近年、パランティア・テクノロジーズ[PLTR](以下、パランティア)への投資家の関心が急速に高まっています。その理由は、驚異的な株価のパフォーマンスです。2024年には株価が約340%上昇し、2025年に入ってからも2月18日までに65%もの上昇を記録しています。では、パランティアとはどのような企業であり、なぜこれほど注目されているのでしょうか?今回は、その事業内容や強み、成長の背景、投資リスクについて分かりやすく解説します。
データ解析の巨人、パランティア・テクノロジーズ[PLTR]
パランティアは、2003年にピーター・ティール氏(ペイパル共同創業者)らによって設立されたアメリカのソフトウェア企業です。 同社は、高度なデータ解析および人工知能(AI)を活用したソリューションを提供し、特に政府機関や企業向けのデータ活用支援に強みを持っています。
ペイパルで得た知見からピーター・ティール氏が創業
ピーター・ティール氏とイーロン・マスク氏は、ペイパル・ホールディングス[PYPL](以下、ペイパル)の創業メンバーでした。マスク氏は自身の会社「X.com」を、ティール氏は「コンフィニティ」をそれぞれ設立し、2000年にその両社が合併してペイパルが誕生したのです。合併後、マスク氏は一時的にペイパルのCEOを務めたのですが、社内の意見対立によりティール氏がCEOに就任、マスク氏は経営から外れました。
2002年、ペイパルはイーベイ[EBAY]に約15億ドルで買収され、ティール氏とマスク氏はそれぞれ莫大な資金を得ることになり、マスク氏はテスラ[TSLA]やスペースXを、そして、ティール氏はペイパルで培った不正検知技術を応用しパランティアを立ち上げました。また、ティール氏は後にファウンダーズ・ファンドも立ち上げていますが、このファンドは、スペースXへの初期投資家になっています。
現在のパランティアのCEOアレックス・カープ氏は「シリコンバレーの異端児」と呼ばれ、政府との強い結びつきを隠そうとしないと言います。この辺りはイーロン・マスク氏に通じるところがあるでしょう。
パランティアの事業モデルとは?
政府機関向けビジネス(売上げの約55%)
パランティアは創業当初からCIA(米中央情報局)やFBI(連邦捜査局)、国防総省など米国の政府機関と深い関係を築き、機密データの解析や国家安全保障に関わるプロジェクトを手がけてきました。
代表的なソフトウェアは「パランティア・ゴーサム(Palantir Gotham)」です。これは、軍事、諜報、サイバーセキュリティ分野で利用され、テロリズム監視や犯罪捜査に活用されています。
また、パランティアはCIAの投資部門「In-Q-Tel」から資金提供を受けており、政府からの信頼も厚い企業です。パランティアのソフトウェアで分析された情報は、イラクやアフガニスタンのテロ対策の戦略的な意思決定に使われており、兵士の安全確保にも貢献してきました。パランティアは、膨大なデータをリアルタイムで解析し、関係性を可視化して政府の業務効率化に貢献、「国家の裏側を支える」企業として特別な存在感を持っています。
民間企業向けビジネス(売上げの約45%)
2016年以降、パランティアは民間企業向けビジネスを本格化しました。企業向けの主力製品が「パランティア・ファウンドリー(Palantir Foundry)」で、サプライチェーン管理や金融リスク分析に利用されています。これにより、複雑なデータを一瞬で処理し、企業の迅速な意思決定の支援を行っています。
例えば、ジェイピー・モルガン・チェース[JPM]のような銀行であれば、不正取引の検知、リスク管理で使われ、自動車会社のフォード・モーター[F]などの製造業ではサプライチェーンの最適化や品質管理に使われています。
また、ヘルスケア業界においては、医療データ解析、感染症の拡大予測などに活用されています。実際、コロナ禍においてはパランティアの技術がワクチン供給の最適化や感染予測にも活用され、大規模なデータ処理の実力を証明しました。
パランティアの株価、2024年の1年間でおよそ340%上昇

パランティアは2020年9月30日に株式市場に上場しました。上場後の株価は、4ヶ月で9.5ドルから35.18ドルへとおよそ3.7倍になったものの、その後約2年9ヶ月間株価は低迷しました。上昇に転じたのは2023年の6月あたりからで、株価が大きくブレークアウトしたのは2024年9月のことです。これは9月6日にパランティアがS&P500指数に採用されたと発表を受けてのことでした。
この発表で同社の株価は翌日14%上昇しました。また、2025年2月3日に発表された2024年第4四半期の決算発表では事前予想を上回り、翌日1日で株価は26%も上昇したのです。パランティアの株価は、2024年1年間でおよそ340%上昇、2025年に入ってからも2月18日までに65%の上昇しており、さらなる成長への期待が強まっています。
パランティア、2025年第4四半期の決算発表と今後の見通し
2024年第4四半期の決算発表については直近5四半期のトレンドをさらに上回る成長を見せました。売上成長率は前年同期比+36%と、前四半期の+30%を上回る伸びを記録。また、商業部門の成長は+31%、政府部門の成長は+40%、顧客数の成長は+43%、米国商業部門の契約残高が+99%という大きな伸びとなりました。
加えて、2025年第1四半期(Q1)の売上成長ガイダンスは+35~36%、通期(FY25)の売上成長ガイダンスは+31%と、市場予想(約25%成長)を大きく上回ったのです。
2025年については、前年との比較が厳しくなると見られていましたが、行政の効率化に向けた政府予算の恩恵を受ける可能性が高く、政府部門の成長は継続する見込みとなっています。また、民間企業へのビジネスの展開を加速させているため、企業向けの売上拡大も期待されています。
2025年のコンセンサスEPS予想は0.54ドルと、2024年の0.41ドル比で31%の伸び、2026年については0.67ドルと前年比で24%の増益が予想されています。
パランティア株、バリュエーションの高さへの懸念は?
一方で、投資家はパランティア株のバリュエーションの高さを懸念しています。パランティアの2026年の予想EPSを使うとおよそPEレシオは186倍となり、一般的なソフトウェア企業と比べてもかなり割高です(株価は2025年2月14日時点124.62ドル)。ただし、パランティアは上場したての頃、予想PERが360倍まで買われていたことがありました。
超優良成長銘柄ゆえに、株価のバリュエーションが非常に高くなることがあるものです。バリュエーションの高さでは、テスラ株の割高さが有名です。テスラはこれからの成長性に注目され、現在の株価は正当化されると考えています。同じことがパランティアについても言えるかもしれません。
パランティアの今後の成長性は?
現在は生成AIブームの初期段階であり、同社の技術は引き続き注目され続ける可能性が高いと考えられます。
パランティアの売上は2025年が前年比30%増、2026年は27%、2027年には30%ほど伸びる見込みです。AI関連のソフトウェア企業で、パランティアのような売上の規模(30億ドル)の大きな会社が、30%程度の成長を維持できるのは稀なことです。営業利益についても、2024年の39.4%から、2025年は41.7%へと拡大する見込みです。
パランティアは、AI革命の波に乗り、政府・商業部門の両面で堅調な成長を続けてきました。2025年については厳しい競争環境にもかかわらず、予想を大きく上回る業績ガイダンスを発表したことで、成長の持続性を証明しています。またパランティアは成長の転換期にありますが、コスト管理が徹底されていると言われています。
依然として超プレミアムなバリュエーションではあるものの、今後30%以上の売上成長率を維持する可能性が高く、長期的な業績の成長が見込まれる会社だと考えています。
株価がアナリストの先を走るパランティアの現状
ウォール街のアナリストのコンセンサス評価もパランティアの株価は割高と判断しています。パランティア株の調査を行っているアナリストの数は24人ですが、そのうち21%が買い推奨を、54%がホールド、25%が売り推奨を行っています。アナリストの平均目標株価は91.17ドルですから、現在の株価は27%割高という判断です。これまでの流れをみると株価が上がり、それをアナリストが追いかけているといった状況です。つまり、株価がアナリストの先を走っているのです。
注意点としては、パランティアに対する投資家の期待が高いため、決算ミスがあると、一時的であっても株価にネガティブな影響を大きく与える可能性があります。また、マーケットの調整がある場合、株価が大きな調整することが考えられます。これはパランティアだからということではなく、他のいかなる急成長株にも起きることです。
しかし、同社の長期的な成長トレンドは変わらないと考えており、基本的には現在の高いバリュエーション(高い株価評価)は今後も維持されるでしょう。一時的な株価の調整があれば、それは良い投資機会になるのではないかと考えています。
パランティア株投資のリスクとは?
最後にパランティアのリスクについても触れておきます。パランティアが保有する技術は、特にセキュリティや監視、ビジネスインテリジェンスの分野で強みを持っていますが、プライバシーや倫理的な問題がしばしば取り沙汰されます。同社の収益の多くは政府機関(特に米国政府)との契約から得られており、政府依存のリスクがあります。
政府の予算削減や政策変更により、契約が縮小・打ち切られる可能性はあるでしょう。大統領選挙や政権交代によって政府のIT投資方針が変わり、パランティアへの依存が減少する可能性については考慮しておくべきかもしれません。