市場は南ア変異株の恐怖に満ち溢れている ‐ と普通はその様に考えがちだが、実際のところはそうではないだろう。先週末に日本・アジア市場が南ア変異株のニュースで急落し、そのリスクオフの流れは欧州~米国へと伝播した。今年最大とも言える世界株安が連鎖的に起きた。つまり南ア変異株のリスクは、相当程度、一気に織り込まれたということである。
もちろん、市場が安定を取り戻すのはしばらくかかるだろう。南ア変異株については分からないことだらけの段階であり、これまで何度も述べている通り、市場にとっての最大のリスクは「分からないこと」なので、市場の脆弱性はしばらく続くだろう。しかし、最悪期は過ぎた。なぜそう言えるかというと、上述の通り、市場にとっての最大のリスクは「分からないこと」なので、南ア変異株について一番「分からない」状況であったのは、このニュースが初めて出た時である。それ以降は徐々に情報が伝わる。つまり「分かって」くるわけだから、リスクの度合いは低下していく。
月末月初に当たる今週はイベントが目白押し。30日に日本の失業率・有効求人倍率、鉱工業生産、中国の製造業PMI、12 月 1日に法人企業統計、中国の財新製造業PMI、米国ではADP全米雇用リポート、ISM製造業景況指数、地区連銀経済報告(ベージュブック)、2 日にOPECプラス会合、3日に米雇用統計とISM非製造業景況指数などが予定されている。
今週は11月の最終日を迎え、12月相場へと移行する。11月最終日を含む週は株高の特異週である。3月期決算企業の中間配当を受け取る機関投資家の再投資がその背景にある。11月最終営業日を含む週の日経平均は2000年以降で上昇が20回、下落は1回だった。
南ア変異株リスクで急落した日本株市場はいっそう割安感が強まっている。日経平均の予想PERは13.8倍にまで低下した。そこに需給面の好材料が重なれば、絶好の押し目買いチャンスである。円高はマイナス材料だがリスクオフで原油価格も米国の長期金利も下がっているのはプラスの材料だ。
南ア変異株はどのように広がっていくか予見不能だ。しばらくは経過観察が必要だが、それでも人類はこの2年でコロナとの付き合い方を学んできた。ワクチンも治療薬もある。警戒心は必要だが過度に恐れることは不要だろう。相場も早晩、そのようなスタンスになると思われる。