米ドル/円 日足 

週間予想レンジ:109.70~111.70

メインストラテジー:押し目買い

・2021年初来高値更新
・モメンタムの低下
・強気構造を維持

【図表1】米ドル/円(日足)
出所:筆者作成

アナリシス:

米ドル/円相場は先週続伸、一旦3月高値の更新を果たし、年初来高値を記録した。ブル構造を維持、また年初来安値を起点とした上昇波の継続を証拠付けており、コロナショック後高値の111.71円や2020年高値の112.22円の打診がもはや短期目標と化し、その後新たな上昇余地が拓かれる公算だ。

もっとも、年初来の高値更新自体が我々のシナリオ通りであり、年初来の高値更新をもって前期高値まで大した抵抗が見つからないため、一気に達成してもおかしくない。反面、だからこそ、一気に達成できなければかえって高値トライ後の頭の重さが警戒され、2020年高値に対する本格的なブレイクが先延ばしになる可能性もある。

大きな背景として、米ドル全面高の流れが強まってきた点に一番注意しておきたい。米ドル全面高でユーロなど外貨の反落が継続されるなら、ユーロ/円などクロス円における外貨安につられる形で円高の進行がみられるはずだ。この場合、逆に米ドル/円に波及し、米ドル全面高だからこそ米ドル/円の頭が重い、といった市況が懸念される。

なにしろ、FOMC後米ドルは全面高の局面へシフトし、米ドル指数の急騰で外貨安が急速に行われ、主要クロス円における頭打ちが鮮明になりつつある。先週切り返しが先行したものの、反落波自体を否定できず、むしろ調整の初歩段階にあると推測されるため、米ドル/円への波及効果もこれから増大していく恐れがある。

とは言え、強気構造の維持自体は問題ない。繰り返し指摘してきたように、メイン支持ラインは、年初来安値から維持されてきただけに、米ドル/円のメイン構造に変わりがなく、高値更新後があっただけに、これからモメンタムの低下があってもブル構造自体は変わらない。米ドル全面高が進む中、対円のリードがなくても強気の基調修正はあり得ないだろう。

円は主要外貨のうち最弱であり、4月から米ドル全体が大きく反落、また一旦2月安値を割り込んでいたにも関わらず、米ドル対円は強気変動を維持、主要クロス円の軒並み高値更新もあって、円の地盤沈下が目立つことから、円全体のベアトレンドは安易に修正されない。主要クロス円におけるスピード調整があって、これから一段と深められる可能性が大きいものの、あくまで調整的、また受動的な値動きで、本格的な円高への逆戻りはないはずだ。

さらに、4月安値からの上昇は、大分波乱含みの展開を果たしてきたため、素直な高値打診があれば、上昇モメンタムの強化につながり、何らかの材料で一気に上放れを果たす可能性がある。この意味では、先週の高値更新がみられた分、モメンタムの低下がすぐ見られない可能性もある。この場合はやはり2020年高値を一旦トライし、前期クロス円の波及効果があっても先延ばしになる見通しだ。言い換えれば、安易な逆張りはできない。

週足では、4月半ばから繰り返してきた変動リズム、即ち陰線と陽線の交代が先々週の陽線で打破され、先週の続伸で連続3週間の陽線引けとなり、強気変動の一環として解釈されるため、上昇一服まで上値トライが続く可能性もある。この意味では、高値圏でのレンジ変動を想定しても問題ないが、レンジ取引にシフトするのもそれなりのリスクを伴う。あくまで押し目買いのスタンスで臨みたい。

直近の値動きとして6月21日の「強気リバーサル」のサインが重要であった。同切り返しで支持ゾーンを再確認し、年初来高値の更新をもたらし、また強気構造の一層の確認をもたらした。高値更新後の反落をスピード調整の一環と見なした場合、何らかの材料なしでは6月21日安値の109.71円を割り込むのは容易ではないとみている。繰り返しとなるが、米ドル/円はあくまで強気変動にあり、安易な逆張りは避けたいところだ。

より長いスパンでは、年初来高値の更新は、2015年高値から引かれてきた抵抗ラインのブレイクを示し、2015年高値から形成された大型トライアングル型の保ち合いが非常に長い歳月がかかっただけに、ブレイクを果たした後の上昇トレンドが大型化されていく公算が大きく、メインシナリオとして維持されている。上昇モメンタムが再開された分、コロナショック後の高値だった111.71円の打診やブレイクを確実視し、またその後2020年高値の111.22円の再更新を果たすことで、115円関門前後の上値余地を拡大していくのではないか。押し目買いのスタンスを維持し、米ドル全面高の中、しっかり下値を拾いたい。

豪ドル/円 日足

週間予想レンジ:80.00~84.00

メインストラテジー:戻り売り&レンジ取引

・切り返し先行でも限度あり
・豪ドル次第で続落鮮明
・再度頭打ちで反落推進

【図表2】豪ドル/円(日足)
出所:筆者作成

アナリシス:

豪ドル/円相場は先週切り返し、反落波におけるスピード調整を果たしたとみている。しかし、84円前半の打診が一旦あっても、84円関門以上に定着できず、目先のモメンタムの低下に鑑み、先週の切り返しがあったからこそ、より大きな反落波の進行が推測され、これからの下値余地を拡大していくだろう。このような見方は、やはり先々週の下落幅が大きかったこと、また重要なサインを点灯したことが選定条件となり、先週の切り返しがあっても基本的な構造を修正できなかったことが要因だと思う。

繰り返し述べているが、先々週の反落は、市況を一変させたところが大きい。すでに3月末安値の82.28円の打診もあって、当面の頭打ちや、豪ドル/米ドル次第で、調整幅の拡大が見込まれ、また調整波の先行でしばらく高値再打診の可能性が後退していたため、先週の戻りはむしろ戻り売りの好機と見なされる。

6月24日安値の83.96円を一旦割り込んだことが重要なサインだった。その後一気に3月24日安値の打診をもって頭打ちのサインを成立させた。5月10日の高値再更新が「フォールス・ブレイクアウト」のサインだったことを証明しており、同サインの効き目でこれからも反落幅の拡大が続くはずだ。

なにしろ、3月18日の高値打診は、2月25日高値を一旦更新した後3月24日の安値トライに繋がったため、「ダマシ」の可能性を一旦示唆していた。しかし、2月26日安値は81.99円を割れずにその後の高値トライに繋がったため、本来は一段と上値トライをもたらすはずだった。言ってみれば、「ダマシ」のサインの構築自体が大型化され、また時間をかけて高値圏で変動レンジの形成や下放れが確認されていた分、これから調整幅の拡大が現実味を増すだろう。

この場合、82円関門以下の安値打診があれば、変動レンジの下放れを示し、前述の「フォールス・ブレイクアウト」のサインの効き目で変動レンジの「倍返し」的な下方シフトが想定されるだろう。この場合、最大79円台半ばの下値余地が計算される。先週のコラムで述べた通り、先週の戻りの先行はむしろ途中のスピード調整としてみなされ、また切り返しの先行があったからこそより「健全な」反落波の形成に繋がるのではないか

また、先々週の急落自体が短期スパンにおける「行き過ぎ」を示唆しており、リバウンドの先行も想定されていた。ただし、この場合は強くても5月24日安値前後で再度抵抗に遭遇する見通しで、84円関門の早期回復は容易ではない。先週の値動きは想定通りであり、また想定範囲内に収まったとみている。

82円関門の打診があっても一気に割り込んでいくとは限らないが、先週スピード調整的なリバウンドがあったからこそ、むしろ再打診しやすく、また下放れをもって5月高値の「フォールス・ブレイクアウト」のサインの効き目を証明するだろう。この場合はまず81円関門、その後80円大台の打診に繋がる見通しで、今週は戻り売りの戦略を継続したい。

一方、10月末安値を起点とした今回の上昇波は、フィボナッチの38.2%押しは81円関門前後、また同半分押しは79円台半ばに位置するため、一気に80円関門の割り込みも容易ではないだろう。豪ドル/米ドル次第ではあるが、80円大台はしばらく支持ゾーンとして意識されてもおかしくないだろう。レンジ変動の一環とみなす場合、下値トライ後の逆張りもあり得るが、投機的なスタンスとして覚悟すべきだ。

より長いスパンでは、2020年コロナショック後の安値から豪ドル/円の大型V字型回復や上昇波への復帰が確認され、また2018年5月以来の高値トライが観察された以上、メイン変動としての強気トレンドが維持される公算が大きい。2020年9月、10月のように、連続2ヶ月の調整があってもおかしくないが、ブル構造を否定するにはかなり反落し続けなければならず、目先のハードルは高いとみている。本質的な見方として、調整波の先行や延長があっても、本格的な円高時代への逆戻りはあり得ないだろう。