米ドル売りの主導役は対円、次いで対ユーロ
ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(円、ユーロ、英ポンド、カナダドル、豪ドルの5通貨で試算)は4月15日時点で10万枚の売り越しとなった(図表1参照)。同ポジションは、1月には33万枚まで買い越しが拡大していた。ところが、その後急ピッチで買い越しが縮小し、足下では逆に売り越しが大きく拡大するところとなってきた。

このような米ドル売りを主導しているのは円買いで、円の買い越し(米ドル売り越し)は4月15日時点で17万枚と空前の規模に拡大した(図表2参照)。この円を除いた4通貨で計算すると、米ドルのポジションは6万枚とまだ買い越しを維持している。ただし、この4通貨を対象とした米ドルのポジションも、1月までは30万枚以上の買い越しだったので、その後の約2ヶ月半で5分の1程度に急縮小したことになる。

円に次いで買い越しが大きいのはユーロだが、そのユーロも3月に入るまでは売り越しだった(図表3参照)。つまり、最近にかけての1ヶ月余りで米ドル売り・ユーロ買いが急ピッチで拡大してきたわけだ。

カナダドル売りも急減=「トランプ・トレード」とは米ドル売りか
5通貨の中で、カナダドル、豪ドルは依然として米ドルに対して売り越しが続いているが、ただその売り越しも縮小傾向となっている。特にカナダドルの売り越しは最近にかけて縮小が加速してきた。一時20万枚近い記録的な売り越しとなっていたカナダドルだが、足下では8万枚まで売り越しが縮小した(図表4参照)。

トランプ大統領の関税政策で最初に標的となったのがメキシコ、中国とともにカナダだった。つまりカナダドルは、トランプ関税によるダメージが最も大きいとして、記録的な売り越し拡大になったが、それが最近にかけて急ピッチで見直される動きとなっている。
米ドル買いは、トランプ大統領の政策を期待する「トランプ・トレード」の代表例の1つだった。それが最近にかけて見直しが広がり、特に4月に入って相互関税の発表以降は見直しが加速するようになっている。
CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジションは、経験的には20万枚以上が「売られ過ぎ」圏である。その意味では足下ではまだ「売られ過ぎ」に達したわけではなさそうだが、だからこそさらに米ドル売りが拡大する余地があるとも考えられる。元は、米ドル買いを意味した「トランプ・トレード」が、最近はトランプ大統領の政策を懸念する米ドル売りに変わってきたようだ。