持家か賃貸か・・・決め手は?」

持家か賃貸か、よく議論されますが、結局のところ正解のないものです。 住んでいる地域、職業、収入、年齢、家族構成、ライフスタイル等千差万別であるため、何を物差しに、何を優先するかでその選択は様々になります。
よく経済的な負担度を比較することが多いのですが、それも景気サイクルに伴う住宅価格の変動等によってシミュレーション値は大幅に変わってきますから、価格の大きいものだけに予想することは大変です。

住宅については、住宅(土地)価格の変動や金利変動だけではありません。 住宅購入は現金で購入できる方は少数派で、通常は今後の収入をベースに住宅ローンを組むものです。その「今後の収入」は雇用の安定と収入の定期的な伸びが前提となっているのが普通です。
その前提条件が崩れてしまうと、当然住宅ローンが払えなくなり住宅を手放さなくてはならなくなる、住宅価格が下落している場合、借金だけが残ってしまうという非常に厳しい事態となります。
これがまさにアメリカで問題となっている住宅事情です。もちろんアメリカの場合は「雇用の安定と収入の定期的な伸び」をみる審査基準が日本よりずっと甘い「サブプライム・ローン」の焦げ付きが発端です。
とはいえ、現在の日本は終身雇用でも年功序列でもなくなってきていますし、残業代やボーナスの大幅減少により手取り収入が減少している人が確実に増えています。雇用についても派遣問題や内定切りなど問題がたくさん噴出してきていますので、アメリカの住宅事情はけっして人事ではありません。

賃貸であれば、こうした事態に直面しなくて済むかといえば、そうとは限りません。家賃は値下げされないのに収入が減少してしまうという事態になれば払いきれない、つまり「出ていかなければならない」という状況は一緒です。この場合、手元に借金が残らないだけ賃貸の方が優位かもしれませんね。
ほかにも経済的な点からいえば、現在のように住宅価格が下落すると、アメリカでもすでに見られるようですが、かなり割安に売りに出された好条件の住宅を手に入れられる人もいます。住宅(土地)価格も相場ものですので、割安に購入できれば満足度も高いものになるでしょう。
逆に安値時期に賃貸にすると値上りしてきたときに家賃値上げをされてしまい、結局払いきれずに出ていかなければならない状況となる可能性もあります。となれば、時期によって「購入」が優位になってくる場合もあるわけです。
持家か賃貸か・・・については経済的事情以外に先に述べたライフスタイルの変化の影響が実はかなり大きいものです。
家族が増えたため手狭になった、転職をして通勤が不便になった、遠方に転勤になったなど当初予想していなかった事態になったとき、賃貸の方が柔軟に対応しやすいでしょう。
ただ、ライフスタイルにあわせて「買い替え」をしていくことを好む人もいます。自分の家であることにこだわりがある人は購入派となることが多いでしょう。前述のように割安に条件の良い住宅に出合えれば、その満足度はより高まることになります。

持家か賃貸、正解はありませんので、双方の長所・短所についてよく調べたうえで、最終的には自分にとってどちらが満足度の高いかを決め手にするとよいですね。

廣澤 知子
マネックス証券 シニア・フィナンシャル・アドバイザー