今週(10月31日)は米国の金融政策を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)があり、そこで利下げが行われることが予想されています。

サブプライム問題は8月頃のように市場の中心で猛威をふるっているわけではありませんが、(一時、表面的には沈静化したようにさえ見えていました)問題そのものが解決したわけではありません。水面下ではくすぶり続け、ここにきて金融機関の損失も(想像以上に大きな損失も!)相次いで発表されています。
そもそも不良債権問題というのは日本の「失われた10年」を例に考えても根深いものです。しかも今回はそれが証券化して世界中に拡散しているわけですから、残念ながらそうそう簡単には根本まではキレイさっぱりと片付くものでもないでしょう。そのため、市場では0.25%の引き下げは確実視(織込済み)されているようです。

今年は夏前までは世界中が利上げムードでした。(唯一日本が出遅れていましたが)利上げということは景気過熱、インフレ懸念があるから行われるのですが、米国が利下げに転換した今、景気状況も変わったのでしょうか?

実は問題はここにあります。
米国の経済指標を見ると住宅着工件数こそ減っていますが、CPI(消費者物価指数)は大きくはありませんが上昇基調はしています。また、ご存知のように原油価格が上昇し続けています。

住宅着工件数ほか>> http://www1.odn.ne.jp/~cbh91480/AGD.htm

CPI>> http://www1.odn.ne.jp/~cbh91480/AGA.htm

米国株式、原油価格ほか>> http://www1.odn.ne.jp/~cbh91480/AGE.htm 
インフレ懸念がなくなっているわけではないのです。

環境はインフレ方向に、政策は利下げに、となれば市場は当然安定しなくなることが想像できます。友人のファンド・マネージャーもそのことを非常に気にしていました。米国が不安定になれば、当然世界に波及します。
日本のようにずっと利上げのタイミングを計っていたのに米国の利下げに阻まれてしまい、なかなか利上げに踏み切れない、という状況下におかれてしまうのも問題です。

そんな中、金価格が急騰しています。
利息を生まない金にとって利上げはマイナスの影響がありますが、利下げの上、インフレ懸念もあるとすれば、それらに強いとされる金が高騰するのも頷けるところ。
金などのコモディティにお金が向かうと同様、安全資産として米国債に大量にマネーが逃げ込んでいます。
通貨でも日本円以外の通貨にお金が向かい、対円以外はドル安となっています。
世界のマネーはより確実にリターンを得られるところを求めます。
これら巨額マネーは、実はリスクについても非常に敏感かつ慎重で、ムダにリスクをとらないようにコントロールしているものです。危険を察知すれば、すかさずより安心、安全な資産へマネーを「質への逃避」させるのです。

こういった金融市場の中、個人投資家はどうやって自己防衛すればよいのでしょうか?

プロと違って、短期間の乱高下で結果を出さなければならないわけではありませんから、月並みになりますが、時間を味方につけ、かつ相関の低い資産に分散することで大きなブレに備えるようにすることが最もダメージを抑えられると言えるでしょう。

ちなみに新興国市場は先進国、特にサブプライムがらみの変動にはあまり連動はしませんが、そのものの高騰ぶりや変動の大きさも注目されており、先進国株式のリスク分散先(逃避先)としてはあまり向くとは言えませんね。

最後に、今週の米国の利下げ幅がもし0.5%と予想を超えた場合、急上昇中の金がより急騰することが考えられます。予想に反して利下げをせず、金利を据え置いた場合は、金価格だけではなく、利下げ期待を織り込んでいた投資家の失望売りで株式市場(欧州株式市場も含む)にも打撃があることは予想されます。短期的に市場を見ている方はご注意くださいね。

廣澤 知子
株式会社マネックス・ユニバーシティ 取締役副社長
http://www.monexuniv.co.jp/

「廣澤知子のやさしいマネー講座」バックナンバー一覧はこちら
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/cat_37.html

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
投資についての様々な知識をチェックしませんか?
【マネー検定・オンライン検定実施中】http://www.moneykentei.jp/event_o/index.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
・・・重要事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
□本情報に掲載される内容は、コメント執筆時における筆者の見解・予測であ り、マネックス証券の意見や予測をあらわすものではありません。
□本メールに掲載される内容は、マネックス証券でお取扱している商品・サー ビス等に関連しますが、投資判断の参考となる情報の提供を目的としており、 投資勧誘を目的として作成したものではございません。
□当社でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合 があります。お取引いただく各商品等には価格の変動・金利の変動・為替の 変動等により、投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。また、 発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、 投資元本を割り込み、損失が生じるおそれがあります。信用取引、先物・オ プション取引、為替保証金取引(FX、FXpro)をご利用いただく場合は、所定 の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引に は差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあ ります。
□各商品毎の手数料等およびリスクなどの重要事項については、当社ウェブサ イトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みいただ き、銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身のご判断で行ってください。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・-----
EXTENDED BODY: