先週(2月17日週)の振り返り=日米金利差急縮小で米ドル/円は急落

米ドル/円、一段安の理由

先週の米ドル/円は後半に下落が拡大し、一時149円を割れるまで一段安となりました。(図表1参照)。一気に2024年12月初め以来の水準まで米ドル安・円高に戻すところとなりましたが、それはなぜだったのでしょうか。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2024年11月~)
出所:マネックストレーダーFX

この米ドル/円の一段安は、基本的には日米金利差米ドル優位縮小に沿ったものでした。日米10年債利回り差米ドル優位は、2月21日には3%を割り込み、2024年10月初め以来の水準まで縮小しました(図表2参照)。以上のことから、先週米ドル/円が150円割れへ一段安となったのは、日米金利差米ドル優位が急縮小したことを受けた結果だったのでしょう。ただ、この日米金利差米ドル優位の縮小は、これまでとは少し違うものだったかもしれません。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2024年9月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

日本の金利上昇主役を演じる異例なケース

日本の長期金利、10年債利回りは基本的には「世界一の経済大国」の米国の長期金利に連動するのが基本です。このため日米金利差の変化は、より金利水準の高い米金利の動きで決まります。ところが、2月以降は米10年債利回りが4.5%近辺で基本的に横這いを続ける中で、日本の10年債利回りが大きく上昇、つまり先週にかけての日米金利差米ドル優位・円劣位の急縮小は、日本の金利上昇が主役を演じるという異例なケースでした(図表3参照)。

【図表3】日米の10年債利回りの推移(2024年9月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

この「異例な日本の金利上昇」については、日銀の追加利上げ観測を受けたものとの説明が多いようですが、それなら金融政策に敏感な短期金利が主導したかと言うとそうではないようです。2月に入ってからの金利上昇は、2年債利回りに比べて10年債利回りがより大きくなりました(図表4参照)。そしてその結果、10年債利回りから2年債利回りを引いて求めた長短金利差は最近にかけて急ピッチで拡大しました(図表5参照)。

【図表4】日本の2年債および10年債利回りの推移(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
【図表5】日本の長短金利差の推移(2023年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドル/円も一段と下落が拡大する可能性

長短金利差は、2000年以降の平均で見ると0.7%程度です。それに対して1月末時点の長短金利差は0.5%程度だったので、平均より小幅の長短金利差が見直される形で、日本の金利が全体的に上昇してきたということでしょう。それが、2月7日の日米首脳会談前から顕著になったという意味では、米トランプ政権からの対米黒字削減のための行き過ぎた円安の是正、そのための低金利見直し圧力への警戒がこの「異例の日本の金利上昇」の一因ではないでしょうか。

この先、長短金利差が2000年以降の平均である0.7%以上に拡大、さらに近年のピークである2023年に記録した0.8%まで拡大するなら、日本の10年債利回りは1.5~1.6%程度までさらに上昇する計算になります。その場合は、日本の金利が主導する形での日米金利差米ドル優位・円劣位の一段の縮小により、米ドル/円も一段と下落が拡大する可能性があるでしょう。

今週(2月24日週)の注目点=米景気に減速の兆しも

「買われ過ぎ」の反動で急反落するリスクも

ただし、上記のような中で、短期売買を行う投機筋の米ドル売り・円買いに「行き過ぎ」懸念も出てきた可能性もあります。CFTC(米商品先物取引委員会統計)の投機筋の円買い越し(米ドル売り越し)は2月18日時点で6万枚でした。低金利の円は、経験的に買い越しが5万枚以上に拡大すると「行き過ぎ」懸念が強まります(図表6参照)。

【図表6】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

なお、2024年9月末にかけて、円の買い越しは6万枚を超えたところで拡大が一巡しましたが、直後に1日で142円から146円まで約4円も円急反落が起こる場面もありました。依然として円が相対的な低金利であることには変わりないため「買われ過ぎ」の反動で急反落するリスクも抱えていることは意識する必要があるでしょう。

米ドル買いに伴う米ドル反発には限りがあるか

米ドルのポジションは先週にかけて買い越しが急ピッチで縮小しました。主要5通貨(円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、カナダドル)で試算した投機筋の米ドル買い越しは、1月14日時点の33万枚から、2月18日には19万枚まで縮小しました。トランプ政権が正式にスタートし1ヶ月過ぎる中で、米ドル買い越しは4割以上も縮小したわけです(図表7参照)。

【図表7】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米ドル買い越しは、経験的に30万枚以上が「行き過ぎ」圏なので、トランプ政権が正式にスタートするまでに米ドルが「買われ過ぎ」となり、政権の正式なスタートとともに「買われ過ぎ」の修正が広がったのでしょう。こうした動きを見ると、米ドル買いにともなう米ドル反発にも基本的には限りがあるのではないでしょうか。

今週の米ドル/円は147~151円で予想

ここに来て米景気に減速の兆しも出てきたことで米金利上昇も限られ、むしろ低下が広がる可能性もあります。そうなると、すでに見てきた日本の金利上昇と合わせ、日米金利差米ドル優位・円劣位縮小には一段と注目が集まりそうです。以上を踏まえた上で、今週の米ドル/円は147~151円で予想したいと思います。