尖閣諸島問題に絡んで、今後の中国投資に関する質問をいただくことがあります。日本の外交下手が顕著に表れ、中国という国の経済力、外圧がそれだけ強大になっていることを改めて認識した問題だったように思います。まだ国際社会から見ると、驚くような言動や様々な規制が目につく中国ですが、長い目で見ると、今後も資源、労働力を兼ね備えており、投資先としてはますます魅力は高まってくると言えるのではないでしょうか。

さて、今回の件で日本があっさりと折れてしまった「外圧」でもっとも大きかったのが、「レアアース禁輸」でしょう。これまでこの「レアアース」の存在はあまり知られていなかったのではないでしょうか。なんといってもその生産高が世界の9割以上のシェアを持っていたというのは驚きです。この「レアアース」(希土類)、17種類の元素の総称で、先端技術には欠かせないということです。自動車、家電製品、携帯電話、パソコン、カメラなどいたるところで利用されていて、それはつまり日本が世界に誇る工業製品の重要な材料であることも意味します。最先端技術にとっては生命線だということですよね。それが世界中でほぼ中国一国頼みだったなんて...!

投資において分散投資の効果を常々言ってきましたが、何にしろリスク分散をしておくことの大切を改めて感じます。とはいえ、レアアースはそもそも他国において生産そのものを止め/抑えてしまっていたわけで、分散しようがなかったのですね。今回の一件で、世界各地の埋蔵国においても生産開始/拡大を開始するようになるということです。

そこで、こうした希少な鉱物の存在と限られた埋蔵国の存在があらためて注目されることとなり、関連国、通貨、関連事業等への投資期待も出てきたことになります。ちなみに埋蔵国として名前が挙げられているのは米国(カリフォルニア州)、ロシア、旧ソ連中央アジア(カザフスタン等)、オーストラリア、インドなどがあります。このうち、個人投資家が売買できる自由市場が機能しているのは米国、オーストラリアですね。新たな事業は雇用を生み、貿易を活発化させ、経済を強化していきます。各国の新たな事業の進展については今後も注目されそうです。

同時に今までレアアースに頼ってきた産業界においても、脱レアアースの代替品の開発も進んでいるようです。こうした分野も今後が期待できるといえますね。

現在、目先の市場の注目は日米の金融緩和策など景気対策にあります。日本は足元の景気状況を悪くなくとも、先行きに関しては悲観的です。ですが、世の中の流れはけっして止まりません。新しい機会も登場してくるものです。ネガティブな材料に注目しがちではありますが、前向きに捉えるきっかけを探してみることは長期的な投資においては特に大切に思います。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー

CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員