2月15日、中国証券のトップである中国証券監督管理委員会(CSRC)の郭樹清主席が、中国株には割安感、投資妙味があるというインパクトのある発言をしました。具体的には、現在の中国本土市場の株価バリエーションは市場平均PERでは15倍前後であり、CSI300(上海・深センに上場しているA株のうち時価総額・流動性の高い300銘柄で構成される株価指数)の予想PERは11.2倍に過ぎず、これはまれにみる割安なバリエーションであり、年率8%前後の収益率が期待できる水準である、というものです。しかし、この発言に株式市場はほとんど反応せず、堅調な世界の株式市場の動きに反し、中国本土市場は調整局面が続いています。中国では景気減速懸念が根強く、企業業績はもう少しさらにスローダウンするであろうとの予想が多いようです。

本土市場の相場の重しとなっている1つの理由に中国の金融緩和がなかなか進まないのではないかと予感させるニュースが続いていたことがあります。まず、中国人民銀行は中国の1月のM2増加率を前年同月比12.4%増であることを発表しましたが、これは1997年以来の低水準で、金融緩和が進んでいないことを示しています。また、2012年のM2の伸び率目標を14%と発表しています。この数字は1月の12.4%と比べると高いものの、長期的に見れば低い水準であり、金融緩和が積極的に行われることを予想させない数字でした。それから、安徽省蕪湖市が2月9日に住宅購入者に助成金と優遇税制を提供すると発表していたのにその後すぐに撤回されたことも早期の金融緩和観測を後退させる要因となっています。これは中央政府が不動産セクターの金融緩和に前向きでないことを示しています。

しかし、2月18日(土)の夜に中国人民銀行(中央銀行)は預金準備率を2月24日から50ベーシスポイント引き下げるとの発表を突然行いました。ここまでに記載したニュースの流れから金融緩和観測が遠のいていただけに、今回の発表はポジティブサプライズとなっています。もちろん、このまま金融緩和が急速に続くとは考えにくいですが、直前まで緩和観測が遠のいていただけに、株式市場には大きなプラスでしょう。また、タイミングにも着目しましょう。3月には両会(毎年3月に行われる全国人民代表大会と政治協商会議を併せた名称で、全国レベルの政治的決定が行われる)が行われますが、その前の発表であっただけに、両会への期待感が盛り上がるためです。また、今年は習近平をトップとする体制への指導部交代を秋に控えており、その前に景気が失速すると国民の不満が高まり、権力の継承が上手くいかないこともあるとの見方から、適度な緩和政策が続くとの期待感も出てきています。この預金準備率引き下げを皮切りに中国本土市場が世界の株式市場のように上昇の波に乗れれば、香港に上場している中国株も好影響を受け、上昇するところが期待されます。