個人投資家が金融トラブルに巻き込まれる事例について、ちょっと前ですがFP向けの雑誌に特集が組まれていました。読んでみると、悪質な業者に引っかかってしまった、という事例ももちろんあるのですが、勘違いや理解不足がトラブルの原因になっている例が多いようです。

例えば銀行で扱っている「仕組み預金」や「投資信託」。
まず銀行を利用されている方の意識が、銀行=預金をするところ=元本保証という図式になっている場合もあり、元本割れの可能性について初めから考えていないケースがあるようです。
そうすると、販売する側による商品説明が十分に行われても、リスクに関わる十分な理解をしないまま取引をしてしまうことが起こりえます。また、販売者側にも、リスクに関する分かりやすい説明が不足している場合もあり、そうすると、状況によってはトラブルになりかねないということです。

証券会社で扱っている商品の場合、個人向け国債やMRFなど安全性が極めて高い商品であっても「元本保証」はしていません。そのため口座を保有されるお客様も、「貯蓄」ではなく「投資」をするところである、という意識をもっていらっしゃいます。
銀行で扱っているのと同様の「投資信託」であっても、このお客様側の意識の違いの差は大きいといえるでしょう。

また、当社のようなオンライン証券の場合、WEB上で必要十分な情報を提供することを基本としていますので、意思疎通のミスのせいでお客様に勘違いをさせてしまうということがないようになっています。(WEBでわからないことがあれば、コンタクトセンターにて直接説明を聞くこともできることは皆さんご存知のことと思います。)
もちろん、その分個人投資家の皆さんが高い意識をもって、商品を理解する必要があります。当社のお客様の中にも、プロも舌を巻くほどの金融通(市場の理解、商品の理解、情報の分析いずれも非常に詳しい方)の方がいらっしゃいますが、市場において個人投資家がますます存在感を増すようになったのは、そうした意識を持つ方が増えたことにあると言えるでしょう。

さて、前述した銀行で扱っている「仕組み預金」は、実は証券会社で扱う「仕組み債」とその構造はよく似た商品です。証券会社で扱う場合、「預金」は不可能であるため、「債券」の形に商品を組成しているのです。
現在当社で取り扱い中の債券も、この「仕組み債」です。「仕組み」と聞くだけで「だまされるのでは・・・」と考えてしまう方がいることはとても残念です。
消費者相談センターのようなところでは、「リスクのある商品には手を出さないように」と指導することがあるようですし、「個人投資家をだまして金融機関が儲けている」といった誤った情報を発信している人も残念ながらいるようです。

「仕組み債」はけっして投資家をだます商品ではなく、簡単にいえば、ある一定のリスクと引き換えに利率を上乗せするというタイプの商品です。(仕組み預金も同様)
リスクを引き換えにしているため、相場状況ではそのリスクが具現化することがあることを事前に十分に理解する必要があります。リスクに対する耐性は個々人によって異なります。自分にとってそのリスクは耐えられる範囲、具現化しても対処可能であると考えられれば、非常に魅力的な商品になりえるのです。
例えば現在扱っている仕組み債であれば、豪ドルにて償還する可能性(リスク)がありますが、豪ドルで受け取ることになったら豪ドルMMFで運用して、また豪ドル建債を購入すればよい、というように考えられる人にとっては、このリスクはさして大きな問題にならないといえるでしょう。

現在扱っている「円高時豪ドル償還条件付 円建債券」の詳細はこちら≫http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2009/news908r.htm
リターンを得るにはリスクをとることは必須です。この超低金利の時代に「保証」だけを求めていては資産を増やすことは難しいといえるでしょう。 本来は相談センターのようなところでは、「リスクを徹底的に理解するようにしよう」という指導を行ってもらいたいですし、同時に金融機関(販売者)としても「よくわからないまま」商品を購入してしまう方がいないように十分に説明を尽くす努力をしなければならないですね。

廣澤 知子
マネックス証券 シニア・フィナンシャル・アドバイザー