急に秋めいて涼しくなってきましたね。寒暖の差が激しいと体調を崩す方も多いようで、風邪が流行っているとも聞きます。皆様、くれぐれもご注意ください。
さて市場の風邪(インフルエンザ?)はまだなかなか治まらないようですね。体力がなくなってきていて、ちょっと刺激(米国株式市場の動向など)があるとすぐに熱を出す(悪化する)といった感じです。
今朝の新聞にも大きく見出しがありましたが、日本の景気も実感が伴わなかった上昇期から、後退局面に入ったとあります。企業の倒産件数も増えており、消費者心理も冷え込んできています。ここ何年か「貯蓄から投資へ」という強い流れがありましたが、残念ながら個人投資家の躊躇が表れ、「投資から貯蓄へ」という逆戻り(安全資産を好む傾向)が目立ってきています。
先週、金融機関による機関投資家向けの日本資本市場についてのフォーラムがあり、ちょうど開催がこの金融混乱期にあたっていただけに、どういった発言が聞けるか興味をもって参加してきました。
今後の日本経済、世界経済についての全般的な見方としては意外にも楽観論が目立ちました。短期的にはマイナスがあっても将来的には明るいという見方をされている方が多かったです。もちろん、こうした金融関係者の集合体となると、悲観的なコメントはしにくいこともあるかもしれません。
セッションの一つに、インフレについての議論がありました。個人は直近の食品やガソリンの値上げを肌で感じているものですが、プロはどう見ているのでしょう?
果たして、プロのアンケート結果でも「期待インフレ率」(どのくらいのインフレ率になるか)は急上昇していました。
インフレは一般的に景気過熱したときに起こることが多いものですが、今回は景気後退局面に資源高を要因として起こりつつあります。
通常インフレを予防するには、金融政策で「利上げ」を行います。景気後退時の景気刺激策としては「利下げ」(日本の低金利ではこれ以上の利下げは不可能ですが)を行いますので、景気後退とインフレが同時に起こると(=スタグフレーション)金融政策の舵取りが非常に難しいものとなるのです。
こうしたインフレ予想の前で、プロが選ぶヘッジ(回避)手段ですが、海外の投資家と日本の投資家に大きな違いが見られました。国内投資家が多く選択しているのが、伝統的にインフレに強いといわれる「株式」と「不動産」であるのに対し、海外投資家は「物価連動商品」と「コモディティ」を多く選択していました。
もちろん、どちらが正しいとは言えませんが、こうしたプロの視点を個人投資家は大いに参考にすべきですし、実際参考にできるような環境が整いつつあります。
というのも、これまではプロしか対象にされなかった商品が、最近では小口化され、個人投資家も購入できるようになってきているからです。ほんの少し前までは、個人投資家が「不動産」を買おうとすれば、現物不動産でしたし、「コモディティ」といえば金投資かちょっとハードルが高い商品先物でした。「物価連動商品」の個人向け商品はありませんでした。今では、いずれの商品も証券化したものや、投資信託といった形で、小口かつ簡単に手に入れられるようになっています。
プロの見方・考え方を鵜呑みにする必要はありませんが、こうした変革期にはトレンドを見据えて、アセット・アロケーションを見直す(=リアロケーション)良い機会といえます。
将来的な楽観論を信じるのであれば今が買い時となるでしょうし、インフレが進むと思えば、インフレヘッジ商品を買って備えるというのもよいでしょう。 現在の自分の資産配分に執着せずに、柔軟に市場を見ながら配分を変えていくのもよいかもしれませんね。
廣澤 知子
マネックス証券
シニア・フィナンシャル・アドバイザー