日米の株がぱっとしませんね。特に米国株は7日連続の下落です。
日本の株は米国の株に連動する動きをしています。それだけに日本独自の事情、日本経済の状況による動きとは言えません。
というのも、先週発表された日本の最も重要な指標の一つである日銀短観では、大企業製造業の業況判断指数(DI)が2年ぶりにプラスに転じるというプラス要因があったにもかかわらずの下落だからです。そもそも日銀短観は企業のアンケート集計によるものですから、企業業績の改善予想が株価に反映しなかったということです。

今年の上半期での市場のテーマとしては、上位にギリシャの財務不安に端を発した「欧州不安」があります。特に最近は世界の為替市場、株式市場、そして金市場など欧州がどうなるか、不安は増大するのか、安心材料が出るのか、で動いていたとも言えます。
もちろん欧州不安は根が深い問題だけに、まだまだ解決したわけではないのですが、落ち着きは取り戻しつつあり、今回7日連続で米国株式が下落しているのは、米国そのものの事情によります。

きっかけはFOMC(連邦公開市場委員会)においてFRB(連邦準備理事会)が景気認識に慎重な見方を示したことで、米国の景気回復の減速の懸念が市場に広まったことです。
その後発表された雇用統計などの重要指標をはじめとする各種指標が予想を下回るなど、これまで広まりつつあった楽観論を押し戻してしまう結果となりました。

さて、ここで注目したいのは先週からニュースなどでよく見かける「米国景気回復の減速懸念」という表現です。
けっして「米国景気失速(減速)」や「米国景気後退」ではありません。あくまでも米国の景気は回復している、ただその回復スピードが期待よりも少しゆっくりになるかもしれない、ということです。

株価の下落が続くと心理的にも不安が募ってきてしまいますよね。
不安は連鎖作用を起こしますので、実態とかけ離れた動きをすることの原因となります。(欧州不安も良い例ですよね。)
もちろん欧州不安にしても冴えない経済指標にしても、ただの「不安」ではなくなり、景気そのものを押し下げてしまう要因や前触れであることも考えられますから、「気にしなくてよい」とは言えませんが...。
ただ少なくとも、先週発表になった米国経済指標の多くは「予想を下回る結果」ではあるものの改善は見せていて、けっして「悪化」を示しているわけではないということはしっかり見ておきたいところです。

米国市場に連動してしまう日本ですが、前述の日銀短観が示すように、経済は改善してきています。
円高が進んでいるといった実態に影響する心配な要素もありますが、長期投資をしている方は、ぜひ企業業績そのものに、より注目をして「周囲の不安」だけに右往左往することのないようにしてくださいね。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員