リビアン・オートモーティブ(Rivian)が3月10日、2021年本決算を発表。アマゾンが出資したことでも知られる電気自動車メーカーだ。
ほとんど売上がない中で上場し、時価総額は一時1,100億ドルを超えた。誰もが「流石に高すぎるのでは?」と訝ったが、どうやらその通りだったようだ。
株価は11月以来下がり続け、ピーク時から4分の1以下にまで下落。足元の時価総額は343億ドル。上場時に出資した株主にとっては、悲劇というほかのない推移である。
それでも、リビアン・オートモーティブが調達した巨額資金が消えて無くなるわけではない。今回の記事では、高い注目を集めた電気自動車メーカー、リビアン・オートモーティブの動向について紐解く。
リビアン・オートモーティブが展開する3つの車両モデル
リヴィアンは2021年、3つの車種「R1T」「R1S」「EDV」について、生産と納車をはじめた。
「R1T」は業界初となる電動ピックアップトラックだ。2022年のモータートレンドでは「今年のトラック」に選ばれるなど注目を集めた。
「R1S」は電動SUV、「EDV」は電動バンだ。EDVについてはアマゾンから10万台の初期発注を受けたというのが、企業価値を支える「頼みの綱」となっていた。
コンシューマー向け車種である「R1」シリーズも、米国とカナダで8.3万台の事前注文を受けている(3月8日時点)。
生産能力の方も増強を進めており、米国ノーマル、ジョージアの両工場では年間60万台のキャパシティ確立を見込む。従業員はすでに1.15万人。
電動ピックアップトラック「R1T」は最も安いタイプで67,500ドルから。ローンチ版は85,000ドルだが、予約がいっぱいだ。電動SUVの「R1S」も大きくは変わらず、一台当たり72,500ドルから90,000ドルという価格帯である。
事前注文が8.3万台であるから、仮に平均単価を8万ドルとすると受注残は66.4億ドル。コンシューマー向け製品だけでも一気に、これだけの収益が上がりうるというわけだ。
すでに50億円超の売上をあげたが...
リビアン・オートモーティブは、Amazonとの連携が強固であることを繰り返しアピールする。2021年末には、すでに完成車の納品もはじめた。
マイルストーンを進めるに従い、リビアン・オートモーティブはアマゾンとの提携を拡大していく予定であることも示している。うまくいけば、もっと沢山の電動バンを受注できるかもしれないわけだ。
リビアン・オートモーティブは2021年10〜12月に5,400万ドルの売上をあげた。実際に納車された車両は909台だ。
売上総利益は3.83億ドルのマイナス。現時点では生産ラインの稼働率が低いため、人件費を中心としたコストが重く、しばらくグロスマージンは赤字が続く見込み。
さらに巨大なのが営業費用である。2021年10〜12月には20.7億ドルを費やし、このうち5.5億ドルが非キャッシュの株式報酬費用だった。営業キャッシュフローは10.9億ドルのマイナスだった。
2022年の生産見込み台数は「2.5万台」
大きな悩みの種がサプライチェーンの逼迫だ。株主でもあるアマゾンとの連携を強め、2022年の2Qまでには量産化に進めるよう取り組む。
サプライチェーンによる制約がなければ、2022年に生産できる見込みの車両は「5万台以上」だという。足元で入手できるパーツや素材の状況から、2022年に生産できそうな台数は「2.5万台」であると宣言した。
これが実現できた場合でも、調整後EBITDAは47.5億ドルの赤字、資本支出として26億ドルを見込んでいる。2021年末時点での現金同等物は181億ドルあり、年内に潰れるという心配はなさそうに見える。
3月に入り、リビアン・オートモーティブはデュアルモーター型や標準バッテリーパックモデルの導入と、価格の改定を発表した。それまでR1シリーズの価格帯は6.75万ドルから8.3万ドルだった。改訂により、価格の上限は9.5万ドルに引き上げられる。
ピックアップトラックは10兆円市場
新興EVメーカーであるリビアン・オートモーティブには、超えなくてはならない壁が少なくとも2つある。
1つは「車両増産」の壁だ。自動車メーカーは、どんなに少なくとも何万台という車両をまず生産しなければ、グロスマージンをプラスにすることすら叶わない。企業として生き残れるかが問われるのはその後だ。
もう1つは、実際に消費者がプロダクト(車両)を手に入れた後、どのようなフィードバックが返ってくるかという点だ。少しレビューしただけでは、本当に十分な品質があるかは分からない。
リヴィアンの電気自動車メーカーとしての真価は今後問われることとなろうが、上記ハードルを越えれば非常に魅力的な市場があるのは確かだ。
フォーチュンビジネスインサイトによれば、北米におけるピックアップトラック市場は1,084億ドルの大きさがあり、今後も成長が期待される。世界では1,777億ドルの規模だ。
SUVを含む乗用車市場が低迷している間にも、米国におけるピックアップトラック販売は堅調だった。
要因として興味深いのは、Eコマース市場との関連性だ。ラストマイル配送でピックアップトラックが利用されるケースが増えているという。
魅力的な市場を掴むメーカーが果たしてリビアン・オートモーティブになるのかを判断するには、今はまだ不確定要素が多すぎる。過大な期待が萎む中、まずは2022年の供給逼迫下でどれだけの進捗を成し遂げられるかが注目されることとなろう。