衆院選で自民党は国会の安定運営に必要な244の安定多数を確保した。もし自民党が惨敗していれば岸田首相の求心力が低下し、政治が流動的になるリスクを嫌う外国人からの売りが懸念されていただけに、そのような事態が避けられたことはプラスと見ていいだろう。短期的には相場の安心材料だ。
首相は特別国会を10日にも召集し、ただちに第2次内閣の組閣を行うが、目新しさはないだろう。第2次内閣の発足後、21年度補正予算案の編成を進める方針だ。予算案には、持続化給付金並みの事業者支援や雇用調整助成金の特例の来年3月までの延長、困窮者への給付金などが盛り込まれるだろう。年内に予算案を成立させる方針は相場に一定の安心感を与えるだろうが、大きな効果は期待できない。そもそもこれらは株高につながるような政策ではない。給付金のバラマキでは景気浮揚につながらないことは実証済みである。
衆院選が終わり、相場の焦点はより重要なイベントに移行する。まず2-3日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)。今回の会合でのテーパリングの決定は織り込み済みであり、市場への影響はないだろう。その際、利上げを急がない方針を改めて強調すれば、そちらには素直に反応するだろう。
次の注目イベントはOPECプラスが4日に開催する閣僚会合だ。メディアの報道によれば日米印中などによる、産油国に対して増産を求める外交工作が水面下で活発に展開されているという。
FOMCとOPECプラス閣僚会議で市場の流れが変わる可能性がある。ベストシナリオは以下のような展開だ。FOMCは市場の予想通りで波乱なく通過し、長期金利にピークアウト感が出る。OPECプラスが増産を決めれば原油価格が落ち着く。インフレ懸念も後退し、金利は低下するだろう。それを受けて米国株、特にハイテク株が一段高となるシナリオだ。リスクシナリオは、その逆のケース。増産を求めている消費国の意向をOPECプラスが無視すれば原油価格が一段高となりインフレ懸念の高まりから株式や債券売りにつながる。
今週は月初週とあって重要な経済指標も多い。1日に中国の財新製造業PMI、米国ではISM製造業景況指数、3日にADP雇用リポート、ISM非製造業景況指数、製造業受注、そして5日に雇用統計と続く。
そのような外部環境の中、市場の注目は佳境に入る4-9月期の決算発表だ。今週はトヨタ(7203)をはじめ主力企業の決算発表が目白押し。特に注目はトヨタが下期の挽回生産についてどのようなコメントを出すか。
日経新聞の集計によれば、10月29日までに21年4~9月期決算や22年3月期予想の修正を発表した451社のうち約半数が業績予想を修正し、その内訳は上方修正141社、下方修正64社と3割が上振れ、14%が下振れだった。つまり、上方修正のほうが多い。
Quickが10月28日発表分までTOPIX採用銘柄を対象に2022年3月期2Qの決算を集計した結果は以下の通り。決算進捗率は銘柄数ベースで13.1%、時価総額ベースで27.4%。四半期実績の前年同期比は売上高5.7%増、営業利益43.6%増、経常利益59.1%増、当期利益では65.2%増となった。四半期累計実績の対通期会社予想(業績進捗率)は売上高48.9%、営業利益53.2%、経常利益55.6%、当期利益では55.1%となった。つまり、悪くない。
この業績に目が向けば相場も年末に向けてじわりと締まってくるだろう。