CPI発表をきっかけに上昇一服の米国株市場

第4四半期も半分が過ぎてしまいました。
米国株市場では、先週1週間で見ると主要指数は下落したものの、11月に入ってからのリターンはS&P500は1.68%、ナスダック総合は2.34%の上昇、第4四半期全体ではこれまでのところそれぞれ8.71%、9.78%の上昇となっています。これまでの株価の上昇は企業業績の回復によるところが大きかったと思います。企業の業績発表ももう終盤戦を迎え、第3四半期のS&P500社の決算発表は、残すところあと40社です。これまでのところ前年同期比で42.3%の増益、決算前の予想と比べ13.4ポイント上回り、また前週と比べ1ポイントの増益となっています。81%の企業がサプライズの決算発表を行なっています。

これまで5週連続で上昇してきたS&P500ですが、先週は久しぶりに0.31%の下げとなりました。その上昇を止めるきっかけとなったのは10月分の米国のCPI(消費者物価指数)の結果です。その内容は、前年同月比で+6.2%と事前予想の5.9%を超えるものでした。これは約31年振りの高い上昇率で、この発表を受け米10年債利回りは前日の1.44%から、1.55%まで上昇しました。このような金利の急上昇を受け、金利の急上昇に弱いグロース株の代表であるテクノロジー銘柄が大きく下げ、その結果ナスダック総合が最も下がるという展開となりました。

GE、ジョンソン・エンド・ジョンソンが分割を発表する背景は?

ところで米国の多くの企業は長期に渡って成長する過程で、買収を繰り返し大きくなってきました。ただ、買収を行う過程で、余りにも多くの事業に関わってしまい、焦点がブレてしまったことで実体が分かりにくくなってしまった会社が出てきました。その典型がジェネラル・エレクトリック、いわゆるGEです。GEは20世紀の米国を代表するイノベーション企業でした。それが2000年に465ドルで史上最高値をつけて以来、GEは変わってしまいました。GEの株価は未だ107ドル台と21年前の4分の1以下です。

拡大路線で会社の規模が大きくなったのは良いのですが、GEは色々な事業に手を出し過ぎ、トップがマネージできない会社になってしまったのです。加えてGEは2000年にジャック・ウエルチCEOが退社した後、GEを経営するのに相応しいトップに恵まれなかったという不幸もあります。

そのようななか、GEは2008年の金融危機以降、少しずつ資産売却を始めました。
例えばGEは一般家庭で使う電球など、アメリカ人が日々使う製品を生産販売しており、アメリカ人であれば誰でも知っている親しみ深い会社でした。アメリカで買った我が家のクリスマスツリーの電球もGE製のものです。その電球部門をGEは2020年に売却してしまいました。2018年にCEOになったラリー・カルプは、負債を減らすと同時にGEの資産売却を継続しました。

さて、GEは11月9日に同社を3社に分割し2社をスピン・オフすると発表しました。その3つの部門は、GEアビエーション部門、GEヘルスケア部門、そしてGEリニューアブルエネルギー、GEパワー、GEデジタルを含むエネルギー部門となります。このうちヘルスケア部門を2023年の頭に、エネルギー部門を2024年の初頭にスピン・オフするとしています。

存続会社は、航空宇宙関連事業をコアとしGEのその他の事業や負債も引き受けることになっています。これにより、事業がスッキリしより分かりやすくなることで株価の評価も高まるはずです。実際米国の機関投資家への調査でも、GEは理解するのが難しい会社となっていて、投資しにくいとの結果が出てきています。

GEの分社化が発表された週の金曜日、今度はジョンソン・アンド・ジョンソン(JNJ)が、コンシューマー部門と製薬部門を分割すると発表しました。

マーケットのテーマは、会社を投資家にとって分かりやすくするということのようです。
会社が分かりやすくなると、株価の評価もしやすくなる、その結果、株価も上がりやすくなる。会社はごく当たり前のことを行おうとしているだけのことでしょうね。今後このような動きは他社でも起きてくるのだと思います。大から小への流れです。