人生最大の出費のひとつ、衣食住の要である「住」に関するものだけに、その比率は家計の中では小さくはない存在であることが一般的でしょう。
しかもどんなに収入部分の条件が変わろうと、その小さくない出費が、固定費用として長期にわたるという点が大きな問題です。
ある時点での収入と支出のバランスから、住宅ローンは組まれます。バブル期ほど楽観的な右肩上がりの収入を予測するようなことはないと思いますが、少なくともその時点の収入が継続することを前提に審査され、さまざまなタイプの中から個々の事情のあったローン・タイプを決め、月々の支払い金額も決まります。
でも、審査時点の前提が狂ってしまうと、当然のことながら返済計画そのものが成り立たなくなってしまいます。
リストラや残業カットによる収入の減少、ボーナスカット、雇用そのものの不安などで、ローン返済が生活を圧迫する例が増えているということです。とくにボーナス時期にある程度まとめた金額を支払う必要があるボーナス併用タイプの場合、ボーナスの集中するこの6月に、支払いができなくなる人が急増することが懸念されているのです。それが冒頭の「住宅ローン 6月危機」です。
ローンが払えなくなったら住宅を売ればいい、と考えている方も多いようですが、昨年以降不動産価格そのものも下落し、どうにか売れても借金だけが手元に残ってしまうという悲劇も少なくありません。
そんな事態になる前に住宅ローンの負担を軽減させる方法を考えてみましょう。早めに手を打つことが肝心です。
どの程度の金利水準のときに組んだ、どういった条件の住宅ローンかにもよりますが、ひとつの方法として「借り換え」があります。
今もバブル期の高金利ローンのままだという方であれば、すぐに検討されると良いですし、かなり低金利になってから組まれた場合でも、最近では金利が低いだけではなく、進化した住宅ローンが登場してきていますので検討の余地はあるといえます。長期にわたるローンにおいては、わずかな金利の差、条件の差でも支払い総額は大きく変わります。
ただ、再審査が必要となります。収入減後にはローン残額分の借り換えでも審査が通らなくなってしまうというリスクはありますので、早めの対処としてお勧めです。
もし現時点で手元にまとまったお金がある場合は、「繰り上げ返済」も考えられます。繰り上げ返済には期間短縮型と負担軽減型の2種類があります。支払い送金額を大幅に減らすという経済的な効果を考えれば期間短縮型(月々の返済額は変えずに返済期間を短くする)になりますが、月々の負担を軽減し、生活を圧迫させないようにしておくことを最優先するのであれば負担軽減型(返済期間は変えずに月々の支払い金額を減らす)を選択するとよいでしょう。
一度住宅ローンを組んだら、後はひたすら固定費用として返済するのではなく、メンテナンスをすることで、生活にゆとりをもたらすこともあることを認識しておきましょう。前述しましたが、早めに手を打つことがポイントとなります。
廣澤 知子
マネックス証券 シニア・フィナンシャル・アドバイザー