前回通貨オプションを組み入れた債券についてご説明しましたが、別のタイプのオプションを組み入れた債券についてもご紹介しましょう。
こちらも個人投資家向けに販売されている「仕組み債」としてはかなり一般的です。もちろん当社での取り扱いもありました。「任意繰上償還条項付」や「期限前償還条項付」といった条件のついている債券がそれにあたります。
前回ご案内した、償還時の通貨が変わる可能性があるという条件のついた債券は「通貨オプション」の「プット」の売りを組み込んだものでした。
詳しくはこちら≫(前回のコラム)
http://lounge.monex.co.jp/column/money/2009/09/07.html
今回ご案内する「任意繰上償還条項」は、詳細については後述しますが、対象資産は「ある一定の金利水準」なので、オプションの種類としては「金利オプション」となり、その「コール(金利があるレベルを下回ったときに行使できる権利)」を組み込んでいる債券なのです。ステップアップ型の債券に組み合わされることが多いです。
ご存知のとおり、債券というのは、発行体にとっては資金調達の一手段です。発行体にとってみれば、できるだけコストを安く・・・つまり低い金利の支払いで資金を調達したいもの。金利市場は常に変動していますから、低い金利で調達したつもりが、世の中の金利動向次第では時間の経過とともにコスト高になってしまう可能性はあります。
住宅ローンを組むことをイメージしていただければわかりやすいのではないでしょうか?なるべく低金利のときに将来の支払い利息の金額を確定したいものですよね?
そこで、金利がある一定の水準、自身にとって不利なレベルに達したときには「元本を返しますので、今後の利払いはしませんよ」(その時点でより低金利に再調達したほうが有利だと判断した場合)という条件がこのオプションなのです。
もちろん発行体自身に有利な条件を付けるわけですから、発行体がオプション料を支払い、それによって投資家にとっては利率の上乗せとなり割高のクーポンとなる、という仕組みです。
もう少し詳しくご説明しましょう。
このオプションは上記のとおり、金利を対象としますので「金利オプション」です。期間は「任意」とありますが(1回目の以降の利払い日毎などの制限をつける場合が多い)、いつでも良いわけではなく、行使期日を利払い日などの複数の日(行使期日1回だけのヨーロピアンといつでも可能なアメリカンの中間のタイプで、「バミューダタイプ」と呼ばれます)におくことが多いです。 期限前に償還する権利、つまり債券を「コール」する権利を発行体は投資家から購入していますので(投資家側から見れば「コール」を売っています。)、「コーラブル債」とも言われます。
投資家は「コール」の売却により「オプション料」を受け取り、それがクーポン(利率)に上乗せされて高めのクーポンの債券を作り出しているのです。 このタイプの債券はコールがかかって期限前に償還されることも多いのですが、期限前償還においては投資元本100%で償還されますし、それまでは通常より高い利率のクーポンを享受でき、(投資通貨ベースで見れば)元本割れのリスクはほとんどありません。
ただ、期限前に償還されたときは世の中の金利水準が低下している場合が多く、償還金の再投資先に魅力的な商品がない可能性が高くなります。つまり再投資リスクが高いということですね。
前回の通貨オプションや今回の金利オプション、その組み合わせなど、さまざまな種類のデリバティブ商品を組み合わせることで、多種多様の債券(や預金)を組成することが可能です。複雑にはなりますが、投資家にとって有利なクーポンを得られるチャンスでもあります。
ただし必ず、条件の内容を理解する、そのリスクが自分にとって許容範囲か判断する、という姿勢は持つようにしてくださいね。
廣澤 知子
マネックス証券 シニア・フィナンシャル・アドバイザー