欧州の財務不安は市場において何かの折には材料とされる問題です。根本解決するにはユーロの枠組みを考えると大変難しく、その火種はそう簡単に払しょくされるものではないでしょう。欧州連合としては、だましだましであってもデフォルトや仕組みの崩壊といった事態を防ぐ必要がありますし、なにより不安感先行による市場の暴走(暴落)を阻止したいというのも大きいでしょう。そこで、冒頭の「欧州版IMF」の創設ということですが、どういう仕組みなのか、そもそもIMFとは何なのかといった基本的な点について説明していきましょう。
「欧州版IMF」の正式名称は「欧州安定メカニズム
(ESM:European Stability Mechanism)」です。ギリシャ危機に際し、今年3年間の時限措置として構築された総額7,500億ユーロのユーロ防衛のための「欧州金融安定化基金」(EFSF:European Financial Stability Facility)の後継で、常設の制度として創設されます。臨時的措置では収まらず、常設が必要であることも前述した根深い問題の裏付けですね。
もともとの「欧州金融安定化基金」はEUとIMFによって創設され、当該国の支援要請に基づいてユーロ加盟国の政府保証付きの債券を発行し、厳しい制約条件の下で、調達した資金を融資する仕組みです。支援といってもあくまで金利をつけて「貸与」(融資)するのですから、財務不安を抱えた国が借金を返済しつつ財務を立て直しするのは大変なことですよね。「欧州安定メカニズム」も基本的にはこの仕組みを継承することになるようです。
ここで、IMF(国際通貨基金)について確認しておきましょう。IMFは1944年に創立が決定した国際機関で、187カ国が加盟しています(本部は米国ワシントンDC)。設立目的は加盟国の雇用と国民所得の増大、為替の安定などに寄与することです。加盟国の経常収支が悪化した場合にその国に融資する、為替相場安定のために為替相場と各国の為替政策の監視などを行うなど、各国の中央銀行の取りまとめ役のようでもあります。
IMF加盟国は187カ国もあり、その多くは新興国や後進国でもありますから、IMFが関与する国も多くなります。世界経済への影響が大きいとはいえ、EU支援だけに焦点を絞ることもできませんし、欧州連合には力のある国もいくつもありますので、IMFが行うことと同様のことを欧州に絞った枠組みを自分たちが中心になって組織する方が自由度が高く、迅速な対応もできますよね。IMFに加盟しながら、別途「欧州版IMF」を創設するのはそうした背景があるのでしょう。
これで欧州不安が収まるというわけではないと思いますし、賛否両論あるようですが、投資家にとっては心理的な支えの一つにはなるかもしれませんね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員