モトリーフール米国本社 – 2024年11月19日投稿記事より

劇的な変化があったメディアやコンテンツ消費で、従来型メディア企業は苦戦

メディア・エンターテインメント大手のウォルト・ディズニー[DIS]は先週、事業に関する前向きなアップデートを発表し、株主にとって待望の良いニュースとなりました。しかし、株価は依然として精彩を欠き、過去10年間で27%の上昇です。ダウ工業株30種平均(NYダウ)構成銘柄としては、低パフォーマンスであり、投資をためらう個人投資家もいるかもしれません。何が起こっているのか、深掘りしてみましょう。

メディアやコンテンツの消費のあり方は、この5年ほどの間に劇的に変化しています。ウォルト・ディズニーも2019年にHulu株式の一部を取得し、Disney+のサービスを開始するなど、ストリーミング時代の到来に向けて態勢を整えてきました。ところが、パンデミックの発生で起きたメディア業界全体を取り巻く状況の変化については、備えができていませんでした。

公平を期すために言えば、パンデミック以降、ウォルト・ディズニーに限らず、すべての従来型メディア企業が苦戦を強いられています。従来型では全くないネットフリックス[NFLX]でさえ、独自の苦境に直面しています。

株価の重石となっている主な要因とは

ウォルト・ディズニーは、自社のストリーミング・ネットワークを展開し、そのネットワークを通じて多くのコンテンツを提供し、テーマパークをアップグレードし続けるなど、素晴らしい仕事をしています。株価の重石となっている主な要因は、ストリーミング事業の収益性です。経営陣は数年前から、ストリーミング事業が2024年末までに黒字化すると公表していました。先週発表された2024年度第4四半期(7~9月期)決算で、ようやくこの約束が果たされました。

第4四半期決算は、全体的に素晴らしい内容でした。売上高は前年同期比6%増、Disney+のコア加入者数は同440万人増の1億2,000万人となりました。2024年夏には、ピクサー・スタジオの『インサイド・ヘッド2』とマーベル・スタジオの『デッドプール&ウルヴァリン』という2本のヒット映画が生まれ、テーマパーク事業も1%の増収となりました。

大きな成功を収めたのはエンターテインメント系ストリーミング事業で、2億5,300万ドルの営業利益を計上しました。これにはスポーツ系のストリーミングは含まれておらず、これらを合わせるとストリーミング事業の営業利益は3億2,100万ドルとなりました。背景には、有料加入者数の増加と、広告付きプラン向けの広告収入が14%増加したことがあります。これにより、ケーブルテレビを含む従来型ネットワーク事業で利益が減少し続けているにもかかわらず、エンターテインメント部門全体の営業利益は、前年同期の2億3,600万ドルから11億ドルへと急増しました。

これらの結果、全社の営業利益は前年同期比23%増、1株当たり利益(EPS)は0.14ドルから0.25ドルに増加しました。

売上高は回復、純利益は黒字を維持

事業領域で圧倒的強さを誇っていることを考えると、ウォルト・ディズニーの株価がこれほど低迷しているのは意外に思えるかもしれません。ディズニーと言えばエンターテインメントの代名詞であり、引き続きメディア、映画、テーマパーク分野のリーダーです。

ウォルト・ディズニーの売上高は、パンデミックによる落ち込みから完全に回復し、10年前の水準をはるかに上回っていますが、純利益は依然として10年前の水準を下回っています。株価は2020年から2021年にかけて急騰しましたが、10年前からの変化率で見ると、売上高と純利益のほぼ中間ぐらいに位置します。

純利益はストリーミング事業によって大きく押し下げられていますが、ストリーミング事業に力を入れているウォルト・ディズニーに対して市場が高い評価を与えている理由は明らかで、10年前の水準を下回っているものの、ここ数四半期の純利益は黒字を維持していることが評価されているのでしょう。とはいえ、事業トレンドの好調が続いたとしても、過去の高値を取り戻すには時間がかかるかもしれません。

ウォルト・ディズニーの優位性とリスク

一般的に、信頼できる業界のリーダーに投資するのは適切な方法でしょう。しかし、最近のウォルト・ディズニーは、必ずしも信頼できるとは言えませんでした。時代が変われば、どれほどの大手企業であってもまるで恐竜のように、生き残れなくなる可能性があります。現在のウォルト・ディズニーがそうなるとは思えません。なぜなら、同社はメディアトレンドの最前線にいて、クリエーターは新しいコンテンツを生み出し続けているからです。しかし、株価は数年にわたって低迷しています。

他にもリスクはあります。ボブ・アイガーCEOは救世主として呼び戻されましたが、同社は再び、企業を次の段階へ導くことのできるリーダーを探しています。利益は依然として、市場の期待に応えきれていません。

足元で、ウォルト・ディズニーの12ヶ月予想株価収益率(PER)はわずか19倍です。これはお買い得かもしれませんが、PERが低いということは、市場がいかに警戒しているかも物語っています。

ウォルト・ディズニーには信頼できる理由もあれば、警戒すべき点もあります。投資を検討するならば、株価が反発する可能性に対して、一部の資金にとどめておくほうが良いかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Jennifer Saibilは、ウォルト・ディズニーの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、ネットフリックス、ウォルト・ディズニーの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。