敬老の日で一週空き、2週間ぶりとなりました。その間、金融市場は大変な衝撃を受け、その後も乱高下を繰り返しています。

日本でおよそ10年前に起こった金融変革と長く続いた景気低迷。そのときのデジャブーのような金融再編、救済策の発表が相次いでいます。
ただ「現場」となっているのが米国市場で、その規模も世界に対する影響力も当時の日本のその比ではありません。この10年の間に金融のボーダーレス化はますます進み、金融商品もより複雑になってきています。「不良債権」の一言では済まない、外からは見えにくい、しかし根深い影響が世界中に進行しています。

おりしも本日、日本では与党自民党の新総裁が誕生しました。
新総理大臣も決まり、内閣も(総入れ替えにはならないでしょうが)変わります。
これで景気が劇的に良くなるだろう!という楽観的なシナリオを描いている方は?・・・残念ながらあまりいらっしゃらないでしょう。
日本の政治がもし大きく変わり、国民感情にも盛り上がりが出たとしても、現在の米国発の金融動乱が治まるという流れになるのは難しいといえます。 これは今回の震源地アメリカも同じで、大統領選が控えていますが、新大統領になったとしても、劇的に景気が変わるということはないでしょう。
根本部分が解決し、市場に、投資家に本当の安心感が出てくるまではどうしても時間もコストもかかるものです。

この混乱を肌で感じてか、実際の不景気で余裕資金が減っているのか、投資で損失が出てやる気を失ってしまったのか、個人投資家の動きは弱くなっているのは事実です。

先ほど現状は似ていると書いた、10年ほど前の日本の金融危機以降を振り返ってみましょう。低金利政策、不景気、デフレ・・・そうした中で、預貯金といった流動性資金にずっとお金をおいていた人が結果として、「勝ち組」になったでしょうか?

現在世界中の全ての株式市場に大打撃が走っていますので、一時期膨らんだ資産がしぼんでしまった方も多く「勝った」のか「負けた」のかわからないと思われる方もいるかもしれません。
例えば、新興国の代名詞BRICsの中国とインドに10年前に投資をした人はどうなったか見てみましょう。ご存知のようにこの半年~1年で急落してきているものの、10年前の水準に比べれば中国の上海総合株価指数で2倍弱、インドのムンバイ指数では4倍弱という値です。
金や原油といったコモディティは10年でどう変化したかといえば、いずれも今年前半のピークに比べ下落してきていますが、やはり10年前に比べると金で約3倍、原油にいたっては約6倍といった水準です。

※ 数値は全て1998年1月始値と今日現在の数値の比較です。

預貯金の利率はこの10年限りなくゼロに近いところに張り付いていたことを考えれば、現時点では当時縮こまらずに「新しい」投資をした人が勝っていることがわかります。

先見の明をもつということはとても難しいものです。ですが、縮こまって何もしないでいては、当たり前ですが何も生まれません。それどころか、インフレが進めば、預貯金にしているだけで資産価値の目減りとなる可能性もあるのです。

こうした市場のときは一つの商品に賭けるのは、リスクが大きくなりすぎますので、今まで投資したことがないものも含め、いくつかの可能性に分けたうえ、ぜひピンチをチャンスとして掴み取ってください。

廣澤 知子
マネックス証券 
シニア・フィナンシャル・アドバイザー