前々回に仕組み債や仕組み預金について簡単にご案内しました。「ある一定のリスクと引き換えに利率を上乗せするというタイプの商品」という説明をしました。

前々回のコラムはこちら≫
http://lounge.monex.co.jp/column/money/2009/08/24.html

探求熱心な個人投資家の方の中には「どういう仕組みになっているの??」と思われている方もいらっしゃるかと思います。今回はシンプルなタイプの中身をなるべく簡単に説明したいと思います。

そもそも一言で「仕組み債」といっても、一種類ではなく、様々な条件を重ねることで、より複雑な商品を作り上げることができます。機関投資家向けの商品の中にはデリバティブのオタク(?)が練りに練って複雑にした商品もあります。

デリバティブというのは伝統的な金融商品の売買とは異なり、先物取引やオプション取引、スワップ取引など、レバレッジを効かせたり、差金決済をすることで、手持ち以上の資金取引や、手元にない商品の売却(ショートする)ができる取引の総称です。金融派生商品と日本語には訳されています。仕組み債にはこうしたデリバティブが組み合わされていることが一般的です。

今回ご案内するのは、8月に当社で取り扱った「償還時に受け取り通貨が変わるかもしれないリスク」がある債券の中身です。このタイプは「オプション」(通貨オプション)が組み合わされた債券です。

まずはオプションの簡単な説明からしましょう。
オプション取引というのは簡単にいえば、権利の売買です。当社で取り扱っている「日経平均オプション」という商品は、日経平均株価をある特定の価格で売買する権利を取引するものです。

5分でわかるオプション取引≫
http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G1950/fop/option_5_min.htm(ここでは日経平均オプションの説明をしています。)

オプション取引では、ある価格で購入する権利を「コール」、売却する権利を「プット」といい、それぞれの権利の売買ができます。その権利を行使するかどうか判断するのが決められた日時(オプション満期日)だけなのか(ヨーロピアンタイプ)、約定日から満期日までの間いつでも権利行使できるのか(アメリカンタイプ)等、行使できる期間による違いもあります。
また、何(「原資産」といいます)を対象とするのか、によっても種類が異なり、日経平均株価を対象とするものであれば、前述の「日経平均オプション」となり為替レートであれば「通貨オプション」となります。

通貨オプションの場合、まだ個人向けとして商品化(FX商品の種類として)されているケースは少ないのですが、預金や債券と組み合わされることは珍しくなくなってきました。

さて、8月に当社で取り扱った仕組み債は、【満期日(償還通貨判定日:償還日の5営業日前)において、ある為替レート(豪ドル/円:償還判定為替レート)で豪ドルを「売る権利(プット)」を「売却」】して債券に組み込んでいたのです。(「売る」権利の「売り」なので、行使されると「買い」になるわけです。)
オプションを売ることで対価(「オプション料」もしくは「プレミアム」といいます)を手前で受け取ることができます。その受け取ったオプション料をクーポン(債券の利率)に上乗せすることで、投資家の受け取るクーポンが(取引時点の)実勢金利水準より高くなる仕組みです。
ちなみにオプション料は、満期までの期間、対象となる商品の値動きの大きさ、設定した価格などの組み合わせによって決まり、リスクが大きいほどその料金は高くなります。(相場が荒れている時期であれば当然高くなりますし、判定レートをいくらにするかでも大きく変わります。)

こうしたオプション料の上乗せがあるからこそ、通常の円の金利よりずっと高めのクーポンになっていたというわけです。

廣澤 知子
マネックス証券 シニア・フィナンシャル・アドバイザー