先週末、日本振興銀行に対して、導入後初の「ペイオフ」が発動され、久々に新聞やニュースに「ペイオフ」という文字が踊りました。ペイオフについては、新聞などにも簡単に
「破たんした金融機関の預金の一部を保証する制度」
「預金の元本1000万円とその利息まで保護する」
といった説明がされています。

もう少し詳細にその背景も説明しましょう。"pay off"とは「(借金などを)清算する」ことであり、ここでは預金の払い戻しを意味します。この「払い戻し」が預金保険法という制度として制定されたのは、実は今から40年近く前の1971年で、政府、日銀、民間金融機関の出資によって設立された預金保険機構が運営主体となっています。つまりこの40年間で今回初の発動ということですね。

さて、このペイオフ、今から10年近く前にかなり話題になったのを覚えている方も多いことと思います。90年代後半から2000年代前半にかけて、それまで決して破たんしない、政府に守られている(「護送船団方式」)と思われていた銀行や生保など大手の金融機関が相次いで経営破たんしました。金融不安が台頭する中、96年に政府は預金全額保護する=「ペイオフ凍結」の時限措置を行いました。

その凍結の時限措置は2002年4月の定期預金、2005年4月の普通預金と順に解除されたのですが、その直前の2000年頃から「ペイオフ凍結解除」が注目され、それとセットで「投資は自己責任で」とよく言われるようになりました。
どこの金融機関を利用しても取扱い商品やサービス、手数料も変わらない時代から、金融機関も破たんすることを目の当たりにし、個人が付き合う金融機関を選び始めたのです。ネット証券など手数料が安く個人が利用しやすい金融機関が生まれたのもこの頃です。本当の金融機関の競争が始まったと言えますね。
話をペイオフに戻します。ペイオフの対象ですが、預金者一人あたり、決済用預金は全額、一般預金(定期や普通預金等)は合計して元本1000万円までとその利息となっています。外貨預金や譲渡性預金は保護の対象外です。

対象となっている預金を当該金融機関の中で預金者別に合算する「名寄せ」という作業が行われるため、たとえ保護対象金額であってもすぐにはお金を引き出すことはできません。保護対象外になったお金は、破たん状況に応じて部分的に返金されるのですが、その金額が確定するまで数カ月~1年以上かかるとも言われます。

今回は対象者が限定的、かつ連鎖破たんや金融不安にはならないと判断されての発動でした。でも、少なくとも個人預金者に被害者がいるのが現実です。あらためて大切なお金の預け先、運用先の信用リスクの確認が必要だと強く感じさせられましたね。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー

CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員