本日から販売開始をしている「ワクチン債」、新聞などの大きな広告を目にされている方も多いと思います。
投資で命を救う?・・・とピンと来なかった方もいらっしゃるかもしれません。
投資とは資金を投じて利益を得る行為です。対して、「命を救う」というと医療行為であったり、ボランティアであったりをイメージされることでしょう。異なるこの二つの行為が「ワクチン債」では同時に成り立っています。
ボランティア → 寄付や寄金、というイメージから、この債券に投資をすると資金の一部、利金の一部が寄付される、という印象を持つ方も多いかと思いますが、そうした仕組みではありません。投資は投資として100%成り立っており、同時に世界の貧しい諸国の子どもたちの命を救う行為で協力することになるものです。

そもそも債券というのは、ご存知のとおり資金を必要とする発行体(国や企業、団体など)が資金調達手段として発行し、購入した投資家は、いってみればお金を期限付きで貸していることになります。借りているお金に対して支払う利息が、私たちが債券を購入したときに受け取る利金です。

「ワクチン債」では資金を集めている発行体は「IFFIm」(InternationalFinance Facility for Immunisation/予防接種のための国際金融ファシリティ)という他国間開発機構です。予防接種や医療技術の推進を世界各地で支援活動をする官民協調団体である「GAVIアライアンス」(The Global Alliance for Vaccines and Immunization/ワクチンと予防接種のための世界同盟)を支援することを目的としています。
GAVIアライアンスは、毎年ダボスで開催されている世界経済フォーラムの2000年の年次総会で設立され、開発途上国・ドナー国政府、世界保健機関、UNICEF、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などがパートナーとして参加しているものです。
IFFImは欧州を中心とした加盟各国の寄付により運営、財務管理は世界銀行が行っています。その寄付は最長20年間にわたり支払われるものなのですが、資金が十分に集まるのを待ってから予防接種プログラムを実行すれば、ずいぶんと先になってしまい、その間毎年たくさんの幼い命が、予防接種さえあれば助かる命が亡くなってしまうことになります。そこで、債券を発行することにより、資金を前倒して調達しているのです。私たちが投資する資金は寄付金になるのではなく、寄付金を前倒しして使う目的で資金調達をしたいIFFImに貸している、ということです。

こうしたプログラムにより、2000年以降、新たに2億1300万人の子どもたちが新ワクチンにより救われたということです。
世界の途上国支援は興味があっても、なかなか行う機会は限られます。怪しげな寄付を募る集団にだまされたという話を聞くこともあります。身元がしっかりとした国際的な組織に運営されており、しっかりと実績を積んでいる活動であれば、安心して支援できますし、しかも支援している私たちにも利益をもたらしてくれるという二重にうれしいものですよね。

≫予防接種のための国際金融ファシリティ(IFFIm) 2013年6月24日満期
南アフリカ・ランド建債券
http://www.monex.co.jp/Etc/topslide/guest/G800/new2009/news9066.htm
廣澤 知子
マネックス証券 シニア・フィナンシャル・アドバイザー