マネックス証券が2021年10月より掲げている新たなブランドビジョン「大切なものに投資をしよう」には、投資の価値を儲けや利益だけではなく、それぞれの未来や夢を実現させるものへと進化させていきたいという思いが込められています。そこで、このビジョンが生まれた背景をより多くの方に理解していただくために、投資を通じて「大切なもの」の実現に向けた未来づくりをサポートするマネックス・アナリスト陣にインタビューを実施しました。

アナリスト陣が考える、「大切なもの」とはどのようなものでしょうか?第5回目はチーフ・外国株コンサルタントの岡元兵八郎のインタビューをお届けします。

ラジオと留学で開けた海外への扉

――米国株のエキスパートである岡元さんですが、海外に興味を持ったきっかけを教えてください。

岡元:生まれ育った場所は、宮崎県です。青春時代に新しい刺激に触れる機会が少なかったこともあり、世界中の英語放送を聴ける短波ラジオに夢中になりました。しかし、その頃は全然英語はできず、中学の成績ではビリから2番目(笑)。でも、短波ラジオから流れる海外の英語放送で言われていることを理解したかったのです。それで、テープレコーダーで録音したニュース番組を何度も聞いて、辞書を引きながら訳し始めました。翌日、英語の先生に合っているか聞くと、先生にも難しいようで、一緒に頭を悩ませてくれました。

そんな努力をしているうちに英語がわかるようになってきて、16歳の時には、交換留学制度で1年間カナダに行きました。さらにもう1年、米国のメンフィスで過ごし、そのまま現地の高校を卒業しました。当時は日本に電話すると3分間で4,000円ぐらいかかる時代でした。もちろんインターネットもありません。日本との接点はほとんどなく、どっぷり米国の生活に浸かったことで一気に視野が広がりました。

金融の面白さに芽生えて

――高校卒業後は現地の大学に進学したのですか?

岡元:いえ。米国に残る選択肢もありましたが、日本人としてのアイデンティティを確立するために、帰国して上智大学に進学しました。アルバイト先は、米国3大ネットワークの1つ、NBC放送の報道局でした。お茶くみからコピー取り、米国人の特派員の通訳から日本語ニュースの翻訳まで何でもこなしました。

特に衝撃的な体験だったのが、米国に亡命していたフィリピンのアキノ元大統領の夫が、フィリピンに戻った際に空港で暗殺された事件でした。取材に業務用無線トランシーバーが必要だったのですが、当時のマルコス政権の手に渡ればクーデターに使われる可能性がある、とんでもないものです。でも、誰かがそれを持っていかなければならない。そこで白羽の矢が立ったのが僕でした。「パスポートは持っている?持っているなら、明日マニラに飛んでちょうだい」と。

突然のことで考える時間がなかったのですが、現地に着いたらやっぱり怖くなってしまいましたね…。観光客が訪れない時期に、日本人の若者が大きな箱を持っているということで怪しまれ、箱を開けた瞬間、「いくら払うのか?」と聞かれたわけです。そこで、持っていた200ドルを渡すと、“Now, you can go”と言われました。一歩間違えれば捕まってもおかしくない経験でしたが、この出来事があって以来、大抵のことでは驚かなくなりました。

――米国の放送局でアルバイトをされていた岡元さんですが、その後どのような経緯で金融業界に興味を持ったのですか?

岡元:大学時代の後半は日本の投資信託の運用会社で翻訳のアルバイトをしました。それがきっかけで金融・投資への興味が芽生えました。情報を得て放送するのがテレビ局であれば、情報を活用してお金を動かすことができるのが金融です。その2つは情報ビジネスという点では同じですが、お金が絡む金融のほうが面白そうだと思って就職試験を受けたのが、外資系投資銀行のソロモン・ブラザーズでした。一時的に損をしてもくよくよしない性格だと思うのでトレーダーに向いていると面接官に伝えたところ、「お前は営業向きだ!」と言われ、26年間、機関投資家向けの営業を担当しました。

1ヶ所の外資系企業に長年勤務する人は珍しいのですが、米国からだんだんとアジア、ヨーロッパ、ラテン、アフリカ、中東地域へと担当するマーケットの領域を拡大させて、自分の責任で面白いことをさせてもらえたおかげで、26年も続いたのだと思います。

お客様から届く声は自分にとってのビタミン

――現在の仕事に対する想いを聞かせてください。

岡元:僕の仕事は、お客様に米国株への理解を深めていただき、長期的な資産形成のための投資をしていただく啓蒙活動です。かっこよく言えば、毎日がチャレンジです。

外国株を見てきてかれこれ30年ほど経ちましたが、同じマーケットというのは一度もありません。似た瞬間があっても、次の瞬間にはガラッと展開が変わってしまいます。毎日違うからこそ、ものすごくチャレンジングな仕事です。

現職に就いて嬉しかったことは、お客様から生のフィードバックが聞けることです。お客様から様々なお声をいただくたびに「より良い情報をお届けしなければ」という意欲が増していきます。

セミナーではアンケートを取り、必ずプリントアウトして家でじっくり読みます。個人投資家の方々のフィードバックは本当に明解です。お客様の声は僕にとって元気を頂けるビタミンのようなものです。

お金は人を幸せにするもの。しかし、手段であって最終目的ではない

――長年培った金融業界でのキャリアを通して、ご自身の中で昔と比べて変わったと思う点はありますか?

岡元:プロを相手にしていた外資投資銀行時代を振り返ると、残念ながら、若さゆえに自己中心的な考えが強かったと思います。きれいごとのように聞こえるかもしれませんが、歳を重ねると、ニュースを見ていても心が痛むことが多く、自分だけの幸せではなく僕と接点のある方々の幸せを強く願うようになりました。

自分ができることとしては、子どもたち世代の教育のための寄付をすること、そして、多くの方に投資を通じて幸せになっていただくことでしょうか。僕と話をして楽しかったと思ってもらえるだけでも、とても嬉しいです。

――最後に、岡元さんにとって「お金」とは何でしょうか?

岡元:お金は、人を幸せにする大切なものです。でも、お金はあくまで手段であり、最終目的ではありません。投資というと、これまでの金融業界では、上がるもの、儲かるものだけが対象でしたから、“大切なものに投資をしよう”というメッセージはとても新鮮です。大切なもののために投資をすることで、知識が増えたり、情報の捉え方や考え方が変わったりと、より賢く、より洗練された自分になっていける。それもまた、今の時代らしい投資の考え方ではないでしょうか。