9月以来、関西を地盤とする関西スーパー(9919)を巡り、阪急百貨店などを展開するH2Oリテイリング(8242)と首都圏を中心とするディスカウントスーパーのオーケー(非上場)が買収合戦ともいえる争奪戦を展開しています。以下の記事ではその経緯を詳しく取り上げてきました。

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関西スーパー争奪戦の総まとめ

改めて状況を整理するため、要点をまとめてお伝えします。まず、登場人物の3社の概要です。

それでは、H2Oとオーケーは何故、関西スーパーを買収したいのでしょうか。

両社の関西スーパーへの出資の経緯と現在の提案は、どのような内容でしょうか。

H2O・オーケーいずれにとっても関西スーパーは魅力的な買収先だったということです。一方、3社のこれまでの経緯などをまとめると、オーケーが関西スーパーの買収に乗り出す中で、関西スーパーはそれを嫌って、H2Oに一種のホワイトナイト役を期待してきたように映ります。つまり、関西スーパーの経営陣としてはH2Oに買収されることを良しとしているように見えます。

ここで問題になるのが関西スーパーの株主です。関西スーパーの株主には、H2Oと関西スーパーに関係のある企業も多く、その中にはオーケーと関係のある企業もありそうです。これらの株主には複雑な利害関係がありそうです。例えば一般の個人投資家であれば、H2O・オーケーそれぞれに一定の思いがあるかもしれません。しかし、一般的に考えると自身が保有する関西スーパーの株式の価値が高くなることが望ましいのではないでしょうか。その観点でいうと、投資家にとってH2O、オーケーどちらの提案の価値が高いのかが問題になるでしょう。

そこで難しいのが両社の提案にあるように、オーケー案は2,250円と分かりやすいのですが、H2O案は合併後の新関西スーパーの株主になるということで、その価値が不明瞭であるということです。

前回の記事では、関西スーパーはH2O案、つまり合併後の新関西スーパーの株式の価値は2,250円を上回るという第三者評価を出しているものの、その前提の数字はH2O・関西スーパーの経営計画で、その経営計画の数字が妥当かは明確ではないことをご説明しました。

【図表】関西スーパーの株価推移
出所:マネックス証券

マーケットの評価も上記の表のように、H2Oとの統合後、株価は多少好感したものの、少なくともオーケーの2,250円提案が明らかになるまでは大きく上がっていません。一方、オーケーの買収案が発表された後の株価は2,250円を意識した動きでしたが、関西スーパーがH2O案を堅持する姿勢を見せたこともあり、やや下落傾向となっています。

オーケーは10月7日に関西スーパーに対し、過去の質問への回答依頼と追加質問を行っています。内容は簡単に言うと、H2O傘下のスーパー2社(イズミヤ、阪急オアシス)の業績はここ数年悪く、過去5年間でイズミヤは合計218億円の純損失、阪急オアシスも77億円の純損失で、関西スーパーの純利益71億円と比べて悪いものです。それにもかかわらず、「統合後の経営はH2Oサイドが担う」と発表されているため、なぜH2O傘下のスーパー以上に業績の良い関西スーパーがH2O経営陣に経営を明け渡すのか、その経営陣が先ほど説明した新関西スーパーの経営計画を達成できるのか、という疑問を投げかけているのです。

経営陣という観点ではありませんが、経営結果が妥当かどうかは先ほど書いたように前回の記事でも取り上げた通りですので、オーケーの指摘は興味深いもののように思います。

関西スーパーの臨時株主総会で決着つくか

関西スーパーがH2Oに買収されるかどうかは10月29日の株主総会で決まります。株主総会で参加株主の2/3以上の賛成が必要になります。ここで賛成を得られれば、H2Oの買収案は進み、関西スーパー株は新関西スーパー株として評価されることになります。

一方、もし否決された場合はオーケー側の買収の目も大きくなりそうです。関西スーパーの株価は現在1,900円強の水準です。過去の株価推移を考えると、可決(H2Oの買収)の場合の株価はオーケーの買収が発覚する前の水準(新関西スーパーを想定していた水準)、否決の場合の株価はオーケーが提示している公開買付価格(2,250円)を意識する動きが想定されます。

票読みをしてみましょう。オーケーは議決権比率で8%弱の株式を握っています。仮に株主総会の出席率が80%とした場合、80%×66.7%≒53.4%ですので、全議決権の53.4%が賛成に回れば可決です。80.0%-53.4%=26.6%以上が反対すれば否決です。

オーケーとしては自分たちに加え全体の議決権の20%が反対に回れば議案を否決に追い込める計算になります。関西スーパーの株主にはH2O(10.7%)に加え、取引先持株会(9.2%)・従業員持株会(2.3%)、さらに伊藤忠食品(4.8%)・国分グループ(3.4%)など大きな取引先も並んでいます。35%以上を握る個人株主の動向にも注目したいところです。臨時株主総会の結果を予想しながら関西スーパー株の動きを確認するのもおもしろいように思います。