長を加速させる機会でもあります。

ネットフリックス株は買いか?

目先の成長見通しが弱いことから、2022年に株価が急上昇する公算は小さいでしょう。しかし、企業の本質的価値は、その企業が将来生み出すすべての利益の現在価値に基づいています。株価収益率(PER)は19.7倍の水準にあり、長期的な事業価値と株価の間には依然として大きな開きがあると思われます。とはいえ、これは、経営陣が長期的に事業を成長させ続けると投資家が確信できるかどうかにかかっています。

創業者で共同最高経営責任者(CEO)のリード・ヘイスティングス氏は、DVDの宅配レンタルサービスという地味な事業から始まったネットフリックスを、オリジナルコンテンツを制作する業界最大級のエンターテインメント企業へと見事に率いてきました。これは、偉大な先見性を表す驚異の物語です。ヘイスティングス氏が、ネットフリックスの成長を再び加速させることができると語るなら、投資家として耳を傾けないわけにはいきません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者John Ballardは、ネットフリックスの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はネットフリックス株を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。