「ワーキング・プア」という言葉をご存知の方も多いと思います。「働いている」(=ワーキング)けれど「貧しい」(=プア)という造語で、日本だけでなくアメリカなど先進諸国でも既に社会問題となっています。最近よく耳にする「格差社会」「下流社会」などの言葉と、まさにセットして使われる言葉ですね。
国によって「ワーキング・プア」の定義は異なりますが、日本では一般に生活保護の水準以下の年収の場合をさすことが多いようです。

少し前から聞かれるようになった「ニート」(=教育も受けず、仕事をせず、職業訓練も受けていない人)とは異なります。「ちゃんと働いている」人々であるからです。
きちんと正社員として仕事をしている方の中にも、生活保護を受けている人よりも手取りが少なくなってしまっている方がいるという事実が大きな問題となってきています。

世の中が景気良く、お金のある人はますます財を成していくようなときは、「持つ者」「持たざる者」の格差は大きくなっていってしまいがちです。
ですが、反対に混乱期というのは様々なチャンスがあるものです。
例えば日本でも戦後の混乱期には、(ほとんどの人が「もたざる者」であったとは思いますが)、いち早く「投資」を行った人たちは数十年後には「新貴族」などと呼ばれるほどの富を得ていたといいます。
アメリカもITの創成期は混沌としていたと思いますが、いち早く目をつけた人たちは巨額な財を成しています。

注意していただきたいのは、「一か八か」の賭けに出た者がエライと言っているわけではないことです。周囲が「引いてしまっている」状況において、いち早く「投資」を始めることが将来の富につながる可能性が高いということです。

現在世界的に市場は乱高下を繰り返し、「持つ者」の中には大きな損失を被った方も多いかと思います。そうした「持つ者」を含めてですが、ここで完全に引いてしまい損だけ固めてしまうことになりますよね。こういう時こそ投資を始める絶好のチャンスともいえるのではないでしょうか。
もちろん買った直後に下がったり、不安に感じるような状況に面する可能性は高いです。ですが、将来の富につながるのは資産価値が上がりきった状態ではなく値段が下がっている状態にあるときです。

「ワーキング・プア」に戻りますと、この問題は実は負の連鎖の中に入り込んでいってしまう可能性の高さが深刻なところです。
教育や職業訓練を受けようにも、日々の生活に追われてそうした時間がとれない、その費用が工面できない、余裕がない中で老後資金も作り出せない、子どもに教育を受けさすこともままならない・・・
そうなると世代を超えた格差を生み出していってしまい、そこから抜け出すことが至難の業になってしまいます。

抜け出すにはどうすべきかですが、こうした市場が荒れているときこそ前述のとおりチャンスとなる可能性は高いのです。
ただし、決してなけなしのお金で投機=ギャンブルをしないように注意が必要です。リスクをとりすぎることは自らの首を絞めることになる可能性も高いのですから。
少額でもコツコツと預金をされているような場合、日本円の超低金利ではお金は殖えてくれません。シンプルですが、生活を見直し、少しずつでもムダをなくし、わずかずつでもこうした機会に「投資」を始めることが長い目でみれば負の連鎖を抜け出すきっかけにもなりえるといえるでしょう。

もちろんこれは資産形成をしていく上の定石ですから、「ワーキング・プア」の人に限った話ではありません。
ぜひ皆様もご自分の現在の投資に対する姿勢を見直してみませんか?

廣澤 知子
マネックス証券 マーケティング部 マネジャー
シニア・フィナンシャル・アドバイザー