ファンダメンタルズにサポートされた夏休み中の株価上昇
米国では夏休みをとっているトレーダーやファンドマネジャーなどの市場参加者が多く、出来高もいつもより少ない中、ダウ工業株価指数やS&P500は8月13日(金)にも史上最高値を更新しました。その株価の上昇ぶりを支えているのが、堅調な米国企業の決算発表です。
先週末段階(8月13日時点)でS&P500採用銘柄の92%が決算発表を終えています。米国株式市場全体では、1,739の主要企業が第2四半期の決算発表を終えており、そのうち80%の企業が事前の売上予想を上回っています。この数字は2020年のコロナ禍で売上が落ち込んでいたこともありますが、2000年から今までで最も高いレベルとなっています。また、純利益についても75%の企業が事前予想を上回っており、こちらは今までで最高ではないものの、高いレベルにあります。
今後の業績を示唆する「企業によるガイダンス」では、20%の企業が今後の業績の見通しを上方修正、3.85%の企業が下方修正を行っています。歴史的に見ても、上方修正する企業の割合は高く、下方修正をする企業の割合は低いレベルとなっています。
また、2020年のコロナ禍では、ほぼ8割の企業が今後の見通しのガイダンスを出しませんでしたが、今回はそれが53%に下がっています。53%というと多く感じますが、これは過去を見ても通常のレベルです。
セクターで見ますと、テクノロジーと金融セクターが事前予想のEPSを最も上回りました。その次に良かったのは工業、消費関連セクター、一方予想を下回ったのはエネルギーセクターでした。
グロースからバリュー銘柄へのローテーション
直近の雇用統計では米国経済は決してピークをつけておらず、いまだ成長を続けていることがうかがえ、また、インフラ法案が現実のものになりそうだという期待感もあり、このところグロース銘柄が一休みとなり、バリュー銘柄が買われています。
8月に入ってからの8月13日までのS&P500ピュアグロース指数は1.5%上昇している中、同期間のS&P500ピュアバリュー指数は3.5%上昇し、グロース指数を2%ほどアウトパフォームしています。長期金利が上昇していることも、このトレンドを後押ししています。
実際、先週ダウ工業株価指数の高値更新に貢献したのは建設関係のキャタピラー(CAT)、金融のゴールドマン・サックス(GS)、化学のダウ(DOW)といった景気敏感銘柄でした。
今週は小売業界の決算発表が目白押し
8月17日(火)には世界最大の売上を誇るウォールマート(WMT)や、ホームセンターのホームデポ(HD)、8月18日(水)にはロウズ(LOW)の決算発表が行われます。生活必需品を販売しているお店だけでなく、8月19日(木)に決算発表予定のコール(KSS), メイシーズ(M)のような百貨店にも客足が戻ってきているのか、注目したいところです。
9月から10月にかけての調整に注意
2021年に入ってからS&P500は19%上昇していますが、5%以上の調整があったのは2月後半の1回だけです。1979年からのデータを見ると、S&P500は史上最高値を更新してから平均すると8ヶ月に1回5%以上の調整が起きています。
過去の統計上、9月から10月にかけては調整が起きやすい季節でもあり、そろそろ5%を超える調整があっても全く不思議ではありません。ただ、これはあくまでもブルマーケットの中の、これからも米国株が上昇を継続するのに必要な一時的な株価の調整であるということを強調しておきたいと思います。